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NIRAオピニオンペーパー

ICTの進展と金融政策運営

NIRAオピニオンペーパーNo.33 2017/12発行
宮尾龍蔵(東京大学教授)


 日本経済は企業部門を中心に景気回復が続き、経済の成長力や競争力は着実に高まってきた。ICT(情報通信技術)の利活用がさらに浸透し、イノベーションやコミュニケーションのコストは大きく下がっている。I C T や研究開発など無形資産への投資と利活用をさらに推し進めることは、わが国の成長力強化にとって不可欠であることは論をまたない。
 ただし、折からの人手不足のなか、ICTが汎用技術としてより浸透することで、今後より多くの労働や仕事が新技術を体化した資本によって代替される可能性がある。技術の代替性が高まると、労働所得への分配を抑制することが企業にとっては合理的だ。このメカニズムが強まれば、経済全体のパイが拡大しても労働分配率の伸びはより抑えられるだろう。消費や物価の回復には勢いがつきにくくなる可能性には留意が必要である。
 経済の成長力が今後も高まっていくという認識のもと、2%物価上昇率は、引き続き目指すべき達成可能な目標である。しかしその実現には、まだ相応の時間がかかると予想される。今後の金融政策運営は、緩和長期化による効果と副作用のリスクの双方をより注意深く点検しつつ、現行の枠組みを柔軟かつ粘り強く継続していくべきである。

○日本経済は企業部門を中心に経済の回復が続くが、家計消費の慎重さは残る
○ICTの進展、研究開発投資などが成長力強化に寄与する
○技術進歩により労働から資本への代替メカニズムが強まれば、労働所得への分配は抑制される
○2%物価安定目標:実現にはまだ時間がかかるが、目指すべき目標に変わりはない
○将来の政策へのガイダンスは強力な緩和効果を及ぼしている
○財政との関わりなど副作用のリスクもより注意深く点検すべき
○金融政策は今後も経済の回復を下支えする役割を担う

<関連研究>
マクロ経済政策運営と財政規律に関する研究(Ⅱ) (2016年6月~2018年11月)

<関連頁>
不安定な海外経済動向とマクロ政策運営(NIRAオピニオンペーパーNo.23)
財政・金融政策運営をセットで分析する意義―「シムズ提案」から学ぶべきこと― (NIRAオピニオンペーパーNo.30)

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