NIRALogo

3 キーワードからみる、研究テーマと政策形成とのかかわり
  −「環境」分野を題材に−

 今年度収録した研究成果5255件を研究分野別(大分類)にみると、「国土開発・利用」が20.2%と最も高い割合となっている。また例年、「国土開発・利用」「経済」「産業」の3分野の合計が全体のほぼ半数を占めていたが、今年度は43.6%となった。1999年度より件数を増やしているのは、「政治・行政」7.6%(前年比プラス2.4ポイント)と「環境」10.6%(前年比プラス2ポイント)の2分野である。減少幅が大きかったのは、「経済」12.3%(前年比マイナス1.7ポイント)と「福祉・医療・教育」7.2%(前年比マイナス1.8ポイント)であった。「福祉・医療・教育」分野については1997年度調査からその割合を伸ばしてきたが、今年度は減少となった(表3-1)。

表3-1 研究分野別(大分類)にみる研究件数の割合の推移(%)

研究実
施年度
国土開
発・利用
国民
生活
福祉・医
療・教育
交通通信・
情報
資源・エ
ネルギー
環境
問題
政治・
行政
経済産業国際
問題
文化・
芸術
科学
技術
198725.48.64.43.75.63.86.33.813.215.55.71.42.6
198828.96.65.45.15.83.65.54.211.513.15.72.32.3
198932.45.56.24.74.72.15.64.013.511.75.62.51.5
199027.96.45.35.35.13.35.12.816.814.64.01.41.9
199125.16.26.26.06.13.37.02.416.212.95.11.52.1
199225.66.66.16.74.63.87.52.815.612.65.31.61.3
199324.66.46.87.75.43.37.43.615.512.04.61.41.5
199420.67.36.46.64.93.17.84.015.714.45.12.12.1
199519.36.76.66.66.03.28.03.715.414.65.32.12.4
199618.17.36.37.16.43.48.74.114.814.75.01.82.4
1997
件数
19.2
839
5.8
253
8.1
351
7.7
334
5.5
239
3.9
169
9.4
410
4.0
176
15.8
690
14.1
613
3.6
159
1.5
65
1.4
61
1998
件数
20.9
873
6.9
288
8.5
357
7.1
298
5.6
234
3.0
124
8.7
366
4.9
206
16.0
670
11.2
468
4.2
176
1.4
57
1.6
66
1999
件数
19.4
1092
6.0
336
9.0
508
7.9
443
4.8
273
3.5
195
8.6
482
5.2
295
14.0
790
12.1
683
6.2
347
1.6
90
1.7
96
2000
件数
20.2
1066
5.9
310
7.2
377
8.1
425
4.7
249
4.4
232
10.6
556
7.6
398
12.3
645
11.2
591
5.1
266
1.3
68
1.4
72

 では、シンクタンクが実施した研究のテーマと、政策形成にはどの程度の関連があるだろうか。本稿で、1986年度から2000年度の各年度に実施された全研究のうち、ここ数年その割合が高まっている「環境」分野について取り上げ、キーワード検索による分析を試みた。

 環境問題はいまや世界共通の関心事である。2001年11月、モロッコ・マラケシュにて開催されたCOP7において、京都議定書の締結に向けて本格的な取り組みの実施が合意に至った。それぞれの思惑はあるものの、国際的な協調なくして、地球環境の維持改善はない。欧米、とくにヨーロッパ諸国においては、1970年代以降、環境問題への関心が高まり、89年のチェルノブイリ原発事故を発端に、環境に関するさまざまな取り組みが行われてきた。一方、国内ではややその動きは遅く、80年代後半から環境問題への関心が一気に高まりを見せ、93年の環境基本法制定を皮切りに、その後環境に関連する法案が数多く制定されている。内外ともに重要なテーマであり、そのためにも有効かつ効果的な政策が打ち出されなければならない。

 こうした社会的な動き、また内外の取り組み等を背景に、シンクタンクが実施した研究についても、「環境」分野の研究件数の推移は1991年を機に増加傾向にあり(図3-1)、2000年度では全件数の1割を超えるまでになった。

 また、2000年度の調査対象機関の主な専門分野についてみると(優先順位の高い順に3分野まで選択可能)、「環境」を第1位にあげた機関は338機関中21機関、3分野すべての合計でみると86機関、つまり約4分の1が、「環境」を専門としている(図3-2、各機関に主な専門分野として3分野を選択してもらい、そのすべてを集計してグラフ化し割合を示した)。シンクタンクがこの分野を重要視していると理解してよいであろう。そしてこの分野については今後さらに比重を増すことになると思われる。

図3-1 全研究件数と環境問題をテーマとした研究件数の推移

図3-2 主な専門分野

 そこで、1986〜2000年度に実施された調査研究について、「環境」分野に該当する研究のみを抽出し(4567件)、調査内容の傾向と法制定とのかかわりをみることにした。方法については、各研究タイトルを以下に設定したキーワードで検索し、それを年度ごとに集計した。キーワードについては、「ゴミ処理」「ダイオキシン」「リサイクル・再利用」「廃棄物」「温暖化」「地球環境」「循環・ゼロエミッション」「環境保全」「環境影響・環境負荷」「環境評価・アセスメント」「公害」「大気汚染・有害物質汚染等」「経済」の13を設定し、その中で件数の多い6項目についてグラフにまとめた(図3-3)。

図3-3 キーワード検索による研究テーマと件数の変遷と主な環境政策

[ 拡大図 ]

 その結果、次のような傾向がみられた。

「廃棄物」については、1992、1999、2000年度で出現頻度が高い。「リサイクル・再利用」については、1991〜95年まで30件弱で推移し、2000年度には40件を超えた。91年のリサイクル法の制定を機に、93年省エネリサイクル支援法、95年容器包装リサイクル法、98年家電リサイクル法、2000年には建設リサイクル法、食品リサイクル法が相次いで施行されており、それに呼応するかたちで、シンクタンクの研究も実施されているとみることができる。また、98年から件数が増えたのが「循環・ゼロエミッション」で、2000年度では「廃棄物」「リサイクル・再利用」に次いで頻度が高くなっているのも特徴的である。いずれも法律制定・施行に先立って研究件数が増えていることを考えると、シンクタンクの調査研究が政策形成に関与していることがうかがえる。

 さらに、発注者の内訳について見てみよう。4567件のうち、ほぼ4割が地方公共団体からの発注で、次いで中央官庁・政府機関の2割、公益法人等の2割弱となっている。自主研究は1割に満たない。この分野の重要性を考えると、シンクタンクの調査研究件数も増加するものと思われる。また、市民団体やNPO、NGOといった団体の活動がたいへん活発な分野でもある。これら諸団体とシンクタンクが積極的に政策形成に関与することで、政策決定機関である政府、中央官庁、地方公共団体との連携もますます強まり、より高いレベルの環境政策の生成へとつながっていくのではないだろうか。

 しかし、いささかうがった見方をすれば、シンクタンクが、政策形成過程においては一定の役割を果たしているものの、政策の事後評価という側面からみると、力不足という印象を受ける。今後はこの役割を、シンクタンクが積極的に果たしていくことが極めて重要な要素となるのではないだろうか。

 国民・市民の政策形成への参加を促すためにも、生活に身近な「環境」というテーマを通して、シンクタンクが政策立案者・政策決定者と市民をつなぐコーディネーターとしての地位を確立することを期待したい。

総合研究開発機構
政策研究情報センター 島津千登世


NIRALogo
トップページ
 
[ 戻 る ]

Copyright (c) National Institute for Research Advancement (NIRA)
Copyright (c) 総合研究開発機構 (NIRA)