2005年12月7日

日本経済新聞・ゼミナール
「少子化と総合国力(17)」
人口減と公共サービス
  1人当たりの負担増加も

図表:人口減少による公共サービスへの影響  総合国力の概念を使って各国の強みと弱みについてみてきたが、人口減少は総合国力にどのような影響を及ぼすのか。今回からこの点を、前に述べた総合国力の三つの能力(市民生活向上力・経済価値創造力・国際社会対応力)と関連させてみていこう。

 「市民生活向上力」のなかで、水道、公園整備など公共サービスと犯罪率など社会の安定の二つの要素をとりあげてみたい。今回はまず、公共サービスについてみていく。

 人口減少による公共サービスへの影響は大きく、一人当たりの費用負担が増えることになる。その理由として、道路や空港、公園などの維持費用は人口規模や利用者数に関係なく一定の固定費がかかることがある。このため同じサービス水準を維持するには、その分一人当たりの負担を増やす必要が生じる。これは、人口が少ないほど公共サービスの提供の効率性が低下しやすくなることを意味する。

 経済学者のアレシナらによると、人口が多い国ほど政府の規模は対国内総生産(GDP)比で小さくなる傾向があるという。これに基づけば、一人当たりの生産性を一定とすると、人口減少時代にはGDPが減少するので、政府の規模の対GDP比率は上昇する。そして、政府支出を賄うための税や利用料金の一人当たりの負担は増えることになる。

 こうした負担は日本の公共インフラにおいて特に大きい。日本では計画段階での需要見込みを実際よりも多めに予測する傾向が強い。このため建設後の維持費が見込みより過大になってしまい、一人当たりの負担が通常より余分に増えることになるからだ。

 負担増は、人口減につれ公共サービスの水準を下げれば理論的には回避可能だが、いったん整備したインフラを縮小するのは難しいだろう。

 このように、人口減少社会で公共サービスの水準を維持するには、一人当たりの負担を増やす必要がある。人口減少が待ったなしで進むなか、一人当たりの負担と政府が提供すべき公共サービスの水準をどのあたりに設定するか、真剣な検討が急務になってきたといえる。


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