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II シンクタンクの研究形態−受託研究への依存とその問題点
1.研究形態について
(1)現在実施している研究形態の内訳(有効回答:261機関)
全体でみると、「受託研究が7割以上」と回答した機関は66.7%(174機関)、「5割以上」を含めると、74.3%(194機関)となった(図2-1)。組織形態別にみると、営利法人では9割近くが「7割以上」と回答しており、受託研究への依存度が高いことがわかる。
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一方、「自主研究が7割以上」と回答した機関は15.3%(40機関)で、その8割が公益法人であった。「自主研究がゼロ」と回答した機関は33.0%(86機関)で、その6割強は営利法人であった。営利法人にあっては、約半数の機関が「自主研究が1割未満」と回答している。また、自主研究が3割以上である79機関のうち、8割は公益法人であるとの結果が出た。
助成研究については、73.2%(191機関)が「ゼロ」と回答している。
『シンクタンク年報2003』に掲載した2001年度の研究成果4894件の内訳をみても、そのうち78.3%が受託研究であり、上記を裏付ける結果となっている(図2-2)。
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(2)研究形態の内訳に対する満足度(有効回答:261機関)
上記の研究形態をふまえ、それに対する満足度を問うたところ以下の回答を得た。「満足している」と回答した機関は22.6%(59機関)で、「満足していない」が50.6%(132機関)、「どちらともいえない」が26.8%(70機関)となった。組織形態別にみると以下の結果となった(図2-3)。
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「満足していない」あるいは「どちらともいえない」と回答した202機関に、その理由を問うたところ(複数回答可)、「資金・財政不足」を挙げた機関は61.9%(125機関)、「人材不足」を挙げた機関は33.2%(67機関)にのぼった。財政確保の面からも委託研究の実施は必須であるため、これをこなすことで人材、時間がとられ、自主研究や助成研究を実施したいが難しいとの意見もあった。また、発注者側の財政不足による受託費軽減も大きな要素として取り上げられた。さらには財源不足のために、必要な人材を確保できないとの意見もあり、財源、人材、時間の面で三すくみ状態になっている構造が浮き彫りになった。以下に、寄せられた意見をいくつか取り上げる。
- 受託研究以外の有力収入が少ない。受託単価が低下しており、オーバーワークになりやすい。〈公益法人〉
- 研究内容に見合う受託金額でない場合が多く、往々にして赤字になる。〈営利法人〉
- 自主研究の割合を拡大させたい。そのためには受託研究収入以外の財源の確保が必要。〈公益法人〉
- 委託内容が複雑化することに対し、委託費は年々減少している。特定業者のダンピングにより原価さえも回収されない委託費となっている。〈公益法人〉
- 財源不足・人材不足、資金運用条件の硬直性、政策市場の未成熟(成果の透明性、競争環境、評価制度など)。〈公益法人〉
- 財源不足、成果を急ぎ求められることによる研究時間不足。〈営利法人〉
- 低金利により資産運用益が極めて少なく、財源を受託研究に依存せざるを得ない。財源不足と受託研究に人手・時間を取られなることにより、主たる事業である自主研究への取り組みが不十分となっている。〈公益法人〉
- 余裕のある研究遂行のために、特に各専門領域の知識における人材面の強化を図っていきたい。〈公益法人〉
- 知的労働への評価は高いが、対価は極めて低く、企業経営の視点からは積極的な研究投資は困難。〈営利法人〉
- 国および地方公共団体の委託調査費の減少。調査費用に対して作業時間が多くかかりすぎる。知的作業(労働)に対する対価が安すぎる。〈営利法人〉
- 特定研究員への依頼の集中。官公庁等発注時期遅延による研究受託時間の不足。〈公益法人〉
- 財源不足による人材不足(必要な研究員を確保できない)。〈公益法人〉
- 時代性をとらえた自主研究を先行的に実施したいが、財源・時間・人材不足のため、企画と予備研究段階で一時中断せざるを得ないのが残念。人を雇用するからには経営維持のために資金を最優先に回さざるを得ない。経営は自己責任として守るのが当然であるが、自主研究のための資金作りができるようになりたい。〈営利法人〉
- 経営資源を受託事業によるところが多い。補助金についても自治体の財政状況から今後カットも予想される。自主調査事業を充実し、地域の先導的役割を果たしたいところであるが、財団の維持に苦慮していることから、今後も受託事業のウエートが高くならざるを得ない。〈公益法人〉
- 民間独立営利企業として活動しているため、収入はほぼすべてが受託による。昨今民間企業はもちろん、公共団体からの調査委託費が価格破壊状態にある中でも、それぞれの調査研究業務を受託費用の中で実行するしかない。また、同様の理由で調査研究以外の業務のウエートが本数、金額とも相対的に大きくなっているのが現実。〈営利法人〉
前述の「I-2 研究資金源について」では、6割を超える機関が現在の研究資金源の割合について「満足していない」と回答しているが、新たな資金源として期待する要素についてはその答えを得られなかった。
第1部で、小林陽太郎氏は、独立性を確保するためにも財政基盤の確立は特に重要であるとしているが、そのためにもシンクタンクが質の高い研究を行い、それが高く評価されること、シンクタンクの政策理念がゆがめられないだけの財政的・人事的基盤を持つ必要があるとも指摘している。そして、日本社会においてシンクタンクを醸成するための社会経済的環境整備が重要であると同時に、シンクタンク側の自助努力も不可欠であると示唆している。
2.受託研究について
(1)受託研究への依存度(有効回答:238機関、複数回答可)
受託研究を実施している機関のみを対象に、受託研究への依存度が高い現状についてその理由を尋ねた。「(1) 財政基盤の確保として不可欠」「(2) 親会社、認可官庁との関係性から不可欠」「(3) 政策形成への関与に不可欠」「(4) 自主研究を積極的に推進したいが財源・人的資源が確保できない」「(5) その他」の項目を設定し、複数回答可とした(図2-4)。
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「(1) 財政基盤の確保として不可欠」であると回答したのは、83.6%(199機関)にのぼり、次いで「(4) 自主研究を積極的に推進したいが財源・人的資源が確保できない」との回答が57.1%(136機関)となった。さらに「(3) 政策形成への関与に不可欠」との回答が38.2%(90機関)、「(2) 親会社、認可官庁との関係性が不可欠」が30.3%(72機関)であった。
(2)受託研究に対する評価と対価(有効回答:241機関)
受託研究に対する評価と対価については、「適正である」とした機関が30.7%(74機関)、「適正でない」が41.5%(100機関)、「どちらともいえない」が27.8%(67機関)であった。組織形態別にみると、「適正である」と回答した機関は、営利法人で17.9%、公益法人で41.9%である。一方「適正でない」については、営利法人で58.9%、公益法人では26.4%となり、両者の認識の違いが明らかとなった(図2-5)。
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「適正でない」あるいは「どちらともいえない」と回答した167機関にその理由を尋ねたところ、4割の機関が、「標準報酬単価制度の設定」や「研究評価制度の導入」を挙げた。また、日本社会全体の経済状況の悪化に伴う受託金額の低下が影響していること、さらにはシンクタンクに対する認知度、評価が低いことも取り上げられた。一方で、研究内容や研究員の質の向上を図るべきであるという、シンクタンク側の課題も挙げられた。
(3)受託研究の受発注方式に関する問題点(有効回答:231機関)
受託研究の受発注方式に係る問題点として、「(1) 研究制度が確立していない」「(2) 単年度単位の研究が多く、継続性に欠ける」「(3) 研究期間が短い、あるいは一時期に集中する」「(4) 発注方式(主に入札制度)は調査研究業務にそぐわない」「(5) 研究受託先決定過程が不透明である」「(6) 受託額水準が低い」「(7) 契約手続き等が煩雑である」「(8) 研究機関の規模(財政や研究者数など)の大小が重視されている」「(9) その他」の9項目を設定し、複数回答可とした(図2-6)。
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トップに上がったのが「(6) 受託額水準が低い」で、64.1%(148機関)が問題点として取り上げている。次いで、「(4) 発注方式がそぐわない」が58.4%(135機関)、「(2) 継続性に欠ける」が57.1%(132機関)、「(3) 研究期間の短期、集中」が56.7%(131機関)となった。また、「(1) 評価制度の未確立」を理由に挙げた機関も38.1%(88機関)となっている。
「(6) 受託額水準が低い」については、今年度の動向調査Aの回答からもその実態を読み取ることができる。「受託調査研究1件あたりの平均受託額」については、すでに昨年度の回答で大きく減少傾向が見られた。今年度については、「国」については増加、「民間系列」「民間研究・助成団体」についても微増であったが、「地方公共団体」についてはほぼ横ばい、「特殊・公益法人」「民間その他」では減少した(図2-7)。
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「(2) 単年度単位の研究が多く、継続性に欠ける」「(3) 研究期間が短い、あるいは一時期に集中する」については、今年度の研究成果4894件のうち、自主・助成研究を除く3833件を対象に集計すると以下のような結果となった(表2-1)。単年度を超える研究は、わずかに3.5%(134件)にすぎず、また40.8%(1564件)が6カ月未満の研究であることがわかった。さらに受注時期としては、4月、7月、10月の件数が多く、終了時期は75.9%が3月に集中しており、上記の問題点を裏付ける結果となっている。
表2-1 研究開始年月、終了年月からみる受注件数の内訳
(総件数4894件のうち自主・助成研究を除く3833件)
終了
開始2001年
4月2001年
5月2001年
6月2001年
7月2001年
8月2001年
9月2001年
10月2001年
11月2001年
12月2002年
1月2002年
2月2002年
3月計(受注
件数)2001年3月以前 8 10 9 3 8 6 3 2 2 4 6 73 134 2001年4月 3 8 12 11 7 24 10 8 24 9 13 347 476 2001年5月 - 1 6 5 7 8 11 7 8 3 21 142 219 2001年6月 - - 2 7 14 23 15 5 21 11 38 255 391 2001年7月 - - - 3 7 11 9 12 27 16 51 327 463 2001年8月 - - - - 2 4 7 8 24 14 29 232 320 2001年9月 - - - - - 3 6 10 26 13 30 248 336 2001年10月 - - - - - - 4 9 19 18 61 317 428 2001年11月 - - - - - - - 1 7 5 33 250 296 2001年12月 - - - - - - - - 2 11 24 300 337 2002年1月 - - - - - - - - - 1 14 252 267 2002年2月 - - - - - - - - - - 1 131 132 2002年3月 - - - - - - - - - - - 34 34 計(終了件数) 11 19 29 29 45 79 65 62 160 105 321 2908 3833 そのほか、受託研究の受発注に伴う問題点について、以下の意見が寄せられた。
- 仕様に対して予算が少なすぎる。また、予算規模が100〜200万円以下の入札や300〜500万円程度のプロポーザルが、委託先決定過程の透明性の確保などを理由として、頻繁に実施されている。〈営利法人〉
- プロポーザルで予算を明示せず、結局見積価格で決定したり、予算を明示したにもかかわらず、契約の段階で価格交渉(値引き)を求めるなどのケースが増えている。〈営利法人〉
- 緊急雇用特別対策事業など、まったく雇用対策に効果がない事業に莫大な予算が計上され、予算の少ない自治体では、調査研究などがこの事業予算で実施されている。受注にあたって、新規雇用(直接人件費の7割以上を占めること)を行い、研修を課せられるなど、本来の調査研究業務以外の負荷が増大している。〈営利法人〉
- 発注者側の「委託制度」に関する委託業務の内容、範囲、予算等の定義や、シンクタンク側の財政、組織、業務実績等の資質を再チェックし、基準を満たすシンクタンクについては、税制上の優遇措置(寄付行為の拡大等)で「経営基盤の安定化を保証」するとともに、政策の「成果品で競争」させる原理、仕組みが不可欠。〈営利法人〉
- 行政からの受託研究は、実績重視が多く、研究機関の強みとなる分野を把握していないのが現実。また、まだまだ研究機関を一業者としてみている部分が多く、認識の甘さを感じる。〈公益法人〉
- 政策シンクタンクとしては、行政の人員不足を補うような業務に附加して、知恵の部分を期待されても体力がついていかない。適切な予算、業務範囲の認識が必要。行政側もさることながら、シンクタンクの側でも事務局業務等をシンクタンク業務であると思っていることも問題。〈営利法人〉
- 入札制度がそぐわないからといって、「指名会社コンペ」だけが唯一の道ではない(企画書作成の費用も考慮すべき)。発注者にとって最も役に立つ発注方法を十分に検討すべき(責任逃れの入札、コンペ方式には問題あり)。〈公益法人〉
- 最近は入札による発注が増えているが、対価が適正でないこと以上に、価格だけで業者を選定するという行為は愚の骨頂である。ノウハウや経験、信念と熱意で知恵を振り絞っていく研究員でなければ完成させることなどできないのが調査研究業務である。〈営利法人〉
また、シンクタンクの育成・醸成については、業界全体における標準報酬評価制度や研究評価制度の必要性も挙げられたが、シンクタンクの存在意義について改めて考えるべき、との意見もあった。
- NIRAの意見を入れて、調査研究業務の発注方式に関する提案書(意見書)をとりまとめ、全国の自治体(県、市町村)に配布してどうか。〈営利法人〉
- シンクタンク育成のための、政策提言指向の発注業務を拡大し、社会的な研究評価の基準となる委託・成果情報の開示・流通の促進を図ることが必要。〈公益法人〉
- 昨今の地方シンクタンクの大規模な再編成・縮小・解散などの状況をみると、シンクタンクの必要性・重要性について社会的認知がなされていない点に根本的な問題があると考える。業界をあげて、シンクタンクの存在意義をわかりやすく提示し、認知を得る必要がある。多く機関が集い、真剣に検討・具体化する場を設けることが必要ではないだろうか。〈営利法人〉
政策形成過程において、シンクタンクの役割はますます重要度を増すであろう。しかし、財政基盤の保証がなければ、活動も停滞し人材の確保・育成も困難であることが、今回の調査によって浮き彫りになった。「ヒト、カネ、トキの不足」という三すくみ状態から脱却し、政策市場の健全化を図ることが急務である。
NIRA政策研究情報センター 島津千登世
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