2005年11月8日実施

第6回 「政策評価I」 <要約>

塚本 壽雄 早稲田大学大学院公共経営研究科教授

 
塚本 壽雄 早稲田大学大学院公共経営研究科教授  「政策評価」と呼ばれるものには、2002年4月に施行された政策評価法(行政機関が行う政策の評価に関する法律)に基づく内閣における府省評価・総務省評価のほか、会計検査院における有効性評価、地方自治体における行政評価、マニフェスト評価なども含まれる。また、これら行政の内部作用に関するもの以外にも、NPO/NGO、大学などの自己評価、これらが行政に対して行う外部評価がある。外部評価は、議会(行政監視として)、マスメディア(報道を通じて)、住民も行う。政策評価の理論・方法論はこれらを貫くものとして存在しており、身近なものとして学んでおく意義・必要性がある。

 政策評価の効用としては、(1)政策意思決定や業務実施の改善を通じた「学習する組織」への変身(2)予算・定員等の資源配分の適正化に役立つVFM(Value For Money)情報の産出(3)納税者へのアカウンタビリティの向上(政策過程の透明化)―の3点があげられる。

 これらは、ピーター・ドラッカーが「行政の弱点(sin)」として指摘する、政策目的の抽象性、総花主義、物量主義などの課題を解決するものとして期待される。いわば、政策評価は行政における欠陥を是正する働きとしてとらえられ、公共事業、農政などをはじめとする「政策不信」に対する政策形成の合理化、「官僚不信」に対する評価・監視・透明性確保、「自治体批判・財政悪化・地方分権」に対する住民へのアカウンタビリティ向上、などの必要性を背景として国・地方に導入が広がった。

 政策評価の典型としての政策の有効性を例にあげると、評価するためには(1)目的とする効果(状態)(2)現実に発生している効果(3)目的の達成を判断する基準(4)適切妥当な方法による分析の知識―の四つの基本要素が必要である。これらは、閣議決定(政策評価に関する基本方針)における政策評価の定義やキャロル・ワイズによる学術的な政策評価の定義など、各種の政策評価の定義に共通している点である。

 評価の設計はこうした基本要素を確実におさえられるように、「政策の目的と期待される効果」から始まる6項目の表を埋める形式で作業手順を進めていくことが便宜である。「評価報告書」は、実はその相当部分がこの手順の説明に当てられており、そのモデルの目次は手順の理解の参考になる。この枠組みは、同時に、以下の二つの基本動作により政策評価ができていることを教える。

 一つめの基本動作は、「政策の理解」である。政策の目的に対して、インプット、アウトプット、アウトカム(直接・中間・最終)のつながりを整理する。フロー図で示す「ロジック・モデル」とこれをもとにアウトカム指標等を加えて表で示す「ログ・フレーム」が有用であるが、いずれも政策における目的と手段の関係(因果の連鎖=chain of results)を明らかにし、政策に対する理解を深めるものである。ロジック・モデルを通じて政策を理解する作業を行うだけで、一つの評価になる場合もある。

 もう一つの基本動作は、「比較」である。政策の成果を把握することは単純にいえば政策を実施する前と後を比較して、目標に向かってどれだけ前進したかを示すことである。「ランダム実験モデル」などのモデルを使って比較を行うことになるが、政策以外の要因の影響もありうるので比較した結果に対する納得性が高まるような工夫が求められる。

 なお、政策評価のアプローチには、有効性評価のように個別の政策を対象とする評価だけでなく、組織マネジメントの観点から、組織の単位で複数の政策をまとめて、組織全体の成果を評価する「業績測定」があり、二つは分けて考えるべきという意見もある。ただし、この場合でも、個別の政策評価がきちんとできていなければまとめた評価を行うことはできないため、政策評価理論・方法論がベースになる。

(文責・西尾真治/受講者)


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