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NIRA政策提言ハイライト

再生可能エネルギーと長くつきあうために

NIRA政策提言ハイライト 2015/09発行

再生可能エネルギーと自然災害
 本年9月に日本列島を襲った台風18号は、記録的豪雨をともない、各地に水害をもたらした。これを受け、一般社団法人太陽光発電協会は、9月11日に水没・浸水している太陽光発電設備に近づくと感電の恐れがあるという注意喚起を緊急発表した。
 太陽光発電は、東日本大震災の教訓から、災害時に独立電源として機能するというメリットが注目され普及の推進力にもなっていたが、一方で、災害時の危険性については必ずしも理解が深まっているとは言い難い。発電パネルは日射があれば発電されるため、運転を停止すれば発電が停止する他の電源と異なり、日中の水没時は感電リスクがある。
 NIRA政策レビューNo.57「再生可能エネルギーの将来性」において、藤野(国立環境研究所 主任研究員)は、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)も万能ではないという点を指摘している。やり方次第では環境負荷を生む恐れもあり、風力発電はバードストライクや低周波騒音、地熱発電は高温の廃熱による周辺環境の汚染がありえるとのことである。
 環境負荷だけではなく、前述の太陽光発電のように安全上の問題もある(1)。例えば、風力発電については、近年、雷撃時のブレード等落下の危険性が問題視されている。雷被害については、経済産業省(2)や一般社団法人電気学会(3)などでも検討され、技術的な対策が進んでいるが、こういった危険性の存在を知らない人も多く、理解が広まっていないのが現状である。

技術を正しく理解し地域特性を考えること
 このような再エネが有するリスクを未然防止するには、再エネ技術を正しく理解し、そのリスクの存在を認知した上で対処法を講じることが必要である。前述の注意喚起は、事後的な対応となってしまったが、今後は、予想される台風や豪雨の規模に応じて、事前に注意喚起し、被害の未然防止を図る姿勢が求められる。
 しかし、リスクを過大や過小に評価することも避けなければならない。リスクの過大評価が再エネ普及の阻害となるのはもちろんのこと、過小評価した場合でも、長期的には阻害要因となり得る。仮に、再エネへの期待から危険性の存在に目をつぶって施設を建設し、後に事故が発生した場合、「こんなはずではなかった」と失望に転じてしまう。ここから拒絶反応が生まれれば、その後の再エネ普及が困難となるのは必定である。我々日本人は、再エネ以外にもいくつかの技術で既にそのことを経験してきた。
 また、同紙で藤野が指摘するように、多様な観点から地域に根差した再エネを選び、柔軟でしたたかなシステムを作ることも重要だ。日照条件や風況など環境エネルギーの賦存状況が地域ごとに異なるのと同様、リスクとなり得る自然災害の種類や質も、地域ごとに様々である。これらを踏まえて再エネをバランスよく利用することが、災害時にも安定的で信頼性の高い電力システムを生み出す。
 再エネの普及に真に必要なことは、再エネを礼賛し盲目的に推進することではない。再エネのもつ技術的特性、地域特性からくる潜在的なリスクを正面から冷静に受け止め、許容できる環境負荷を議論した上で着実な歩みを進めることこそが、末永く再エネとつきあっていくための近道である。


(1)太陽光発電の安全性については、他にも火災時や震災によるパネル破損時の感電の危険性、積雪落下の危険性などが指摘されている。
(2)経済産業省は、2014年6月に「落雷事故を踏まえた今後の再発防止対策等について(中間報告書)」を作成した。また、必要に応じて「発電用風力設備の技術基準の解釈について」の改正を行っている。
(3)電気学会は、本年2月25日に技術報告「雷性状を考慮した風力発電設備の耐雷技術」を出版した。

西山裕也 NIRA主任研究員

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