NIRA Case Study Series No.2007-06-AA-4

シャープ亀山工場の誘致とまちづくり
−地域活性化への起爆剤となるか−

児玉克哉

【要 約】

 2002年2月に、三重県の企業誘致政策により、三重県90億円、亀山市45億円の計135億円の補助金が投じられ、シャープ亀山工場が誘致された。この巨大工場の誘致は補助金の額と行政の決断スピードの速さによって実現され、各自治体が巨額の補助金を企業誘致に投資しはじめる先駆となった。この方式は、以降亀山方式と呼ばれることとなった。シャープにとっては、こうした補助金を提示されることは、地元がシャープの工場を支援するというメッセージであり、企業にとって地元からの精神的な支援がなければ、企業活動が困難になるという経験則による判断からも重要であった。加えて行政トップの即決により状況が決断されたことは、企業間競争にさらされている世界的企業にとって、魅力となり、シャープ亀山工場が実現することとなる。

 シャープの亀山工場の建設が実現し、実際に稼動されてくると、液晶産業を地域社会とうまくマッチさせ、社会の中で適性に位置づけられるための施策が必要となってきた。これは、企業誘致によって住民の生活環境(アメニティとエコロジー)を改善することを目指す取り組みである。この取り組みは、総合的・包括的な視野に立つものであったが、三重県は大学との共同研究によって、この構想を構築することに成功した。

 また、亀山市と関町との合併にこの企業誘致がちょうど重なったため、合併の前からシャープの工場誘致をまちづくりに生かすための住民地域討論会が何度も開催されることとなった。合併後は亀山市総合計画にこの視点を入れるために、地域活力創生委員会を立ち上げ、住民がシャープの工場誘致を生かしたまちづくり案の作成にかかわる仕組みを作った。住民の意見を取りまとめる際に、コーディネーターとして、三重大学の教員や学生が参加することとなった。この第三者の存在が、自由な意見交換と住民自らの建設的な構想打ち出しに大きな影響を与え、さらには、住民が主体となって、自分たちの地域を構想し、責任を持って行動していくスタイルを作り上げることにつながった。

 この他、シャープも企業として、環境への配慮・地域社会との連携による環境保護施策を打ち出している。このように、三重県や亀山市は、シャープの誘致に関して、様々な外部組織や団体との連携を積極的に図り、大きな成果を挙げてきた。行政、企業、大学、NPO、住民、地域団体などが、これまでの枠組みを超えて連携することによって、新たなまちづくりの展開が模索されている。シャープの亀山工場の誘致の成功に関しては、北川知事(当時)の大きな補助金の決断が、注目を浴びた。しかし、注目されるべき点はそれだけではない。様々なアクターが連携を図り、お互いの長所を活かしてきたことこそ、大きな成果を生み出した要素であるといえる。

 経済的には、すでにシャープの亀山工場誘致は大きな成功といえる。他方で住民の生活面の不安要素をもたらしている。例えば、以前にはなかった交通渋滞や外部からの人の流入による地域コミュニティの変化への対策、そして住民の誇りという精神面にとっての成功は、今後の重要な課題である。


 三重大学人文学部教授・地域開発研究機構理事長

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