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まえがき

 総合研究開発機構(NIRA)では、毎年、シンクタンクの基礎情報と当該年度終了の研究成果を収録するとともに、シンクタンクの動向に関する調査を行い、「シンクタンクの動向」として公表してきた。これをさらに充実させるべく、昨年度より本編を2部構成とした。

 第1部では、「政策形成過程におけるシンクタンクの役割」と題し、論文2本と併せて対談を収録し、財界、市民団体、地方公共団体のそれぞれの立場から、政策形成過程におけるシンクタンクの役割について提言していただいた。

 第2部では、研究者や財政等について例年定点観測を続けている動向調査A、特定課題を設定し行う動向調査Bで行った各調査結果をもとに、政策研究情報センターで取りまとめた。動向調査Bについては、今年度テーマを「シンクタンクの研究資金源と受託研究」とした。『シンクタンク年報』については、昨年同様、「公益的な調査研究を行う、政策指向型研究機関で研究の成果を公開している機関」を対象とし、当機構の保有するリストの中から約400機関に調査を依頼し、325機関から情報提供をいただいた。この325機関のうち、動向調査Aについては287機関(回収率:88.0%)、動向調査Bについては264機関(回収率:81.0%)から回答を得た。

 これら調査の結果をふまえ、シンクタンクの財政状況と受託研究とのかかわりを中心に集計・分析を試みた。なお、上記で触れなかったそれぞれの調査項目の集計結果は、[資料編]に取りまとめた。

 今回の調査では、解散した機関、該当する研究成果がなかった機関、あるいは調査研究部門を縮小した機関なども見受けられた。長引く経済不況の中で、シンクタンクの経営も厳しくなっていることは明らかである。その実態を把握するべく、シンクタンクの研究資金源と受託研究をテーマに調査を行った。その結果は第2部に記載するが、財源確保のために多くが受託研究を実施しており、その実施のために時間や人的資源を投入せざるを得ない、ひいては自主研究の実施が難しいという構図になっていることがわかった。

 第1部で、小林陽太郎氏は、「日本政治における積み残し課題を解決していくためには多くの識者が指摘するように独立・民間・非営利のシンクタンク設立・強化が効果的だと考えられる」と述べており、そのための社会経済的環境の整備として、(1) 独立性を保てるだけの財政基盤の提供、(2) 政策研究人材の育成と流動化、(3) 政府による情報公開の徹底を挙げている。上記の構図を組み替え、シンクタンクを強化するためにも、こうした環境整備が急がれる。

 また、シンクタンクに期待される役割のひとつとして、小林氏は「広く国民に対し、政策の持つ意味などを解説し、仲介者・教育者の役割を担う」ことを挙げているが、粉川一郎氏も「政策情報の集約とトランスレート」を第一に挙げた。政策と市民をつなぐ上で最も基本的な機能であり、「利害関係を超えた立場で政策情報をトランスレートし、市民が理解しやすい内容で集約し、政策情報の再発信を行えるのは、シンクタンクのほかにはない」という、市民セクター代表者の立場からの指摘は極めて重要である。

 一方で、政策立案・決定者である地方公共団体が、その基本財産と運営経費をすべて負担して政策研究機関を設立したケースとして高知県を取り上げ、高知県知事の橋本大二郎氏と財団法人高知県政策総合研究所の星野進保氏による対談を企画した。財政面で援助を受けるシンクタンクは、人材養成と「地方の経営」を考えるという重要な役割を担っており、両者は水平関係にある。地方行政が、シンクタンクを「身近な政治と市民をつなぐ存在」としてとらえ、積極的に活用している好例といえよう。

 本編が、政策形成過程に参画する方々の参考となり、またシンクタンク発展の一助となれば幸いである。

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