NIRA政策研究 2000 Vol.13 No.11(11月25日発行予定)の紹介 不適切な行為の差止めのための民事法的手法の研究
本年4月28日に成立した「消費者契約法」は、以下の3点を主たる内容としている。すなわち、(1)消費者契約の締結過程で、一般消費者がその契約を結ぶかどうか決めるときに、通常認識しておくべき重要事項等の情報提供をしなかったり、「絶対に儲かります」といった真実とは異なる説明をしたような場合、あるいは、(2)勧誘に際して契約を結ぶまで勧誘場所から解放しない等、事業者の不適切な働き掛けによって結ばれた契約は、取り消すことができる旨の規定、さらに、(3)消費者契約の中に、例えば事業者の債務不履行による損害賠償責任を全部免除する条項や、途中解約の際に消費者が著しく不利になるような条項等があった場合には、その条項を無効とする規定である。
情報、交渉力等に格差が存在する消費者と事業者の間の、契約をめぐるトラブルを解決するための最低限の民事的ルールを定めることによって、悪質な事業者とのトラブルに際しては、被害にあった消費者が裁判所に訴えることにより、その救済が比較的容易に図られることを期待している。
しかし、ある被害者が裁判所に訴えて勝訴した場合でも、判決の効力は訴えた本人にしか及ばないこと、一般消費者にとって裁判所に訴えることへの抵抗感も強く、消費者の損害が比較的少額の場合には被害者全員が個別に訴訟を起こすことが期待できないことから、その後も同様な契約条項が使われ被害が生じ続けるのを防ぐことができなくなる恐れがある。そこで、欧州の消費者契約法に盛り込まれている「不公正な契約条項の使用差止請求権」を法律に追加すべきだとの主張がなされることになる。
ところで、わが国の伝統的な民事訴訟法の理論によれば、差止請求権は原告が自らに属する権利に基づき、しかもそれを侵害される可能性が高いときに、それを避けるために行使されることを当然の前提としていたと解されている。消費者契約の条項が不当であると考えた消費者は、当然そのような契約を結ばないから、侵害は回避され、従って差止請求権を行使し得る要件を欠くことになる。
被害の実態から見て消費者契約法に差止請求権を追加することが望ましいとしても、わが国の現行法体系と整合性をもって導入できるかどうかは、法律的に極めて専門的な検討が必要となる。
本特集は、この検討のため(社)商事法務研究会に委託された調査結果を基礎として、参加された委員の方々に執筆をお願いしたものである。
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