総合研究開発機構(NIRA) : 出版物情報
近未来型成熟社会のプロトタイプとしての「学生街」

概要開始情報研究要旨目次
題 名近未来型成熟社会のプロトタイプとしての「学生街」
副 題
機 関(株)シー・ディー・アイ
発 行平成11年9月発行
版 頁A4・122P
種 別助成研究
分 野文化・芸術(文化一般)
ISBN

【 概 要 】
本研究においては、「学生街」の過去と現在の変化を、社会的な機能や役割、システム、意識といった多角的視野で分析し、21世紀型成熟社会に必要な構成要素の抽出を試みる。また、これをもとに、高齢化社会・高度情報化社会における地域コミュニティーの再編や中間的社会集団の在り方を提言する。

【 研究開始情報 】
超高齢化社会の進展、本格的な余暇社会の到来を前に、生活の質的な向上や豊かな時間の創造、生涯学習の重要性などが、社会的な課題として指摘されて久しい。しかし、わが国においては、いまだに、そのためのシステムが整備されていないのが現状である。そうした中、「学生街」を、単なる「大学を中心とした商業集積街区」ではなく、「時間的にゆとりのある人間が、さまざまな交流を通して創造や自己実現を図る場であり、豊かな人間性を育む場」として再認識する。それによって、今後予想される成熟社会を先取りする、一つのプロトタイプ(原型)・先導モデルと見なすことができる。
そこで、本研究では、「学生街」を社会的な機能や役割、システム、意識、空間といった多角的な視点から比較分析しつつ、21世紀型成熟社会に必要不可欠な構成要素を導き出す。そして、高齢化社会・高度情報化社会における地域コミュニティの再編や、中間的社会集団のあり方について、提言を行う。


【 研究要旨 】
人びとが高度な文化活動や生涯学習活動にいそしむ近未来型成熟社会においては、現在のように社会に出る前ではなく、いつでもなりたいときに学生になるライフスタイルが主流になる。そこで望まれる学生街も、かつて大学周辺に自然発生的に成立した学生街とは違ったものにならざるをえない。
かつての学生街が持っていた自分の居場所と思える居心地のよいアジールのような空間、同じような条件の人間との「出会い」や「交流を通じての自己実現」の機会を可能にする空間が近未来の学生にとっても必要である。情報化が進むほどフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが求められ、生身の人間が実際に出会う空間や場所が求められる。日常はパソコンを介してヴァーチャル空間で会話している若者たちは、オフラインで(実際に)会って会話し議論するためのサロンを必要としているのである。
近未来の学生は、大学を含めた地域のさまざまな知的資源やチャンスを最大限自分のために活用するプログラムを自分で書き実行する。彼らにとって最も都合よく整備された活動拠点と、その周辺に形成される休息でき、居心地のよい「出会い」と「交流を通じての自己実現」の機会を可能にするさまざまな空間、そしてそれらが醸し出す自由な雰囲気のある界隈、それが新しい時代の学生街である。そして、市民が選択したソフト・ハードのシステムと機能を意図的人為的に集積し、その効果で周辺に飲食店などを立地させ、学生街としての界隈を形成することは可能である。
成熟社会の新しい学生街に望まれる具体的なソフトのシステムは、(1)地域の生涯学習資源に関する情報の提供システム、(2)生涯学習ニーズのマーケティング・システム、(3)生涯学習のための研究資料提供方法の再整備、(4)芸術振興、スポーツ振興のためのシステムなどであり、ハードのシステムとしては、(1)ミーティング・プレイス、(2)研究情報図書館、(3)アートセンターなどの整備が望まれる。
学生と市民が相互置換しうる将来の学生街は、新しい市民の学び文化のインキュベーターとなる。期待される新しい学生街文化は、以下のようにまとめることができる。
(1)市民と学生の協働文化
文化的選択的な縁によって成り立つ関係をベースに、学生だからという甘えのない、市民と学生がともに働いて、一般に通じる文化の創造と発信が期待される。
(2)地域文化のメジャーな担い手
市民が初めから学生として加わっており、地域のメジャーな文化になる可能性が高い。演劇や音楽、スポーツ、地域研究など、さまざまなジャンルで地域文化のメジャーな担い手となることが期待される。
(3)新しい産業のインキュベーション
新しい学生街の学生は、社会経験があって、多様な年齢、多様な能力・感性の集団であり、また生きがいや自己実現を模索する人たちであるため、自ら事業を起業し同志や出資者を募るといったインキュベーションとなる可能性があり期待される。


【 目 次 】
序文
調査研究体制
執筆
エグゼクエィブ・サマリー
Executive summary
要約
はじめに 本研究の目的と方法
1 本研究の背景
2 本研究の目的
3 本研究の方法
第1章 大学・都市・学生街
第1節 学生街の出現
(1)大学の起源と「学生街」の出現
(2)わが国における「学生街」
第2節 「学生街」の変貌と今後のゆくえ
(1)大学の変遷と学生街
(2)京都の学生街の変貌
(3)今後の都市・地域における大学と「学生街」
第2章 現代の大学生にとっての「学生街」
第1節 グループ・インタビュー調査概要
第2節 インタビュー対象のプロフィール
(1)通学と居住
(2)サークル活動
(3)アルバイト
(4)情報機器保有状況
(5)コミュニケーションのメディア
(6)友人と会う場所・集まる場所
(7)仮想世界か実世界か
(8)生活時間の配分
(9)ほしい場所や施設、設備など
第3節 現代の大学生のライフスタイル概観
(1)志望動機、学業やサークル等、学内での生活について
(2)アルバイトやボランティア活動等、学外での生活について
(3)現代の大学生像
第4節 大学生の「学生街」観
(1)早稲田大学と高田馬場
(2)立命館大学と衣笠、草津
(3)鳥取大学と湖山銀座
第5節 総括
(1)大学自体の「学生街化」は、学生に必ずしも「居場所」を提供していない
(2)学生の「溜まり場」は分散し、大学周辺は選ばれなくなっている
(3)「情報・通信」思考が強く、人間関係の「モバイル化」が進んでいる
(4)大学生に特有と言えるライフスタイルは希薄である
(5)もはや「学生街」は存在せず、「大学街」しか存在しない
第3章 生涯学習時代の“新しい学生層”と学生街
第1節 “新しい学生層”の登場
(1)社会人特別選抜制度
(2)大学院への社会人の入学
(3)夜間部・昼夜開講制
(4)科目等履修生制度
(5)大学の公開講座
第2節 “新しい学生層”の実態
(1)生涯学習社会のなかの大学
(2)大学での生涯学習者とその年齢層
(3)シティーカレッジ:市民の学生化
(4)高齢化社会と大学:高齢者の学生化
第3節 学生の“新しい学生層”化
(1)インターンシップ
(2)日本のインターンシップ
(3)京都におけるインターンシップの実態
第4章 情報化社会の大学・学生・「学生街」
第1節 情報化の進展と新しい高等教育
(1)大学・学生・「学生街」のあり方に影響を及ぼす主要な技術動向
(2)教育=学習はどう変わるか
(3)より広い観点から情報化の影響をさぐる
(4)大学におけるマルチメディアの利用
第2節 情報化社会における「学生街」の変容
(1)失われた古き良き「学生街」
(2)学生における情報化の進展状況
(3)仮想空間としての「学生街」
(4)現実の都市空間に再転写される「学生街」
第5章 近未来型成熟社会のプロトタイプとしての「学生街」への提言
第1節 新しい学生街の形成へ
(1)学生街の要件
(2)成熟社会の学生街
第2節 新しい学生街に望まれるシステム
(1)学生街に望まれるソフトのシステム
(2)学生外衣に望まれるハードのシステム
第3節 新しく生まれる学生街文化への期待
(1)市民と学生の協働文化
(2)地域文化のメジャーな担い手
(3)新しい産業のインキュベーション
主要参考文献
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