2005年12月21日実施

第7回 「政策評価 II」 <要約>

塚本 壽雄 早稲田大学大学院公共経営研究科教授

 
塚本 壽雄 早稲田大学大学院公共経営研究科教授  政策評価とは、本来個別の政策についていくつかの問題意識をチェックするものである。

 特に重要なのは有効性についての評価である。有効性の評価とは、政策により効果があったかどうか、その効果は政策によるものなのかという二段階の評価が入ったものである。また基本要素として(1)予定されている効果(政策の目的)(2)現実に発生している効果(3)目標達成のための基準(4)分析するための適切妥当な方法――が挙げられ、(1)は特に前提として必要な要素である。有効性評価の作業については、政策の目的・効果の特定に始まり、評価基準の設定といった政策の理解から評価モデルの選択、データ収集・分析といった比較するための作業を行っていく。

 そういった作業を行う上で役に立つのがロジックモデルである。ロジックモデルとは、ある政策に関してその手段たる活動とその成果が政策の目的の達成にまでつながる連鎖(chain of results:If-Then)の関係を整理したものである。これは、政策の全体像を理解するのに役立つばかりでなく、個々の成果の達成を示す指標および影響を及ぼす外部要因を特定する道具にもなりうるのである。最終的には成果が出てくるようになっている。モデルを作成するに当たり、アウトカムについての整理がポイントであり、必ず「・・・が・・・になる」としなければならない。そうすれば指標が見つかりやすくなるのである。さらに成果指標と外部要因について加えたものをログフレームと呼ぶ。これは対象となる政策のエッセンスであり、これを作ってしまえば政策の効果の把握が容易にできる。

 一方で有効性に限らず総合的な政策評価を行う場合を、プログラム評価と呼ぶ。プログラム評価は(1)有効性の評価であるインパクト評価(2)政策における因果関係をチェックするセオリー評価(3)政策が予定されたように実施されているかを評価するプロセス評価(4)因果関係にとらわれず効果そのものを把握するアウトカム評価――に分かれる。

 評価の判断、特に政策と効果との因果関係の客観性・妥当性を求めるために評価モデルが存在する。評価モデルでは比較対象があり、外部要因が排除できる状況が理想的であるが、実際に作業を行うには、データが複雑になるほか入手そのものが困難となる。ただ、理想の条件がそろっていなくとも、さまざまな分析方法が存在する。

 政策評価は基本的に数字で評価するものであるが、効果が数字で評価できないもの(能力の向上等)も存在する。その場合には、定性的な指標の使用ないし併用を行うことになるが、分析に当たっては観察やインタビューなどを通した結果を定量化するように努力されている。

 政策評価におけるデータの入手方法については、新規に収集すると多大な労力を必要とするため、既存の統計や事業実施者の持つデータを活用できることが望ましい。

 以上と異なり、個々の政策ではなく組織における政策全体の効果をアウトカムベースで把握する方法として業績測定が挙げられる。達成目標を決め指標をセットするが、分析的なことは行わず効果を把握することに努めるものである。この方法は自治体でもよく活用されている。ほかに経済学的観点からの手法として代表的な費用便益分析というものがある。業績測定と費用便益分析の中身を見ていくと、ロジックモデルのプロセスが必要になることが分かる。

 政策評価の実務的展開として、国の場合では総合評価方式と実績評価方式、事業評価方式が採られている。総合評価方式(プログラム評価に相当)は、特に問題のあるものについて政府のガイドラインに基づき各省庁により実施されている。実績評価方式(業績測定に相当)は、分析は行わず不十分なものを抽出するために実施される。事業評価方式(事前評価)は費用便益分析などの方法が用いられている。地方自治体では、自治体によりさまざまな取り組みがなされている。自治体で用いられている事務事業評価と欧米で発展した政策評価の位置づけについては、学者により意見が分かれるところである。

 政策評価を実施するに当たり、評価の目的は大きな要因になる。実際に政策評価の目的いかんでは、内部評価が望ましい場合や外部評価が望ましい場合がある。評価の見方として総括評価と形成評価がある。総括評価とは判断志向、すなわち○か×かであり、事務事業評価はこれに当たる。ここでは政策を継続すべきかどうかについて議論される。一方で、形成評価は改善志向が結論となるが、政策の継続性については何ら記述していないという違いがある。そのような性質を持っているため、総括評価は政策の成否に全責任を負いうるわけではない行政官による内部評価にはなじまない。無理に行わせれば甘くならざるを得ない。一方、形成評価は外部評価になじまない。政策の改善については内部の方が把握しやすく、本来行政官に責任があるからである。

 政策評価の活用のための方策については学者により意見が分かれているが、制度と運用水準が乖離しているので、評価対象の絞り込みや、運用に幅を持たせるなどの工夫が求められる。

(文責・佐藤陽介/受講者)


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