NIRA Case Study Series No.2007-06-AA-3

鳥取県智頭町「日本ゼロ分のイチ村おこし運動」
−住民自治システムの内発的創造−

杉万俊夫

【要 約】

 「日本ゼロ分のイチ村おこし運動」は、日本の典型的な中山間過疎地域である鳥取県智頭町で、1997年度から行われている住民運動である。これは、最小コミュニティ単位である「集落」ごとに、集落ビジョンを描きそれを実現しようとするものである。ビジョンを描き、知恵やお金を出すのは住民であり、行政は脇役としてサポートするにとどまっている。すなわち、住民主導による徹底したボトムアップの運動である。

 ゼロイチ運動は、「0から1、つまり、無から有への第一歩こそ村おこしの精神」との理念から名付けられた。この運動は、「村の誇り(宝)の創造」を目的としており、地域経営(生活や地域文化の再評価を行い、村の付加価値をつける)、交流(村の誇りをつくるために、意図的に外の社会と交流を行う)、住民自治(自分たちが主役になって、自らの第一歩によって村を起こす)という3本の柱がある。

 ゼロイチ運動を行う集落は「集落振興協議会」を作っている。集落振興協議会は、役場が正式に認知する組織であり、その中には、地域の全般的計画づくりを担当する「総務計画部会」、国内外との交流促進を担当する「交流促進部会」、地域文化の再評価と活性化を担当する「村おこし部会」などがある。これら集落振興協議会の下で行われているさまざまな活動は、「『個人』の資格でやりたいことを仲間と考え実行に移せる、自由でボランタリーな場」である。それは、古くから行われている「総事(そうごと)」―集落の共有林で行う山仕事・冠婚葬祭など―が、世帯単位・世帯主中心であり、罰金等の義務的色彩が強いこととは対象的である。

 このような個人のフラットで、ボランタリーな活動の場への参加によって、自分の持ち味を発揮しやすい場ができたという認識が高まっている。またゼロイチ運動の参加者も着実に増加している。

 こうした活動によって、それぞれの集落内部に内在する力(内在力)は非常に活性化されてきている。そして、近年では、集落外とネットワーキングすることにより、いっそうの活性化が進む動きも見られるようになってきた。集落・地域のもつ「内発性」の拡大が、人と人との深い交流によってもたらされつつある。現在では、智頭町内89集落のうち15集落がゼロイチ運動に参加している。初年度から同運動に着手した7集落は、本年度で、当初の目標であった10年目を迎えた。

 次の課題として、2点をあげることができる。第1は、世代的な継承の問題である。具体的には、これまで同運動のリーダーを担ってきた団塊の世代から、次の世代にどのように継承していくことができるのであろうか。第2に、他集落、他地域への空間的拡大をどのように進めていくことができるのか。自ら計画をたて、自ら行動する楽しみを認識した住民たちの変化そのものが、ゼロイチ運動の拡大の媒介となっている。


 京都大学大学院人間・環境学研究科教授

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