NIRA Case Study Series No.2007-05-AA-1

「永遠の日本のふるさと遠野」の地域再生策
−地域資源の総合活用による遠野スタイルの実現に向けて−

山田ハル義の漢字画像

【要 約】

 遠野には「永遠の日本のふるさと」と称されるような、地域イメージ・地域ブランドが形成されている。事実、交流人口は確実に増加しており、その圏域は拡大している。また新規転入者も一定程度増えているようだ。こうした一定の成功を得るためには、遠野における昭和40年代以降脈々と行われてきた様々な取り組みが大きく寄与してきている。

 その展開状況を、1.地域環境を活かした交流型まちづくり(「道の駅風の丘」「遠野ツーリズム」「新たな交流と定住促進」「第三セクターの再編」)、2.グローカルな経済活性化策(「コミュニティビジネスの推進」「農業・林業の振興」「中心市街地の再生と商業振興」)、3.包括的生活サービスシステムと情報共有(「トオノピアプラン」「ケーブルテレビネットワークシステム」)という3つの代表的な領域に区分して、多様な観点から考察すると次のような特徴がわかる。

 まず「@継続性と価値の付加」をあげることができる。首長が変わっても施策の理念を引き継ぎつつストックの有効活用と付加価値を高めることにより、財政的にも負担の小さい地域づくりがなされている。また、「A包括性・総合性」、すなわち、生活サービスや人づくりから産業振興策に至るまでバランス良く目配りされ地域政策が展開されている。さらに、経済活性化策にとどまらない、「B地域資源の重視と活用」、地域内外の業種・人々を結びつけることを狙いとする様々な「C交流・連携」、新規参入者を含めた「D市民エネルギーの活用・推進と協働」、素早い実行・課題への挑戦などの「E柔軟性と機動性」なども重要な特徴といえる。さらに、分野を超えた行政組織の再編によって生まれた新しいシステムによって、官民共同により結果的に新規性のある施策が生まれており、「F新規性」という特徴も加わっている。

 特に、遠野の市民が継承してきた生活文化を市民が直接利用者に発信する場の提供ができたこと(「ふるさと村」などの交流事業)、また、新しく定住してきた住民の活用が成功したこと(「遠野ツーリズム」)、地域資源の活用と市民の直接参加によって、市民のやりがいと市民への利益還元(暮らしの糧と生きがいの獲得)の好循環が形成されたことなどは重要な成功要因といえる。

 今後の課題として、産業振興にかかわる包括的なマネージメント機構、環境資源の管理、市民との協働がある。経済面の課題として、地域への入り込み客の行動と地域の産業とをどう結びつけるかが課題であり、農林業、製造業、商業における対策が必要であろう。遠野ツーリズムを核にしながら、農林業、製造業、商業をマネージメントする機構の形成が求められる。また遠野ブランドの基盤は自然を含む地域資源でありこれらに対する景観計画(現在策定中)が期待されるところである。また、これまで以上に市民との協働がすすみ、市民と行政が対等な立場で提案し、共同で活動し、適切に役割分担をしながら地域を維持していくという関係の確立が望まれるところである。


  県立宮城大学事業構想学部教授

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