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2.マスメディアを活用した情報発信

 電子メディアと並んで、近年特にその影響力を指摘されているのが、テレビや新聞に代表されるマスメディアの役割である。そこで、ここではシンクタンクにおける情報発信とマスメディアの関係について述べたい。

 まず、シンクタンクに所属する役職員(常勤)がどういったマスメディアに登場、あるいは寄稿した実績があるかを尋ねたところ、「テレビ・ラジオ」については有効回答のうち41.3%の機関が「登場あり」と回答し(表2-1)、また、「新聞・雑誌」(寄稿を含む)については、66.0%の機関が「登場あり」と回答した(表2-2)。そのほかのマスメディアへの登場実績としては、「シンポジウムやパネルディスカッションでの講演・コーディネーター、パネラー参加」などが挙げられた(なお情報発信という観点から広く一般に伝達されない、例えば内部向けの機関紙などは含まないものとした)。

表2-1 常勤の役職員がマスメディアに登場した実績(テレビ・ラジオ)
機関数
パーセント
有効パーセント
有効  



無回答
合計
登場あり
登場なし
不明
合計
92
124
7
223
21
244
37.7
50.8
2.9
91.4
8.6
100.0
41.3
55.6
3.1
100.0

表2-2 常勤の役職員がマスメディアに登場した実績(新聞・雑誌)
機関数
パーセント
有効パーセント
有効  



無回答
合計
登場あり
登場なし
不明
合計
155
74
6
235
9
244
63.5
30.3
2.5
96.3
3.7
100.0
66.0
31.5
2.6
100.0

 次に、テレビ・ラジオ、新聞・雑誌のいずれかに「登場あり」と回答したシンクタンクに対し、実際に登場した役職員の人数(実数)と登場回数(述べ数)をそれぞれ質問した。すると平均において、テレビ・ラジオには2.3人が6.5回登場しているのに対し(有効回答数77)、新聞・雑誌については5.0人、登場回数は18.0回で(有効回答数133)、ともにテレビ・ラジオの平均登場人数、回数を大きく上回った。もちろん、テレビ・ラジオの番組数や新聞・雑誌の種類を含め、改めて考慮しなくてはならない問題ではあるが、シンクタンク側からすると、テレビやラジオよりも新聞・雑誌のほうがシンクタンクの見解や専門知識を重用しているかのように感じられるのではないだろうか。

 さらに、これらの登場回数を登場した人数で割ると、テレビ・ラジオにおいては1人当たり平均およそ2.8回の登場回数であるのに対し、新聞・雑誌においては同じく1人当たり平均3.6回の登場回数であった。この結果は、テレビやラジオのほうがシンクタンクの役職員を登用する際、同じ人物を繰り返し多用しているであろうという予想に反し、実際には新聞や雑誌のほうが、若干ではあるが「一極集中化」の度合いが高い傾向にあることを示している。

 最後に、国内のシンクタンクが情報発信の手段としてマスメディアをどのように捉えているかという問題について、「欧米のシンクタンクと比べ、日本のシンクタンクはマスメディアを通じた情報発信が不得意である(消極的である)。」という仮説を提示した上で、これに同意するかどうか質問した。その結果、それぞれ「同意する」と回答した機関が27.8%、「同意しない」が4.0%、「どちらともいえない」は68.2%を示した(有効回答数223)。

 さらに、それぞれの回答について理由を聞いてみたところ、次のように大別された。まず「同意する」と回答したグループはおおよそ、[1]マスメディア側の責任(例:「マスメディア側からのシンクタンクへの関心が薄い」〈社団法人〉)、[2]シンクタンク側の消極性や文化的要因(例:「調査研究の成果を発信して政策形成に影響を与えようとする姿勢が弱い」〈財団法人〉、「そもそもの日本人のマインド:自らの意見を「外」へ出すというマインドがない(欠ける)」〈財団法人〉)、[3]受託研究による制約(例:「業務の多くが行政から発注されていることと、これまでわが国においては従来の実績や人的ネットワークによって随意契約で受注が決まる場合が多かったため、メディアを通じて情報発信をする必要性が低かった」〈財団法人〉)、そして[4]経験や実績の不足(例:「マスメディアを活用するノウハウを知らない」〈財団法人〉)を理由として挙げている。

 「同意しない」という回答については、[1]情報発信源の偏在性(例:「一部のアナリスト、評論家は頻繁にマスメディアに登場している」〈社団法人〉)、[2]研究機関としての専門性(例:「各シンクタンクが専門とする分野について必要に応じ、それぞれ対応していると考える」〈財団法人〉)などがその理由として挙げられた。

 また「どちらともいえない」と回答したシンクタンクが挙げた理由として最も多かったのは、「一概には言えない」、あるいは「欧米の実態を把握していない」といったものであった。ほかにも「同意する」の理由と同様、マスメディア側の認知度が低いこと、シンクタンクが存在感や社会的信用に欠けていることなどが指摘され、また機会が少ないこと、多額なコストを伴うこと、そして情報発信に対する受託研究の制約がやはり理由として述べられている。

 ここで注目したいのは、「同意する」、「どちらともいえない」両方の回答に対する理由が類似している点である。すなわち上記の仮説に対し、その根拠として挙げられているのはほとんどの場合、「委託−受託」というシステムであり、マスメディア側の認識不足、シンクタンクの社会的位置付けの低さである。にもかかわらず結果にある程度の差異が認められたのは、おそらくこのようなある種日本独特の政策産業の枠組みや構図そのものを、果たして所与のものとして見なしているかどうかという点に集約されるのではないだろうか。その具体的な例として、受託研究の成果を公表しない(できない)ことを当たり前と考えるのか、それとも(特に欧米と比べた場合)、そこに何らかのジレンマを感じるかどうかの差に起因するものと思われるのである。

 さて、このような現状に対する改善策として何らかの提言を求めたところ、いくつか具体案が得られたので、ここで紹介したい。いずれの場合も、長期的かつ組織的な、またマスメディア側のインセンティブをうまく組み込んでいくという観点から、客観的な情報発信戦略が求められていることは明らかだろう。


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