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シンクタンクの動向2006 【動向編】

ヒアリング調査−シンクタンク経営者に聞く(1)

 (特非)環境エネルギー政策研究所
  所長 飯田 哲也 氏

 環境エネルギー政策研究所(以下、ISEP)は、2001年3月に設立された比較的新しいNPO型シンクタンクである。持続可能なエネルギー政策の実現を使命とし、政策志向性の高い第3者機関として政府や産業界からも独立している。設立当時、他のシンクタンク、弁護士、大学の研究者などからの力強い発意があったという。また、2000年前後、京都議定書が盛んに議論されていたという時代背景も手伝った。旧来の国を中心とした政策決定パラダイムを超えて、小規模分散型、再生可能エネルギー、気候変動、電力自由化といった新しい潮流の中で、真の政策志向、ナレッジ・プロダクションの統合を達成するという方向性がISEPの活動基盤となっている。設立以来、経営状況も全般的に良好だという。民間シンクタンク((株)日本総合研究所)に勤める傍ら、同研究所の所長を務める飯田氏に話を伺った。

――旧来の政策決定パラダイムの問題点
 これには2つの側面がある。1つは、化石燃料や原子力を主軸とした中央集中型のエネルギー政策の考え方そのものが時代遅れとなっているという点です。そうした中、コスト面だけでなく社会的価値をも加味しながら、利用者側の視点に立った分散型エネルギー・システムを構築するナレッジ・プロダクションが不可欠となる。しかし、既存のシンクタンクは必ずしもそういう役割を果たさず、むしろ非常に古い構造体質の日本の環境エネルギー分野を守旧する役割すら果たしてきたと思います。つじつま合わせの報告書を量産するのではなく、本当に価値のある、活きたナレッジを絶えず創出していくことに社会的ニーズがあります。

――NPO法人という法人格を選んだ理由とメリット
 消去法により、社会的に中立と評価されつつも信頼性の高いNPO法人という選択肢が残った。しかし、こうした法人格は、ある意味では「方便」に過ぎない。例えば、ISEPは株式会社の顔も持っており(有限責任中間法人を設立したり、自然エネルギー市民ファンドなどの複数の系列株式会社とも連携している)、また、「市民風車」といった環境事業開発にも関与している。そこで、配当を分配できるだけの出資を集めるなど、株式会社でなければ難しいことは株式会社として行い、(少なくとも)政府と産業界から政策的に中立な立場から政策提言や情報発信する際はNPO法人として行うといったように、法人格を戦術的に使い分けています。

――政策決定のインナー・サークルに入るための方法
 最先端の研究動向を常に把握し、最前線にある海外の研究コミュニティーの一員としての専門性を維持しておくことが大切です。国内においては、政府や民間を含めた多様なアクターと建設的な議論ができるような顔の見える関係を維持して、相互の信頼関係を積み重ねながら活動することが肝要でしょう。

――会員制度など経営の財政面
 会員制度は開かれた形で提示しつつも、会員の維持拡大には相応のコストが付随するので、費用対効果の面から過剰な労力は費やさない。財源の調達手段としては、むしろ内外の財団などからの助成金、公募型(企画提案型)事業基金など、能動的で比較的裁量のあるナレッジ・プロダクションに特化しています。最近の取り組みとしては、「直接研究サポート」が挙げられます。これは、社会的ニーズの高い(例えば、核燃料サイクルに関する)個別の研究テーマに対して直接資金を募る資金調達システムであり、まだ実績は少ないが、今後広げていきたいと思う(出資者には研究報告書の送付、成果報告会への招待などのメリットがある)。つまり、ISEPという組織自体に対する会費・寄付というより、ISEPにおける研究事業そのものに対する会費・寄付のようなものです。仮にISEP内の2つの研究事業が多少異なる結論を出したとしても、組織全体としては分散型のエネルギー政策を志向すると同時に環境保全的だというDNAを共有しているので、特に問題はありません。

――人事における経営手法
 当研究所の人事は量子力学モデルです。つまり、コア・スタッフを中心に、兼業スタッフ、ボランティア・スタッフ、プロジェクト・ベースで働く学生インターンなどがその周辺を取り巻いている。重要なのは、相互に有益な枠組みを作ることです。例えば、ISEPでは修士・博士論文を書いている最中の学生インターンが働いていますが、ISEP側では共同執筆という形で情報発信することができ、学生インターン側にも共同研究という現場を提供することができます。ですから、人事面でも財政面でも、ISEPという組織の傘の下で、各研究事業が個別に管理・経営されているという見方も可能だと思います。組織内のコミュニケーションに関しては、イントラ・ブログを利用して、すべてのコミュニケーションを当事者全員が常に共有し(暗黙知の共有)、さらに意思決定できるという原則を理想としています。

――自治体とのパートナーシップ
 都道府県レベルで、多くの知事や実際に政策立案に関与する幹部と関係を密にしているが、決して従来の委託者=受託者といった関係性ではなく、双方にとってメリットのある、自立した(平等な)関係構築を心掛けている。例えば、自治体には条例制定という権限がありますが、こうした機能はISEPとしてもうまく活用したい一方で、自治体からすればISEPが得意とする専門知識には利用価値があるということになります。

――受託研究
 日本では、契約の甲乙によって力関係が決まることが往々としてあるため、自分たちの独立性を維持するために、受託研究はできるだけ避けています。本来、創出すべきナレッジを自分たちの考え方、スケジュールで進めることが大事であり、それを社会に提示していくことにこそ意義があると思うからです。受託研究から脱却するというよりも、本当に必要なナレッジを継続的に生み出しさえしていけば、新たな資金調達モデルは自動的に組み立てられるのではないでしょうか。

――日本におけるシンクタンクの役割
 真に社会が求めるナレッジ・プロダクションを遂行していくことが問われているのではないか。現状では、便利屋的なニュアンスを持った「コンサル」と呼ばれる仕事が多数を占め、委託者側の評価能力の乏しさも相まって、社会全体としてナレッジ・プロダクションの質を落とす悪循環を来たしています。本来、社会知は積み上げられていくべきものだが、旧来のシステム下では、いつまで経ってもこれが実現されない。委託者、受託者いずれも知に対する姿勢が粗雑過ぎるという面は否定できない。これこそ、シンクタンク業界全体が荒廃してしまった大きな原因の1つなのではないだろうか。予算消化と場当たり的な仕事から委託者、受託者の両者がどれだけ脱却できるかが、荒涼たる現状から再生するためのポイントだと思います。

(2005年11月14日実施)


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