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NIRA政策提言ハイライト

利用者との対話がFinTech戦略の鍵をにぎる

NIRA政策提言ハイライト 2017/06発行

未来投資戦略の重点分野のひとつに
 6月9日、政府は新たな成長戦略「未来投資戦略2017」を閣議決定した。快適で利便性の高いサービスが享受できる、超スマート社会”Society5.0”を実現するため、5つの重点戦略分野を選定しイノベーションを加速させていく方針だ。5つの戦略分野とは「健康寿命の延伸」「移動革命の実現」「サプライチェーンの次世代化」「快適なインフラ・まちづくり」そして金融とITの融合「FinTech」である。FinTechに関する主要戦略としては、特にブロックチェーンとオープンAPIに関する取り組みを強化していくことが、報告書の中で明記されている。

FinTech戦略の柱となる「ブロックチェーン」と「オープンAPI」
 NIRA総研では、既にこの2つの技術革新に着目し、研究を行っている。ブロックチェーンについては、NIRAオピニオンパーパーNo.26(2016年12月)「ブロックチェーンは社会をどうかえるか」を公表、その可能性や今後の課題について俯瞰し、またオープンAPIについても、この先APIがもたらすであろう、金融業の変革について議論をスタートさせたところだ。
 オープンAPI(Application Programing Interface)とは、FinTech事業者などが、既存銀行のシステムに接続しやすくするため、銀行側がプログラムの接続口を公開する仕組みである(下図参照)。政府がAPIの取り組み強化の旗印を掲げている一方で、一部の金融機関や利用者からは「銀行の情報資産を、スタートアップ企業に易々と使わせるつもりはない」「個人情報が第三者に公開されてしまってもよいのか」といった否定的な意見もある。しかし、オープンAPIは、法整備など利用環境を整えた上で利用すれば、銀行とスタートアップ企業の協業を促し、金融サービスの利便性向上に大きく貢献する可能性を秘めているものだ。既に英国やドイツなどのチャレンジャーバンクは、オープンAPIを活用した、新しいタイプの金融サービスを事業展開している先例もある。

新技術を社会に根付かせるためには
 わが国においても、FinTech戦略を推進していくためには、ブロックチェーンやオープンAPIを実装したサービス自体を、利用者が「安心で便利でメリットが大きい」と感じることができなければ信頼を獲得できず、結果的にその活用は広がらないだろう。前掲のオピニオンペーパーの中で、翁NIRA総研理事はこの点を指摘し、まずは新技術に対する利用者の十分な理解が必須だ、と説いている。
 サービスを提供する金融機関には、ブロックチェーンやオープンAPIがもつ可能性や、技術そのものをより一層正しく理解した上で、積極的にスタートアップ企業と連携する事が求められる。そしてスタートアップ企業のアイデアを活かした、新しいタイプの金融サービスをまずは試してみる事が重要だ。その上で利用者から得られる意見・評価をもとに、更によりよいサービスを提供する、といった試行錯誤を繰り返す努力を惜しんではならない。利用者の新技術に対する理解や信頼は、こうした対話を繰り返すことで得られていくものではないだろうか。

未来投資会議リンクページ
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/index.html

NIRAオピニオンペーパーNo.26「ブロックチェーンは社会をどう変えるか

林 祐司(NIRA総研 主任研究員)

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