NIRALogo
第10回NIRA政策フォーラム
「地域再生−廃校問題に光を当てる」

プログラムおよび講師発言の概要 (詳細は[議事録 PDF 97KB]を参照)

開会挨拶および趣旨説明

犬飼重仁NIRA主席研究員から開会の挨拶と今回の政策フォーラムの趣旨説明が行われた。

講演1:「廃校活用による地域再生−美瑛町での実験」
 [配付資料 (1〜12ページ) PDF 1.46MB、(13〜34ページ) PDF 626KB]

田中 勝 氏  田中 勝 (株)美瑛の学び舎代表

田中勝氏による講演の要点は以下のとおり。

 北海道の美瑛町というところで、2007年春のオープンを目指して、小学校の廃校跡を何とか活用して新しい旅行形態に対するニーズに応えようと模索している。私は過去の成功事例ではなく、これから行おうとする実験についてお話したい。

 地方の場合は一般に過疎地域で高齢化が進み、交通が不便で、産業としては農業か漁業が主、という条件の中で、廃校を経営資源としていかに活用するのかを考えていかなければならない。

 美瑛町は農業と観光を連携させた発展を軸に、丘陵地帯の畑という美しい風景を売り物として滞在型の旅行者を引き付けることを目指している。特に私が着目しているのは、今後の旅行市場に大量に出てくる団塊世代である。

 団塊世代の特徴として、有り余る時間をどう充実させて過ごすかという「時間消費型」、あちこち行くのではなく一カ所に留まる「滞在型」、ストレス発散のための非日常的な目的というより、普段の生活の延長としての「日常性」志向、「見ること」よりも「参加」や「体験」、「学び」の重視、を挙げることができる。

 こうしたニーズの旅行スタイルに応えていくために、資産運用や白書の勉強会、あるいは地元農産物を食べて地元の人に味噌造りを教えてもらうなど、廃校を活用した様々な企画を構想している。こうしたビジネスが美瑛でうまくいき、それを契機に同様の試みが全国展開していくことを願っている。

講演2:「芸術文化による廃校の活用を考える」 [配付資料 PDF 85KB]

柄田明美 氏  柄田明美 ニッセイ基礎研究所研究員

柄田明美氏による講演の要点は以下のとおり。

廃校活用が進む背景
 廃校活用は、過疎化や都市化、少子高齢化といった要因に加えて、規制緩和によっても進んできている。文部科学省では、余裕教室・廃校の転用手続きの弾力化・簡素化を平成9年以降、大きく拡大している。また、内閣府では地域再生計画に認定されることで廃校校舎の転用の弾力化を図るという支援措置を実施している(廃校施設等の転用が地域再生に資すると判断される場合は、財産処分にかかる国庫納付金が不要となる)。

廃校活用の事例(都市部での芸術文化による活用を中心に)
 芸術文化で廃校が注目されるのは、芸術団体や芸術家にとって、作品発表のための施設やスペースがないこと、活動資金の不足、特に演劇などの稽古場や舞台道具を制作する場の不足(場を求めて転々とする「稽古場ジプシー」)などの背景がある。
 事例として、京都芸術センター、にしすがも創造舎、芸能花伝舎、世田谷ものづくり学校、精華小劇場の5つを紹介。

廃校活用の課題と、活用を進めるための今後の方策
 廃校は地域住民にとっては思い出深い地域の拠点であり、行政にとっては活用すべき財産であり施策の実践の場、運営主体にとっては、ミッションの実現・実践の場である。いずれの主体にとっても「資源」である廃校をそれぞれにメリットがある形で、いかに調整・連携して運営の仕組みをつくっていくかが課題となる。
 行政側は、公共性を裏付け、事業の効果の評価を行うためにも政策・施策目的の明確な位置づけを行うとともに、運営主体が自由に事業を実施し、収入を確保できるよう支援していくことが必要。また、単年度の契約では不確定要素が大きく運営主体も投資もできないことから、5年、10年といった長期的な視点で評価していくことが求められる。
 芸術文化というのは年代を問わず、ジャンルを問わず、様々な人たちと手を結ぶことが可能な領域。芸術家の新たな視点は地域の既存の資源の開発に有益であり、賑わいの創出にも大きな役割を果たし得る。

講演3:「廃校というスペース-D-秋葉原構想より」

三宅理一 氏  三宅理一 慶應義塾大学大学院教授

三宅理一教授による講演の要点は以下のとおり。

 廃校はじめ空き家などの遊休施設を利用し、特にアートにかかわる行事をいくつか企画運営してきた経験を踏まえて、運営ミッションの側から廃校問題について報告したい。

 秋葉原では2000年からIT拠点を軸とする再開発が始まり、2005年3月にUDXビルが完成して、このエリアが東京の中でも注目を集めている。この秋葉原の再開発と平行して、2005年に、閉校になった練成中学校を利用した「D-秋葉原テンポラリー」というプログラムを立ち上げた。同中学校の建物を国際的なアートイベントの場所として2カ月弱ほど千代田区から有償で借り、ジャン・プルーブェ展(建築展)やスモール&ビューティフル:スイス・デザイン展など4つの展覧会と、ワークショップやセミナー、キャラクターグッズ・アキバ犬の開発を行った。学校は美術館のように重量物を搬入する導線もなく、また美術館の天井は4メートルの高さであるのに対して学校は3メートルしかない。ところが、その低いところに展示物を入れると意外な面白さがある。美しい美術館よりも、むしろ廃校や空き家などでイベントを行うことは、特に海外のキュレーターの人たちにとって非常にワクワクすることであり、物見遊山な人を含めていろいろな人が集まってくる。

 一般に予定されたある機能や目的とは違った使われ方をする空間は「オルタナティブ・スペース」と呼ばれ、新たなクリエイティビティが生み出されるスペースとして注目されている。廃校は地域の資源であるとともに、オルタナティブ・スペースとして文化的な価値や経済効果を生む。確かに、美術館のような機能がないので、知恵を絞り仕掛けを工夫する費用もかかるが、「廃校」は廃れた学校ではなく、新しい可能性、つまり環境とか、物の使い方のまったく違ったロジックや価値観を持っている点において、ワクワクする新しいブランドになるのではないか。

 日本の空き家が今、世界の人から注目されており、アーティスト・イン・空き家が外国人に人気が高いように、フリーに動いているアーティストやデザイナーたちが集まる拠点としても、廃校という空間は大いに利用可能である。廃校は多様なポテンシャルを持っている。

コメント

舘 逸志 氏  舘 逸志 内閣府経済社会総合研究所景気統計部長(地域研究担当併任)・北陸先端科学技術大学院大学客員教授(地域再生システム論)

閉会挨拶

江崎芳雄 氏  江崎芳雄 NIRA理事


[講師プロフィール PDF 10KB]


NIRALogo
トップページ
 
[ 戻 る ]

Copyright (c) National Institute for Research Advancement (NIRA)
Copyright (c) 総合研究開発機構 (NIRA)