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NIRA政策提言ハイライト

リスクを選択するフリーランスこそが、社会の担い手となる時代

NIRA政策提言ハイライト 2017/02発行

リスクを選択する人々
 トランプ大統領が就任して1カ月が経過したが、安定した政策運営とは言いがたい状況が続いている。それにも関わらず、アメリカの株式市場は最高値を更新している。その背景には、金融業の規制緩和や法人税率の引き下げに対する期待があるといわれている。中でも注目すべきは、選挙期間中の公約は、小ビジネスの事業者はアメリカの成長のエンジンであるとし、個人所得の最高限界税率を33%に引き下げるが、フリーランスや個人事業主については、さらに、その約半分の15%とする税制プランを打ち出している点だ。

トランプの税制改革
 そもそも、アメリカは企業の新陳代謝が盛んなことでよくしられ、シリコンバレーの起業動向に世界が関心をよせている。しかし、起業が活発なアメリカでも大企業を辞めて起業することを阻む要素はいくつかあるようだ。そのうちの一つを解決しようというのが、今回の税制改革案である。現在、政権内で集中的な検討が進められているようだが、もし、実現されれば、大企業を辞めて起業する人が増えるだけではなく、これまで勤めていた企業との雇用関係を解消し、直接、フリーランス契約を結ぶ人が増加するといわれている。

労働法の見直しを
 NIRA総研では、これまで、新しく生まれつつあるフリーランスに着目し、研究を進めてきた。フリーランスは、日本経済のけん引役になる可能性も大きく、期待されている。しかし、その育成を阻む制度も存在する。例えば、その一つが労働法である。現在の労働法は製造業で働く雇用者を保護する法律として制定されたものであり、失業保険の給付をはじめとして、独立事業者の保護が不十分であることが指摘されている。大内伸哉神戸大学教授は、NIRAオピニオンペーパーNo.27「AI時代の雇用の流動化に備えよ」で、フリーランスをはじめとする自営的就労を選択する者が今後はさらに増加するが、このような働き方は労働法の適用外となっており、経済成長の重要な要素となることから法律の対象となるように法体系を見直す必要があると述べている。

フリーランスこそが新しい社会の担い手
 さらに、フリーランスの新しい働き方を社会を変革する担い手ととらえようとしているのが、宇野重規東大教授によるNIRAオピニオンペーパーNo.28「新たな働き方としてのフリーランス-都市と地域の対立を超えて-」である。そこでは、フリーランスは、単に、経済的なけん引役になるだけの存在ではなく、いわば、都市と地域を結び付け、地域のコミュニティーを形成する人々だと考えている。地域に根を下ろし、地域社会を安定させる役割を期待しているともいえる。都市で仕事を得てローカルで暮らすフリーランスの姿は、戦後、地域の駅前商店街で小売店を営みながら、地域社会のために活動していた事業主の姿と重なる。

 現在、巷間では、働き方改革についての議論が進んでいる。残念ながら労働時間の問題に矮小(わいしょう)化されているようにみえるが、100年という人生を見据えれば、雇用形態も含めて、多様な働き方が可能となる社会こそが求められているはずだ。そして、さまざまな働き方をする人々が一定程度、社会に存在することが、コミュニティーを支え、ひいては社会の発展に大きく寄与することになる。そのための制度改革の議論を早急に進めるべきである。

表 トランプ大統領の税制改革プラン(一部)
○個人所得税
 ブラケットを7段階から3段階に簡素化し、限界税率を引き下げる
 (10%、15%、25%、28%、33%、35%、39.6%→12%、25%、33%)

○連邦法人税
 連邦法人税率を35%から15%に引き下げる
 フリーランス、個人事業主、パートナーシップ事業者などにも15%の法人税を適用する。
(出所)TAX POLICY CENTER, “An Analysis of Donald Trump’s Tax Plan”(Oct.,2016)

参考文献
NIRAオピニオンペーパーNo.28「新たな働き方としてのフリーランス-都市と地域の対立を超えて-」
NIRAオピニオンペーパーNo.27「AI時代の雇用の流動化に備えよ」

神田玲子 (NIRA総研 理事・研究調査部長)

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