NIRA Case Study Series No.2007-06-AA-5

市民が主導する平塚の耐震補強
−自分たちのまちは自分たちで守る…破局を回避するために−

木谷正道

【要 約】

 平塚は、東京から遠すぎず近すぎずほどよい距離にあり(60キロ)、そのため、古い地域社会と新しい風とが適度に混ざり合っている風土がある。また、都市規模も大きすぎず、小さすぎず、地域の一体感を持ち、財政やインフラ整備にとっても適当なレベルである(人口26万人)。こうした諸条件の下、90年代には市民活動・NPO活動が活発となる。それぞれのグループは、単独に活動するのみでなく、ゆるやかな連携がとられているという基盤があったことが、防災まちづくりの重要な要素であった。

 このような地域特性をもつ平塚において、小中学校のPTAやNPOを中心に、防災の機運が高まり、2003年8月には、いくつかの団体が緩やかに連携して「ひらつか防災まちづくりの会」が設立され、平塚における防災まちづくり活動が多彩に取り組まれるようになる。多くの団体の緩やかな連携と重層性こそ平塚の活動の特徴であり強みといえる。

 平塚市における取り組みは、市民主導、独自の工法開発、事業者との連携、徹底した情報公開による信用の獲得を特徴としている。

 耐震補強については四つの壁、すなわち、@安価で効果的な耐震補強工法がないという技術の壁、A耐震補強を進めるための効果的な支援制度がないという制度の壁、B地域の建設業界は信用がなく市民は誰に依頼すればよいかわからないという供給の壁、C自分だけは何とかなると市民自身が楽観しているという需要の壁があった。これらについては、まず、建築技術者による画期的な耐震補強工法の開発、平塚市の耐震改修助成制度の創設と新工法を助成対象とすることの実現によって克服した。また、建築士や工務店を含む平塚耐震補強推進協議会が発足し、信用ある供給体制が整った。さらにイベントなど旺盛なパブリシティ活動で市民の関心を高め、地域の信頼関係を活用して耐震事例を積み重ね、需要をブレイクさせることにも成功している。

 平塚の耐震補強活動の効果としては、啓発活動にとどまらず、過去4年間で70件の耐震補強が行われた。また平塚の取り組みは全国へ波及し始めている。さらにこれらの防災まちづくりの取り組みによって、平塚自身の地域力が高まっている。

 今後の課題と展望としては、一層の地域ぐるみの耐震補強の推進、全国との連携と支援、地域のインフラとなるNPO法人化などがあげられる。


 平塚・暮らしと耐震協議会副代表(事務局長)、まちの音楽家たち

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