NIRA Case Study Series No.2007-07-AA-8

黒壁と町(まち)衆(しゅう)の20年
−博物館都市長浜のこれまでとこれから−

山崎弘子

【要 約】

 滋賀県長浜市は、「博物館都市構想」というユニークなコンセプトを打ち出し、まちづくりを行ってきた。

 長浜市の中心市街地は、1960年代半ばまでは、商業都市として大いににぎわっていた。しかし、1970年代に入ると吸引力が低下し、その年代の後半には中心市街地の活性化が大きな課題となった。

 この課題への対策として、長浜市では1984年「博物館都市構想」を策定した。それは、これまで市民が育んできた文化の蓄積や伝統的な町の雰囲気を生かし、まち全体を博物館に見立て、「個性のある美しい住めるまち」にしていこうというものである。そして歴史集積が高い中心市街地を中心とするまちづくりがされていった。

 博物館都市構想のデザインは3つのステップすなわち、1.点の整備、2.線の整備、3.面の整備に分けられる。

 点の整備とは、長浜市歴史博物館、黒壁ガラス鑑賞館(現在の黒壁美術館)などに代表される歴史的・文化的拠点の整備と空き店舗・休閑地対策のことである。

 線の整備とは、道路をアスファルトから地道舗装や石畳に変更したり、側面を伝統的な町家並に改修したり、さらに上部のアーケード改修などを行うことである。加えて、商店街や通りの名称変更やシンボルマークづくりなどによって、通りの差別化が成されることとなった。

 こうした点や線の整備が整うに従って、中心市街地全体の整備、すなわち面の整備が進んでいく。「北近江秀吉博覧会」等の各種イベントを活用し、「まち歩き」という観光スタイルが確立され、人が訪れる博物館都市が形成されていった。

 これらのまちづくりが行われた要因としては、まず「博物館都市」という明確なビジョンが形成されたということが挙げられる。また、大資本との共存共栄を是としたこと、市民の発意と行政の活動そして商工会議所等の中間組織の存在などが成功要因であったといえよう。

 現在、「にぎわいの再生」は果たされたが、次のようなまちづくりの課題がある。まず、高齢化の進展によってまちの文化の継承や店舗の維持に問題が生じ始めている。また商店街が観光客によって支えられ、地元客が来ないことも課題である。また、観光客が日帰り中心であることによって安価なみやげ物以外の専門性や技術力の高いホンモノがなかなか売れないことなどにより、観光客による経済効果が小さくなってしまっている。

 「個性のある美しい住めるまち」にするという、博物館都市のコンセプトの真の実現のために、こうした課題への取り組みが求められている。


 NPO法人 まちづくり役場 理事長

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