2006年2月8日実施

〔ケーススタディA〕構造改革−民と公の挑戦

第11A回 社会起業家と構造改革 <要約>

町田洋次 元社団法人ソフト化経済センター理事長

 
町田洋次氏  現在、道路公団、国立大学、市場化テストなどさまざまな分野で改革が検討されているが、社会起業家の目から見ると、創造の視点が欠けているように見える。構造改革には「破壊」と「創造」の両輪が必要となる。「漁法を変えるのではなく、漁業業界を変える事が必要」という米国の格言にある通り、小手先の改革ではなく、前例にとらわれずゼロベースで検討すべきである。

 小さな政府・市場化経済の下で起こった社会の混乱については、1980年代に英米で、20年後にフランスで起こった現象が参考になる。これら諸国においては長期不況・財政赤字が続き、貧困問題・教育の荒廃を招き、古い体制が崩壊した。その後市民社会の復元力となったのは、政府や自治体ではなく、社会起業家・公民起業家であった。

 イギリスでは「デモス」(シンクタンク)をはじめとして社会起業家が興隆し、ブレア政権において政策に取り入れられるようになった。政府は97年にギブアップ宣言を行い、独力で社会問題を解決する道を捨てた。その後、政府は社会起業家のパートナーを経てスポンサーとなり、社会起業家が独自の手法で社会問題の解決にあたるようになった。日本においても主に近江地方を中心に、リスクを買い手・売り手・地域で分散する「三方よし」の概念が根付いており、受け入れる素地はあるといえる。米国では「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」による貧困撲滅運動、「アショカ」による排出権取引など社会起業家・財団を起点とした変革が起きている。

 日本においても社会起業家からこの1〜2年の間にロールモデルが出始めており、あと3年もすれば社会の変化になって現れてくるであろう。

 具体的には、病児保育に取り組み、「働きながら子育てする」という大きな潜在需要を開拓した「NPO法人フローレンス」、知的障害者によるパンの製造・販売事業により障害の軽度化、社会保障負担の軽減に貢献している「スワンベーカリー」、地域からの助成をほとんど受けず、新しい地域文化・地域振興に貢献した「YOSAKOIソーラン祭り」などが挙げられる。

 今後の課題としては、地域ごとに見られる事業のネットワーク化が進んでいないこと、社会起業家のファンドとなる財団が不足していること等が挙げられる。ネットワーク化においては、インターネット・ブログなどによるソフトインフラを構築することが重要である。また、同種のベンチャーパートナーによる会合に出席し、同じ志を持つ起業家同士が交流することも重要である。

 この分野においては需要の大きさに比べ供給不足が続いており、さまざまな背景をもった起業家のさらなる台頭が望まれる。

(文責・塚本篤司/受講者)


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