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第6回NIRA政策フォーラム
「公的年金制度の役割−公的年金改革の方向性と今後の課題−」


 1月17日、都内において、第6回NIRA政策フォーラムを開催した。まず、駒村康平氏より、2004年の年金大改革(平成16年「年金制度改正」)以降に残された課題と今後の改革の方向性について講演が行われた。次に、坂本純一氏(2004年改革当時は厚生労働省年金局年金数理課長)のコメント後、フォーラム出席者を交えて活発な議論が行われた。


【基調講演】

「公的年金制度の役割:公的年金改革の方向性と今後の課題」 駒村康平氏

年金制度を評価する基準
 (1)給付水準の適当性 (2)年金制度の適用範囲の問題 (3)年金ガバナンスと年金コミュニケーションの問題 (4)制度の持続可能性と信頼性の問題
2004年年金制度改革以降の年金の問題点
 (1)については、日本は国際比較で平均程度ではあるものの、低年金受給者も多い。
 (2)については、諸外国も雇用の流動化により深刻な問題に直面している。ドイツ、イタリアでは企業が指揮命令系統下の労働者を自営業に偽装して社会保険から離脱させる傾向がある。日本でも非典型労働者の増加により公的年金への強制加入の適用対象が縮小し、国民年金の空洞化の直接的原因となっている。改善には厚生年金の適用拡大が必要であり、その結果、実質的に一元化に近づくことになろう。
 (3)については、行政組織の透明性が制度への信頼性確保に重要である。年金情報の通知や政府とのコミュニケーションの問題も大きい。
 (4)について、2004年年金制度改革は財政的には大きな改革である。保険料を固定し、その範囲で年金財政が維持できるように給付を調整し、将来世代の負担を無限に増やさない政策をとったことは評価できる。だが、マクロ経済スライドを国民が正確に理解しているのかが問題。また、基礎年金にもマクロ経済スライドを導入した結果、将来的には生活扶助よりも低くなるため、基礎年金の位置づけが不透明になった。

 さらに、中位推計を下回る出生率が続けば、2020年までには、給付水準が所得代替率50%より低下するか、再度、保険料の引き上げを余儀なくされ、固定保険料方式への信頼性に疑問を生ずる。

 3号被保険者制度や基礎年金の不公平感などから年金一元化問題も俎上にある。

受給権の財産権としての性格
 こうした中で見直すべきは、既裁定年金の扱いと所得代替率50%ルール。これまでの政府見解では、既裁定年金を財産権と位置づける一方、「公共の福祉」の維持のためには給付制限は可能とし、その根拠と程度について「年金財政の実情」「世代間の公平」「老後の生活の安定」「現役世代の負担能力」などを挙げている。
保険料固定方式にコミットする改革
 見直しは、裁量的な変更ではなく、ルールにコミットメントすべき。マクロ経済スライドを名目下限方式でない形でする方法も今後検討が必要である。高齢化のコストを薄く広く負担するシステムにすべきである。
年金制度全体のデザインについてまとめると、基礎年金制度の曖昧さの解消としては、「全国民加入の所得比例型年金+所得の低い人を対象にした税財源の最低保障年金」がよいのではないか。年金一元化には(1)国民年金と厚生年金(2)厚生年金と共済年金―という二つの切り口がある。(2)に関連し、共済年金の持続可能性や格差、恩給部分の追加費用の問題がある。

【コメント】 坂本純一氏

短時間労働者への厚生年金適用の問題は、今後、年金より大きな枠で議論する必要がある。労働市場だけに任せておくと生じてくる問題で、ルール化が必要。第3号被保険者との葛藤があるが、短時間労働者に照準を合わせた本格的な制度にすべきである。
基礎年金の給付水準については、マクロ経済スライドの調整が過度にならないかよく観察していき、低くなり過ぎるようなら抜本的見直しも必要。今のところ現在の購買力を維持できる見通し。
既裁定年金のスライド調整による減額については、平成14(2002)年の「年金改革の骨格に関する方向性と論点」の準備段階で議論はあったが、コンセンサスは得られないと判断した。
給付水準の下限は、マクロ経済スライドの導入により、給付水準が下がり過ぎないかのチェックポイント。財政の均衡が保てても給付水準が低過ぎれば、制度の信認は得られない。
世代間の公平性については、望ましいが固執すべきものではないのではないか。固執するあまり制度の目的を歪めてはならない。世代間所得の移転項目としては、教育、社会資本、遺産、医療、介護などもあり、公的年金制度の中だけで議論すべきではない。スウェーデンの概念上の拠出建て制度も世代間の公平性を保つ制度ではなく、自動均衡措置により給付の減額が続けば、その後の世代とは格差が生じる。
恩給期間に対応する給付の追加費用は、従来公費で負担されていたため、公務員共済には国庫が余計に投入されているという議論があるが、冷静に分析すべき。恩給の中身に厚生年金的部分があるとすれば、その部分は労使折半という考えはあり得るが、この部分は一元化の対象である。一方、プラスアルファ部分は公務員に対する職域年金だったと見なせよう。民間の職域年金部分では、事業主が過去勤務債務(PSL)の掛け金を負担するのが普通の姿であろう。

【自由討論】

〈Q〉事業主による事業主負担回避を修正する方法として、被用者保険に組み込むという話があったが、海外ではどのようにチェック・判断しているのか。
〈A〉ドイツでは関連する社会法典があり、実務ではワンストップのセンターで判断、処理している。(駒村氏)

〈Q〉年金が最低生活を保障するものならば、生活保護の見直しが必要であるが、政府での議論はどうであったのか。
〈A〉生活保護は資産もみた上の給付であり比較しにくい。これらの基準は直接関連させない立場であった。(坂本氏)

〈Q〉老後の所得保障の観点からは、リバースモゲージの活用も考えられるのではないか。
〈A〉NIRAでは、2001年に、高齢化に対応した居住資産活用の方策についての研究を行い、リバースモゲージについても検討した。詳しくは、NIRA研究報告書『高齢者の生活資金確保のための居住資産の活用に関する研究』(2001年)を参照されたい。


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