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NIRA政策提言ハイライト

第4次産業革命に日本の中小企業は対応できるのか

NIRA政策提言ハイライト 2017/03発行

「改正個人情報保護法」施行を目前にして
 第4次産業革命が到来したといわれるなか、モバイル端末などを介してネットワークに繋がる、数多くの個人にヒモづけられた情報が持つビジネス価値が急速に高まっている。NIRAわたしの構想No.22『消費者とともに築く未来』(2016年4月)で論じられているように、こうした情報を活用することで、企業と消費者とが双方向で緊密につながり、商品・サービスの最適供給を可能にしている。しかし、こうした個人にヒモづけられるデジタル情報は、適切に管理されないと、容易に広範囲なプライバシー侵害などの問題を引き起こしてしまう危険性も持ち合わせている。
 こうした流れを受けて、2017年5月30日から「改正個人情報保護法」が施行される。今回の改正では、ビッグデータの活用を促進するために、個人が特定できないような「匿名加工情報」を条件に、個人情報の2次利用を可能にした。それと同時に、プライバシー侵害などのリスクへ対処するため、適切な個人情報の管理体制を敷くことが企業に義務づけられた。

中小企業の対応の遅れ
 残念ながら、この法改正のもつ意味への理解が日本の中小規模の事業者に浸透しているとは言えない状況だ。従来の個人情報保護法の適応範囲は、保有する個人情報件数が5000超の事業者に限られていたが、改正によって中小企業を含め全ての事業者が対象となる。また、AIやIoTの導入、ネットワークを介した機密情報のやりとりや顧客情報のネットワーク管理を進める中小企業は増えており、その意味でも全ての企業が厳格な個人情報管理体制を敷くべき対象となる。しかし、今回の改正施行の約半年前に中小企業を対象に実施されたアンケートでは 、法改正への対応が済んでいる企業は約8%に過ぎなかった。多くの企業で対応が後手々々になっていることが顕著だ。さらに、半数を超える参加企業が改正の内容を知らなかったと回答している。改正法が適応されることで中小企業が対応すべき事項は多岐にわたるのだが、このままでは十分に対応ができない事態もでてくるだろう。

第4次産業革命に社会全体で備えよ
 今回の法改正は、新たな情報化社会に向けた法整備のほんの一部に過ぎない。日本では、全体として個人も企業もデジタル化された個人情報を厳密な規則に則り主体的に管理するという意識が未発達である。NIRAは、NIRA報告書『プラットフォーム化の21世紀と新文明への兆し』(2015年10月)などを通じて、新しい情報化時代をどのように考え、行動するかについての解説と提言を重ねているが、当事者意識を広く醸成するためには、まだ多くの努力が必要である。ビッグデータの活用、AIやIoTの導入による生産性の向上やサービスの質の改善も非常に重要なのだが、どのような情報をどのような形でネットワークに垂れ流してしまっているのか、自覚せぬまま放置しかねない中小企業の危うい状況を見過ごさず、社会全体で第4次産業革命に向けて適切に対応できるようにせねばならない。


<参考文献>
NIRAわたしの構想No.22『消費者とともに築く未来』(2016年4月)
NIRA報告書『プラットフォーム化の21世紀と新文明への兆し』(2015年10月)

森直子(研究コーディネーター)

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