2005年10月4日実施

第4回 経済財政運営と経済財政諮問会議 <要約>

豊田欣吾 内閣府 大臣官房政策評価広報課長

 
豊田欣吾 内閣府大臣官房政策評価広報課長  橋本内閣時に設置されていた「行政改革会議」の最終報告が基になって2001年1月に中央省庁の再編が行われた。再編の理念としては、総理大臣の閣議における発議権の明確化や内閣府の設置による内閣機能の強化、独立行政法人化等による企画・立案機能と実施部門による機動性の重視、説明責任の徹底を目的とする政策評価制度の導入、官民役割分担の徹底であった。

 内閣機能の強化については、中央省庁改革基本法により総理大臣の発議権、内閣官房、内閣府を位置づけた。内閣官房は省庁の調整を「薄く広く」実施する役割であり、内閣府はその内閣官房の調整機能を助け、「狭く深く」施策に携わる。いわば内閣の「知恵の場」である。内閣官房と内閣府がセットで総合調整機能を強化するものである。

 内閣府は内閣府設置法3条により、内閣府の所掌事務が明記されており、各省庁の一段上に位置し、総合調整を実施することとしている。また、同法9条で重要施策に関して特命担当大臣をおくことができる旨が盛り込まれている。そして同法18条が根拠となり、重要政策に関する会議を設置することとされており、「経済財政諮問会議」がおかれている。

 この経済財政諮問会議は、行政の外にいる民間の有識者の意見を施策に反映させ、専門性・民間の知見を生かすこととしているとともに、総合性・戦略性を確保しながら総理大臣のリーダーシップが発揮できるようにしている。

 従来の審議会は「行政の外」におかれ、行政関係者が入っていないため、実効性が低いという問題があった。諮問会議は総理、各大臣および民間議員で構成されている。審議会と異なり、総理が議長のため、政策の実効性が担保される。メンバーのうち民間議員の割合は4割以上とすることが法定化されており、現在、10名中4名が民間議員である。議員となっている各省大臣は総務、財務、経済産業大臣である。また、議論を深めるため、公共事業の議題の時に国土交通大臣を参加させるなど、議題によって臨時議員として関係大臣を参加させている。総務大臣は地方行財政、財務大臣は国家財政、経済産業大臣は産業全般の観点から参加している。その他、日本銀行の総裁が関係機関の長として参加している。日銀総裁の諮問会議への参加は、日銀の政策の独立性が損なわれるという議論もあったようであるが、参加することによりデフレ対策等、政府の政策との協調が図られたのではないかと考えている。

 旧来は経済企画庁と大蔵省が分かれており、それぞれが役割を担っていたが、経済財政諮問会議で一体的な経済財政政策を議論することができ、トップレベルでマクロ経済政策と財政運営について意思疎通がなされ、一体的な運営が強化されている。つまり、マクロ経済運営とミクロ経済運営である各種の制度改革が一体的に実施されるようになった。また、総理が議長であることにより機動性が確保されている。

 諮問会議の事務局機能として、内閣府の政策統括官7人のうち3人が経済財政政策担当である。そのうちの一人は民間人を登用し、民間の知見を導入している。

 経済財政諮問会議の審議実績は年平均34回となっており、個人的な評価としては、総理が議長になっている会議としては、本会議は開催頻度が異例に高い。ちなみに閣議は週2回で年間約100回の開催であるが、諮問会議は1回1時間半から2時間程度となっており、閣議がたいてい30分未満であることを考えると、時間数も非常に多く、時間×回数でいえば閣議にも劣らないほどである。

 諮問会議で扱う議題としては、経済政策、制度改革などがあり、扱うテーマが非常に幅広くなっている。

 経済財政諮問会議の審議の特徴として、入念な事前準備を実施していることがあげられる。限られた時間で議論をするため、どういった形で議論を展開していくか等を総理、官房長官、民間議員と入念な事前準備を行っている。また、民間議員も議員間で諮問会議の本会議とは別に会合を多数開催して準備を行っている。また、議員からのペーパー提出も特徴の一つである。従来の審議会は行政側からのペーパーを元に議論することが多かったが、諮問会議は民間議員からのペーパーを基に議論することが多い。また、専門調査会の活用は限定的となっている。諮問会議の議論は総理参加の本会議を中心に行うというスタイルが確立されており、総理のリーダーシップが発揮されやすい体制となっている。

 経済財政諮問会議の審議サイクルとしては、次の通りである。概算要求前の6月に「骨太の方針」で年度ごとの基本方針を示している。7月には「予算の全体像」を示し、これを財務省が概算要求基準策定の参考としている。例年は8〜9月に概算要求内容について審議するが、今年度は選挙のため開催されていない。11月〜12月に予算編成の基本方針を策定し、「どのような方針で予算編成を行うか」を定める。これに基づき財務省が年末に向けて予算要求の査定を行い、翌年の1月には「構造改革と経済財政の中期展望」を策定し、今後数年間の経済、財政運営について展望する。諮問会議が設置されて5年が経過し、これらのサイクルが確立されてきた。この年間の審議サイクルの合間をぬって三位一体改革などを議論している。

 諮問会議の設置による効果として、総理のリーダーシップ発揮、閣僚が議員になることによる着実な政策の実施、マクロ経済と財政運営及びマクロ経済運営とミクロ経済運営のリンケージ確保、政策の立案の段階で民間有識者の意見の反映、合議制によるオープンな議論、議事録公開による意思決定過程の透明性の確保などが図られた。

 また、政策決定プロセスが大幅に変わったといえる。官邸と各省との関係も変わった。各省の縦割りが解消された。現在は時代の流れにより施策の横断的、横串的発想が求められる。与党・自民党との関係も変わった。自民党には諮問会議に対応する組織がないこともあって、党とのコミュニケーションが図りづらくなっているかもしれない。党との関係をどうするかは引き続き大きな課題であるが、例えば党の意思決定過程と政府の意思決定過程を一にするために重要閣僚に党の有力者が入ることは一つの選択肢である。

 これらの諮問会議設置による変革により、21世紀型行政システムへの転換が図られつつあると考えている。

(文責・山根淳一/受講者)


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