利用方法

日本を動かす知をつなぎ、政策課題を論じ、ビジョンを提示するシンクタンク

トップ > 研究の成果と課題の発信 > わたしの構想 > グローバル都市 東京

わたしの構想

グローバル都市 東京

わたしの構想No.6 2014/11発行
藤村龍至(東洋大学理工学部専任講師)、 門脇耕三(明治大学理工学部専任講師)、 市川宏雄(明治大学専門職大学院長)、 遠藤 薫(学習院大学法学部 教授)、 レジス・アルノー(『フランス・ジャポン・エコー』編集長)                              *原稿掲載順

 世界的な都市間競争が強まる中で、東京の未来図をどう描けばよいのか。本号の識者からは、2度目の五輪開催に向けて東京はハード・ソフト面でさらなる進化が必要との指摘があった。さらに、日本の伝統文化を大切にしながら外国人にも親しまれる品格ある国際都市への期待感や、人口減少社会に対応した都市機能のダウンサイジングの必要性が示された。



 小冊子PDF   英文版PDF

 識者に問う
 「東京が魅力あるグローバル都市であるために、何をすべきか」

 安倍内閣は「地方創生」を新たな政策目標に掲げ、人口減少や少子化に直面する地域再生に向け議論を開始した。
対極に位置する首都・東京への「一極集中」批判も少なくない。
東京は、未来に向けどのような姿を目指すべきなのか。
競争力の高いグローバル都市であり続けるために、解決すべき課題とは何か。
都市政策、社会学、建築学の研究者、建築家、また、東京在住の外国人ジャーナリストに話をきいた。

*以下、記事中の敬称は略

1 藤村 龍至 「2つの課題に対応する政策ビジョンを

2 門脇 耕三 「5つの行政単位に分け、ビジョンを描け

3 市川 宏雄 「世界と戦う東京が日本をけん引する」 

4 遠藤   薫  「「居心地のいい東京」を創ろう

5 レジス・アルノー 「歴史・文化を守り品格ある巨大都市に

インタビュー実施: 2014年8~9月
聞き手: 豊田奈穂(NIRA主任研究員)
編集: 原田和義

 識者が読者に推薦する1冊 (推薦図書リストはこちらから)

 企画に当たって
  「グローバル都市 東京」 神田玲子(NIRA理事)

このページのトップへ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■ 1 2つの課題に対応する政策ビジョンを
          藤村龍至 東洋大学理工学部専任講師


 東京の未来像を考える際、2つの側面がある。まずアジアのグローバルシティーとして東京の個性をどう打ち出していくかだ。2020年の東京五輪に向けて、選手村ができる晴海を中心に半径8キロ圏(都心3区)の課題である。
 それ以外の都区部は、ローカルシティーとしての東京が抱える諸課題への対応が必要になるだろう。日本全体が縮小方向に向かう中で、東京もダウンサイジングが求められている。そういう二面性があることを前提に政策ビジョンを打ち出し、合意形成を図る必要がある。
 晴海から8キロ圏内は、五輪施設計画などを通じて、国際競争力を高める都市づくりを目指すべきだ。「臨海部にアジアのグローバルセンターをつくる」といった構想など、東京がチャレンジする課題に取り組む。中心となる臨海部は、レインボーブリッジの内側の「インナーハーバー」を景観・生活港として再開発できれば、湾岸を軸に新しい東京のイメージができる。五輪はその起爆剤となる。
 もう1つの側面は、8キロ圏外の東京の課題。都民に身近な日常生活の問題で、コミュニティーをどう再構築するかがテーマだ。人口減少時代を迎え、学校や公共施設の将来的な再編成をどう進めていくか。近郊都市では1960~70年代に住宅開発が始まり、ベッドタウンとして人口も急増したが、今や高齢化が進み人口流入も止まりつつある。
 こうした状況は都区内も多摩地域も地方都市も変わらない。学校などのインフラ総量を段階的に減らしていく必要がある。小中一貫校にして集約するとか、公民館を複合化するとか、多機能化した上で拠点化を図るなど政策課題は多い。

藤村龍至 (ふじむら・りゅうじ)
建築家。建築や都市に関する理論を発表。情報・サービス産業への産業構造の転換とユビキタス化に伴う都市空間の再編や、縮小社会における「前向きな街の畳み方」を提案。
東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。現在、藤村龍至建築設計事務所代表を兼任。著書に、『批判的工学主義の建築』(NTT出版、2014年)、『藤村龍至 プロトタイピング-模型とつぶやき』(LIXIL出版、2014年)ほか。

このページのトップへ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■ 2 5つの行政単位に分け、ビジョンを描け
          門脇耕三 明治大学理工学部専任講師


 東京は1つの意思決定をする行政単位としては、大き過ぎる。適切な単位、例えば5つの行政単位に分割し、それぞれの地域にふさわしい将来像を描くべきではないか。
 まず都心3区は、丸の内や品川を中心にメガフロア型のオフィスの建設が続き、世界的な競争力を持つビジネス地域として発展を続ける。2つ目の湾岸エリアも、「新都心」として開発が進む。2020年の五輪開催に合わせて、大空間型の施設ができる。そこが東京に足りていないコンベンション機能や展示機能を補完していく。旧都心と新都心は、連携しながら経済をけん引する役割を果たしていくだろう。
 残る3つは、世田谷区など区部の西側エリア、下町など区部の東側エリア、多摩を中心とするエリアだ。この3つはストックの質も違うし、住民の属性も違う。西側区部エリアの住宅地は、戸建て住宅がストックの中心で、歴史的には最初に郊外開発が進んだところだ。東側区部エリアは2000年代に入って住宅建設が本格化し、新旧住民が共存する。今後はそれぞれの実情に合った開発が必要だろう。
 多摩地域は、東京の生産年齢人口が減っていく中で、ここに住んで都心に通勤するというモデルは考えづらくなる。特に共働きを前提とするような若い世代では、電車で1時間かけて通勤する郊外型居住が難しくなる。かつてのニュータウンは役目を終え、適切な間引きが必要となる。
 ただこの地域は、東西交通に加えて神奈川、埼玉への南北交通も整備され、中核型の都市域が幾つかある。それらを核として、独自の経済圏に再編することも可能ではないか。大学も多く、教育・研究のまちとしても可能性がある。

門脇耕三 (かどわき・こうぞう)
公共住宅の再生プロジェクトや技術開発プロジェクトに多数参画。効率的にデザインされた近代都市が、人口減少期を迎えて変わりゆく姿を、建築思想の領域から考察。
専門は建築構法、建築設計、設計方法論。東京都立大学大学院修士課程修了。博士(工学)。首都大学東京助教を経て、現職。著書に、『静かなる革命へのブループリント:この国の未来をつくる7つの対話』〔共著〕(河出書房新社、2014年)、『シェアをデザインする』〔共編著〕(学芸出版社 、2013年)ほか。

このページのトップへ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■ 3 世界と戦う東京が日本をけん引する
            市川宏雄 明治大学専門職大学院長


 東京の未来は、日本の未来と密接にかかわっている。日本は2008年から人口減少社会に入ったが、その中で唯一人口が増えているのは3,500万人を擁する東京圏だ。長い間、「一極集中」はいけないと言われてきたが、経済メカニズム上はどこかで稼がなければならない。それは世界と戦っている東京のほかにはない。
 現在の日本の成長エンジンは、東京~福岡の西日本国土軸上にある。この軸線上のエンジンをどう動かし、日本の力をつけていくかが未来を語る最大のテーマだ。その要となる東京には、2020年の五輪開催と2027年開業予定のリニア中央新幹線が控えている。安倍内閣の国家戦略特区構想も、発表のタイミングが東京五輪とセットになっている。
 「五輪は政策実行の玉手箱」というのが世界の常識で、普段ではできないことが幾つもできる。東京五輪の後には、2027年のリニア開通(東京―名古屋)が続く。東京は第3次産業中心、名古屋はトヨタ自動車など製造業が中心だ。この2つの経済圏がリニアで一体化される。物流は別としても人流面では、名古屋は東京から40分の郊外に近づく。
 リニア開通は東京の都市構造も変えるはずだ。発着駅の品川は、東京国際空港(羽田)と10分でつながる場所にある。羽田の国際線パワーは滑走路の拡張などでさらに高まる。
 2030~2040年の日本は、若者が老人を支え切れなくなる試練の10年を迎える。それまでに東京と国の力をできるだけ高めておく必要がある。これからの15年はかなり重要な時期となる。そのスターターは6年後の東京五輪だ。五輪を契機に東京を変え、未来をつくる作業に入る。

市川宏雄 (いちかわ・ひろお)
国内外の都市問題に精通。グローバルな競争力を重視した東京の都市政策を展開。森記念財団都市戦略研究所「世界都市総合力ランキング」委員会座長。
専門は大都市政策、危機管理政策、次世代政策構想。ウォータールー大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。富士総合研究所、明治大学教授等を経て、現職。著書に、『山手線に新駅ができる本当の理由』(メディアファクトリー新書、2012年)、『東京の未来戦略―大変貌する世界最大の都市圏』〔共著〕(東洋経済新報社、2012年)ほか。

このページのトップへ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■ 4 「居心地のいい東京」を創ろう
           遠藤 薫 学習院大学法学部教授


 世界の主要都市ランキングで、東京はずっと2番手グループだった。しかし最近は下位からの追い上げが激しく、相対的に東京の順位が落ちている。ビジネスや経済での評価は高いが、文化面や交流、情報発信などソフト面が弱く、総合評価を下げているのだ。戦後、「世界の最先端をめざせ!」と経済・技術優先で頑張ってきたが、その分、文化的発信力がおろそかになり、評価の停滞を招いている。
 外国人観光客の来訪者数は分かりやすい指標だ。東京の外国人居住者数は右肩上がりで、決して悪くはない。観光入込客数も急増しているが、欧州の市場調査会社のランキング調査で順位はまだ36位だ。それをどう改善するか。
 例えば、「日本人が見る東京」と「外国人が見る東京」の視点がズレているのではないか。国内の旅行ガイドブックでは6~7割が東京ディズニーランドを表紙に掲げている。海外のガイドブックには「一番、東京らしい場所」として、築地のすし屋さんや仕事帰りのサラリーマンで混み合う新橋あたりの居酒屋の様子が紹介されている。先端技術とオタク文化の秋葉原やカワイイ文化の原宿なども定番の人気スポットである。
 また、最近の東京の夏祭りには外国人の姿も目立つ。みこしを担いだり、高円寺の阿波おどりでは先頭に立ったりする。外国人は東京の暮らしを楽しもうとしている。「非日常」より「居心地のよい日常」を求めている。東京の「居心地のよさ」を実現する上で、シャッター街やホームレス、住宅・育児問題、防災対策など課題は多い。外国人が居心地よく感じる都市は、日本人にも住みやすい都市であるはずだ。そうした好循環をつくる取組が必要である。

遠藤 薫 (えんどう・かおる)
多様なメディアの相互関係を「間メディア性」と呼び、それが政治、都市、文化などの現代社会のあり様や、その変容に及ぼしている影響を分析。
専門は理論社会学、社会情報学、社会シミュレーション。東京工業大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。博士(学術)。信州大学助教授、東京工業大学大学院助教授等を経て、現職。著書に、『間メディア社会の<ジャーナリズム>』〔編著〕(東京電機大学出版局、2014年)、『聖なる消費とグローバリゼーション』(勁草書房、2009年)ほか。

このページのトップへ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■ 5 歴史・文化を守り品格ある巨大都市に
            レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長


 東京には現在、大きな高層ビルが次々にできている。しかし、美しい伝統的な建物を守るガイドラインはあるが、所有権を超越して保存・維持を図る法的枠組みがない。東京駅の石造りの駅舎には、ある種の上品さを感じる。明治・大正時代から続く多くの建物が守られないと、東京は上海や香港のように息苦しく、生活環境も低下する。子育ても難しい。
 新橋~虎ノ門の道路を日本の“シャンゼリゼ通り”にしようという構想がある。しかし、パリのシャンゼリゼが成功したのは、多くのビルに囲まれたからではない。イベントや文化によるもので、毎晩活気がある。こうした面がなければ、店ばかり多くても、退屈な街になってしまう。
 事実、パリでは大型ビル建設を望む人は少ない。現在、東京で最も価値ある場所は田園調布、目黒、あるいは成城学園前などだ。これらの地域は「村」のようであり、住宅と多くの緑地や公園、学校があるだけだ。郊外の一橋大学周辺などは私にとって未来である。
 もう1つの東京の問題は、保守的な警察の姿勢だ。通常、街路で行われる催しなどは一部を除くと許可されない。スピルバーグ監督が東京で映画撮影しようと思っても不可能だろう。都内の街路でも撮影が可能になれば、海外から多くの撮影隊が訪れ、東京のイメージアップにもつながる。海外の旅行者を引き付けるためにもイベントは必要だ。
 20世紀には、アジアの国々が日本に注目してきた。今は日本や東京が、上海や香港に目を向けている。しかし、それは発展途上国のメンタリティーのようなものだ。東京は品格のあるメガロポリスとして進むべきである。

レジス・アルノー (Regis Arnaud)
在日フランス商工会議所発行の経済誌『フランス・ジャポン・エコー』編集長。1995年に来日し、以後東京在住。外国人からみた東京の魅力や課題を長年執筆。日本の文化的伝統や共同体意識、健全な民主主義を評価する一方、文化軽視の都市政策への辛口コメントにも定評がある。
パリで阿波おどりを開催する「AWA ODORI PARIS 2015」プロジェクト発起人の1人。『Le Figaro』、『TF1』ジャーナリストも兼任。

このページのトップへ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 識者が読者に推薦する1冊 (推薦図書リストはこちらから)

藤村龍至氏
蓑原敬、饗庭伸、姥浦道生、中島直人、野澤千絵、日埜直彦、藤村龍至、村上暁信〔2014〕
『白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか』学芸出版社

門脇耕三氏
三浦展・藤村龍至(編)〔2013〕『現在知 vol.1 郊外 -その危機と再生-』NHK出版

市川宏雄氏
市川宏雄〔2013〕『東京五輪で日本はどこまで復活するのか』KADOKAWA/メディアファクトリー

遠藤 薫氏
遠藤薫(編著)〔2011〕『グローバリゼーションと都市変容』世界思想社

レジス・アルノー氏
Alex Kerr〔2002〕Dogs and Demons: Tales from the Dark Side of Japan, Hill and Wang
(アレックス・カー〔2002〕『犬と鬼-知られざる日本の肖像-』講談社)

このページのトップへ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 企画に当たって
  「グローバル都市 東京」 神田玲子(NIRA 理事)


 21世紀は、グローバル規模での都市化の時代だといわれる。魅力的な都市が、アジアにも続々と生まれている。果たして、グローバル都市としての東京の姿をどう描くべきか。
 最先端のグローバル都市で、未来を俯瞰(ふかん)する努力をしている例がある。ニューヨーク市のマイケル・ブルームバーグ前市長の取組だ。同氏は、2011年に金融産業へ依存する経済構造から脱却し、シリコンバレーを凌(しの)ぐテクノロジーセンターへの移行を宣言した。読者のなかには、リーマンショックの経験を踏まえれば当然の判断と思われる方もおられるかもしれない。しかし、そこに至る取組が興味深い。市長はニューヨーク市の新たな構想を練るために、19世紀にさかのぼって著名な事業家を調べ上げ、都市の繁栄には工学系の人材が欠かせないと判断する。そこで、応用科学の大学を創るためのアイデアを世界中の大学から募集し、さらに、市内の事業家、大学学長への膨大な数のヒアリングを実施した。主要な大学が、ニューヨーク市の問いかけに応えたのは想像に難くない。
 翻って、日本における国家戦略としての東京の重要性は、21世紀にあってますます高まるばかりだ。残念ながら、昨今は、東京の一極集中にとかく議論が集中しがちだが、グローバルな視点からみて、東京の魅力を高めることに、従前以上に注力すべきであることは論をまたない。本号では、21世紀を生きるための東京の構想を、自由に語っていただいた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。
E-mail:info@nira.or.jp

このページのトップへ