利用方法

日本を動かす知をつなぎ、政策課題を論じ、ビジョンを提示するシンクタンク

トップ > 研究の成果と課題の発信 > NIRA政策レビュー > ユーロ危機の行方

NIRA政策レビュー

ユーロ危機の行方

NIRA政策レビューNo.54 2011/09発行
伊藤元重(NIRA理事長)、竹森俊平(慶應義塾大学経済学部教授)、伊藤隆敏(東京大学大学院経済学研究科教授)、 加藤裕己(本誌編集主幹)

問題提起 「ユーロ危機の行方」伊藤 元重(NIRA理事長)
視点1 「ユーロ危機の収束は可能なのか」竹森 俊平(慶應義塾大学経済学部教授)
視点2 「ECBは国債の無制限購入を決断できるか」伊藤 隆敏(東京大学大学院経済学研究科教授)
解説改題  加藤 裕己(本誌編集主幹)
参考資料

 2009年以来ユーロ圏では、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルで債務危機が生じた。ギリシャ危機は、欧州金融機関の債務超過問題となり、波及の大きさが問題視され、10月末のユーロ加盟国の首脳会議により、包括戦略が決定された。しかし、その後も動揺は収まらず、ギリシャ、イタリアの首相の退陣にまで至り、フランスやスペインの国債金利の上昇も生じている。本号では、ユーロ危機に至った問題の本質および対応策について検討している。

PDF版(全文)はこちらからご覧いただけます


問題提起 「ユーロ危機の行方」 伊藤 元重(NIRA理事長)

何が起きているのか?
 ギリシャの財政危機に端を発した混乱が、ユーロ圏全体を揺さぶっている。財政危機がスペインやイタリアのような大国に波及するのか、 これらの国の国債を大量に保有している欧州の金融機関は大丈夫なのか、通貨ユーロは今後どうなってしまうのか、 そして今の状況を脱却するためにはどのような手を打たなくてはいけないのか。様々な問題が浮かび上がってくる。
 そして今の時点に立って過去を振り返ってみれば、関連した別の疑問が浮かび上がってくる。そもそも、 ユーロという共通通貨システムには何か根本的な欠陥があったのか。それともユーロという共通通貨とは関係なく、 今回のような問題が起きうるのか。フランスなどの銀行は、なぜかくも大量にギリシャの国債を保有したのだろうか。 ギリシャ経済に問題があっても、何らかの形で欧州の政府の支援があると期待したのだろうか。ギリシャだけでなく、アイルランド、ポルトガル、 スペイン、イタリアなど、なぜかくも多くの国が同時に財政問題に直面する結果になってしまったのか。これらの国の財政問題は、 これらの国固有の問題というだけでなく、リーマンショックを起こしたグローバルマネーの問題と関わりがあるのだろうか。
 このように浮かび上がってくる疑問を並べてみると、ユーロ圏が抱えている問題が非常に複雑であり、 一つひとつの疑問に納得のいく答えを出すことがそれほど簡単なことではないことが分かる。
 財政破綻は古くから世界のあちこちで起きてきた問題であり、今回のギリシャなどのケースもその例外ではない。 財政危機に陥った国が市場からの攻撃によって問題が一気に深刻化していくことも珍しい現象ではない。 市場がその国の国債を受け入れることを拒否すれば、財政運営は一日たりとも成り立たないからだ。
 ただ、そのギリシャがユーロという共通通貨に参加していたことが問題を複雑にしている。ギリシャがユーロ圏に入っていなければ、 ギリシャはすでに破綻していただろう。しかし、ユーロ圏に入っていたため、 ユーロという通貨を守るためにもギリシャへの支援策がとられてきた。それでもどこかの時点でギリシャは財政破綻となるのかもしれない。 しかし、それではスペインやイタリアは大丈夫なのか。そしてそうした大国に波及することがあれば、 ユーロという通貨システムそのものが成立しなくなる、という見方もある。

共通通貨制度の欠陥
 ユーロという共通通貨が導入される以前から、多くの経済学者は共通通貨制度の問題点を指摘してきた。為替レートの調整機能が失われたとき、 経済はうまく機能するのかという疑問である。
 ギリシャやポルトガルのような国は、ドイツのような国よりも生産性の上昇率が低いだろう。また、産業構造から見ても、 潜在的な成長率にもギャップがある。変動レート制の世界では、ギリシャやポルトガルの通貨の為替レートが切り下がっていくことで、 生産性の差は調整される。しかし、ユーロという共通通貨の下では為替レートの調整は不可能だ。
 それでも、賃金や物価の変化を通じた実質為替レートの調整という可能性は残されている。為替レートは動かなくても、 ギリシャやポルトガルの賃金や物価が上昇しなくて、ドイツのそれが上昇すればよいはずである。 残念ながらこの調整メカニズムは期待通りの機能を果たしていない。ドイツの賃金や物価が大幅に上がることはなかったし、 ギリシャやポルトガルの賃金が下がるということも、賃金や物価の下方硬直性のために起こりにくかった。結局、ドイツは経済的に繁栄するが、 ギリシャやポルトガルのような国は経済的停滞に苦しむことになる。欧州の経済統合は、北高南低とも言うべき経済構造を作り出してきた。
 欧州の市場統合が進んでいく中で、市場統合による利益をもっとも受ける国や地域はどこか、 という問題が経済学者によって論じられたことがあった。一つの仮説は、国境を超えて自由に貿易ができるようになるので、 人件費の低いポルトガルやギリシャのような南の国に多くの企業が立地して、南の国が利益を得るという見方であった。そしてもう一つの見方は、 生産性の高い産業がドイツやフランスなどに集中し、有能な人材もそちらに引きつけられるので、北の国が有利に、 そして南の国は不利になるという見方であった。
 結果的には、後者の見方が正しかったようだ。欧州統合によって経済活動は北の方にますます集中するようになっている。 北の成長力が南の成長力よりも高いという問題は、北と南の国が固有にもっている差というだけではなく、 経済統合がそれを加速化している面もある。

最適通貨の理論
 今回の一連の出来事は、共通通貨ユーロの存在を否定したわけではない。それどころか、欧州諸国の中には、今回の危機を乗り切って、 ユーロ圏をさらに強化したいと考えている人も多いはずだ。欧州が共通の通貨を利用し、経済社会政治の統合を果たすことは、 欧州全体の利益にかなうことだと考えている人たちがたくさんいるから、欧州の統合が進んできたのだ。もちろん、 そうした動きに懐疑的である人たちが増えていることも事実だが。
 共通通貨を設計するときの拠り所となるのが、最適通貨の理論である。労働などの移動が自由で、財政的な調整が可能な地域が、 最適通貨圏を構成する。つまり、共通通貨を導入することが好ましいという。労働移動が自由であれば、 経済的に不調な地域から好調な地域に労働が移動することで全体の調整が可能となる。また、 好調の地域から集めた税金を不調な地域に投入することで、地域間の調整を実現することも可能だ。
 たとえば、日本のような国は円という共通通貨の最適通貨圏となっている。経済的に不振な地域から好調な地域に人口移動が起きている。 同じ言語を話し、同じ文化的な背景があることがこうした移動を容易にさせている。また、 首都圏などから集めた税金を地方経済に財政支出として投じることができるので、地域間格差を薄めることができる。
 残念ながら、欧州諸国はこうした条件を十分には満たしていない。ギリシャ経済が不振であったとしても、 好調な他の欧州地域に移れるのはギリシャの中でも一部の人たちだけである。また、 ドイツの国民が自分たちの税金を使ってギリシャを支援するのに同意しているわけでもない。
 ユーロ圏全体の現在の危機を救うためには、もっと本格的な財政統合をする必要があるという見方がある。欧州全体を見れば、 財政状況は日本や米国よりははるかに好ましい状況である。問題なのは南の国やアイルランドだけである。そこで、 ユーロ加盟国が共同発行するユーロ共通債の発行が論議されようとしている。
 ただ、ドイツやフランスの国民が、自分たちの税金をそうした形で南の国の財政支援のために使うことを認めるのか、 政治的には困難な問題である。そうした政治的困難を乗り越えて財政連携の方向に向かえるのかどうかの試金石として、 ユーロ共通債の動向は注目すべきである。

ソブリンリスクの構造
 そもそも今回の危機はなぜ起きたのだろうか。それは明らかに2008年に起きたリーマンショックと関係がある。 リーマンショックは二つの変化を世界にもたらした。一つは、経済危機からの脱出のために多くの国が大胆なケインズ政策をとったということだ。 巨額の財政赤字をいとわず景気刺激策に走った。もう一つは、グローバルマネーが国債のような安全な資産へ逃避を始めたということだ。
 残念ながら、こうした動きが結果的に国債のリスクを高める結果になっている。景気が早期に回復すれば問題なかったのだが、 そうした状況にはない。欧州の金融機関が大量の国債を保有しているということは、リーマンショックと無関係ではないはずだ。
 残念ながら、同じユーロ建てであっても、ギリシャやアイルランドの国債の中身は腐っていた。 ギリシャ危機の中で次々に明るみに出てくるギリシャ財政の不健全さは呆れるばかりだ。 そして公務員給与カットや増税という財政健全化を進めようとする政府に国民の多くが反発する事態に、財政問題の深刻さが見えてくる。 ギリシャとスペインやイタリアを同じようなレベルで見るべきではない。ただ、市場は同じような問題をこれらの国に感じているのだ。 財政健全化をなかなか進められない政府の弱さのようなものも、市場は問題にしているのかもしれない。
 金融機関は、本来はこうしたリスクを見ながら国債を購入する存在のはずだ。しかし、 フランスなどの金融機関がギリシャ国債を大量に保有しているのは、 ユーロという同じ通貨の下で発行された国債だから安全だろうという過信が働いたのかもしれない。あるいは、 いざとなれば欧州諸国が支援するという期待感があったのかもしれない。今でもそうした期待感を持っているだろう。
 欧州統合の過程でも共通通貨ユーロの導入という動きが、欧州統合への過信というある種のユーロ・ユーフォリズムを生んだのかもしれない。
 さて、ユーロ圏の危機は今後どのような方向に動いていくのだろうか。その予想は困難だ。ただ、いくつかのシナリオを想定することができる。
 欧州諸国がもっとも望んでいる道は、問題をスペインやイタリアまで広げないで、何とか今の状況でおさめることだろう。 そのために必死になって火消しを行っている。南の国に財政支援を行い、市場で国債を買い支えるのだ。 そうした対応を続けるうちに市場が沈静化し、そして問題となっている国が財政健全化策を実行することを期待しての対応だ。
 根本問題の先送りとも言えるこのような対応だが、今の段階ではもっとも現実的な対応のようだ。ただ、 財政統合というより本格的な対応が行われないかぎり、所詮は対症療法的な手法であると言わざるをえない。 それで本当に市場が沈静化するかどうか分からないし、仮に今回は沈静化しても将来また同じような問題が生じるかもしれない。
 仮に対症療法的な手法がうまくいかなければ、ユーロは本格的な危機に陥ることになる。 スペインやイタリアに財政危機が本格的に波及したケースだ。その場合には、ユーロ分裂か、 それとも本格的な財政統合かという大きな決断を迫られることになる。

このページのトップへ

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

視点1 「ユーロ危機の収束は可能なのか」
             竹森 俊平(慶應義塾大学経済学部教授)


問題の発端
 現在、危機を迎えている国、つまりポルトガル(P)、アイルランド(I)、イタリア(I)、ギリシャ(G)、スペイン(S)の頭文字を取った「PIIGS」という言葉が一時は新聞によく載ったが、欧州内ではことはもはや文化的な対立にまで至るので、こんな侮辱的な言葉は使えず、最近はGIIPSと並べ替えられている。ともかく、このグループの中で、北の国はアイルランドだけ、他は南の国という事実がポイントで、問題の発端は「南北格差」にある。
 ユーロ圏全体でなくても、圏内の個々の国についても地域格差は存在する。ドイツでは、統一以来、東と西の格差はほとんど縮小していない。
イタリアについてもメッゾジョルノといわれる南部と北部の間の格差は建国以来の問題である。地域格差の原因は簡単に説明できる。
①貧困な地域(東ドイツ、南イタリア)の労働生産性は、豊かな地域(西ドイツ、北イタリア)のそれよりも低い。②労働組合は両地域の賃金が同一であることを要求する。③そのため貧困な地域から雇用が喪失する。
 「最適通貨圏」の理論によると、この場合、貧困な地域から豊かな地域への移民が可能であれば、両地域は同一通貨圏(この場合は同じ国)を形成しても良いことになる。実際、ドイツでも、イタリアでも移民は起こっているが、両国政府とも豊かな地域の移民のスラムが膨張するのを好まないので、豊かな地域から貧困な地域へ大々的な財政支援がなされ、それで貧困な地域の雇用を支えている。ユーロ圏が形成される時、ドイツ国内ではそれが「トランスファー・ユニオン(財政支援同盟)」
に早晩転換することを恐れる意見が強かった。東西ドイツ統合の際の「悪夢」の再発が予想されたからだ。
 実際、統合前も統合後も、ユーロ圏の南と北を比べると、南の方が賃金の上昇率が激しかった。両者の労働生産性が「北高南低」で、一定の格差があるとすると、次第に北での雇用が有利になり、南は北からの財政支援を受けない限り、工業基盤を失ってジリ貧になる。ところが2007年の世界的金融危機発生までは、北の財政支援もないのに南は好況に潤っていた。なぜかと言えば、民間の資本移動が財政支援の代わりを果たしていたからだ。理由は何か。簡単だ。南の高インフレである。
 今、南のインフレ率が5パーセント、北のそれは2パーセント、北の金利は3パーセントとしてみよう。この時、南で100円分商品を買い、貯めておけば、1年後には105円で売れる。この投資のための資金を北で借りると、103円の返済が必要だが、
それでもまだ2円の儲けが出る。同じことを北への投資でやろうと思っても、1年後の商品価格が102円なので儲けは出ない。だから北で借りて、南に投資するのが有利になる。もっとも1年間商品を貯めるのは大変だから、もっと簡単な方法を利用できる。
 たとえばインフレ率が高い地域では、それに見合って不動産・住宅の価格の上昇率も高いから、不動産・住宅への投資で「インフレの恩恵」に預かることもできる。またインフレ率が高い国では証券の名目金利も高くなる傾向があるから、インフレ率(金利)の低い北で証券を発行して、それを南の証券(たとえばギリシャ国債)に投資するという簡単な投資でも「インフレの恩恵」は享受できる。
 このようにして、南は民間も政府も、北に対する債務を膨張させ、他方で北の銀行は南に対する貸出で、エクスポージャーを高めていたというのが2007年の世界金融危機発生までの状況だった。今から思えば北の銀行は貸出のリスクに十分な注意を払っていなかったことになるが、注意を怠るきっかけは北と南が同じ通貨(ユーロ)を使用していることだった。つまり、共通通貨(ユーロ)そのものがユーロ危機を招いた原因だった。

危機対応の失敗
 しかし、ひとたびバブルが崩壊すると、南の北に対する債務と、北(特に銀行)の南に対するエクスポージャーとがあらわになる。北は南に対するエクスポージャーを即時に縮小しようとするので、北から南に対する貸出がストップするだけでなく、短期の貸出については取り付けが始まる。短期の貸出のロールオーバーを計算していた南(民間と政府)はこれでたちまち窮地に立たされる。今回、特に状況が急激に悪化したのはギリシャ政府だった。これまでの発表(GDPの3パーセント)をはるかに超えるGDPの12パーセントもの財政赤字をギリシャが持つことが分かったのが2009年の末だったが、それ以来、今日に至るまでユーロ圏はギリシャ問題との戦いを続けてきた。
 ところがそれが収束するどころか、PIIGS全体の危機にまで広がり、現在はギリシャとイタリアの国債についてのエクスポージャーが高いフランスの銀行に経営危機が発生している。1年半にわたって、さまざまな政策をとってきたにも関わらず、ユーロ圏の危機は拡大を続けてきたのだろうか。
 対応が失敗した理由は二つある。第1は、少なくとも一部のPIIGSが抱える問題が、もはや流動性の危機ではなく、返済不能(インソルべンシー)の危機であることを見誤ったことだ。インソルべンシーに陥った借り手は、そもそも債務を全額返済する能力を喪失しているから、そんな借り手にいくら追い貸しをしてみても、返せないものは返せず、問題の解決にはならない。ところがユーロ圏は初めからインソルベントであることが明らかなギリシャに、ひたすら追い貸しをする一方で、無理な返済計画(財政再建策)を突きつけた。返済計画と現実の乖離が明瞭になった今夏からギリシャ情勢が逼迫したのは、情勢が急変したためではなく、インソルベントである以上、初めからこうなることは見えていたのである。
 第2の失敗の理由は、銀行の経営不安と財政の不安が増幅し合う問題を軽視し、銀行への資本注入を怠ったことだ。南へのエクスポージャーが高い北の銀行が、バランスシートに損失を抱えることは当初から明らかだったが、2度行われた銀行の安全性を確認するストレステストでは、この損失が少なめに評価された。「ユーロ圏の国は一国たりとも債務不履行しない」という建前が貫かれたためで、その結果、証券が満期まで保有されることが前提とされているバンキングアカウント上のPIIGS国債は全て満額を評価されて、銀行の損失はゼロにされたからである。このストレステストがいかに意味の無いものであったかは、1回目のストレステストに通過したアイルランドの2銀行がその後経営破綻し、汚名返上に行われた2回目のストレステストを通ったベルギー・フランス共同の銀行、デキシアが10月に経営破綻したことを見れば明らかである。
 要するに、ユーロ圏はギリシャに莫大な追い貸しをすることで、インソルべンシーを隠し、国民に不人気な銀行への公的資金の投入を避けようとしたのだが、うまくいかなかったわけだ。10月の最終週になって、ギリシャへの債務の5割カット、公的資金を使った銀行の資本増強、さらには欧州安定化基金(EFSF)を使った問題国(特にイタリア)国債の買い支えといった正当な新政策が矢継ぎ早に出されたが、もう遅すぎるといった論調が欧州で強い。新政策を報道する10月24日(月曜日)のドイツの新聞には、「絶壁の縁に立つ欧州(南ドイツ新聞)」、「ユーロのエンドゲーム(フランクフルター・アルゲマイネ)」といった悲観的な題名の論説が並ぶ。今や世界の国債残高3位のイタリアの国債にまで不安が広がっているのに、EFSFの自由になる資金が30兆円程度では勝負はついたかもしれない。
(2011年10月26日執筆)

竹森 俊平(たけもり・しゅんぺい)慶應義塾大学経済学部教授
1956年東京生まれ。81年慶應義塾大学経済学部卒業、86年同大学院経済学研究科修了。同大学経済学部助手、89年、米国ロチェスター大学経済学博士。97年より現職。
主な著書に、『世界経済の謎』(1999年12月) 東洋経済新報社、『経済論戦は甦る』(2007年2月) 日本経済新聞出版社、『世界デフレは三度来る』上下(2006年4月) 講談社、『資本主義は嫌いですか』(2008年9月) 日本経済新聞出版社、『経済危機は9つの顔を持つ』(2009年8月)日経BP社、『国策民営の罠』(2011年10月)日本経済新聞出版社、などがある。

このページのトップへ

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

視点2 「ECBは国債の無制限購入を決断できるか」
             伊藤隆敏(東京大学大学院経済学研究科教授)


 ユーロ圏の政治経済が揺れている。政治経済の動揺は、ヨーロッパの経済統合の要である通貨ユーロの存続を危うくしている。10月から11月前半にかけては、ギリシャ、イタリアでは首相が辞任、ユーロは安値圏で推移、ユーロ圏の銀行危機も危惧され、イタリアへのIMFの監視も始まるなど、ギリギリの危機対応が続いている。危機からの脱出のためには、ユーロ圏全体が、いくつかの条件をつぎつぎとクリアしていく「狭い道」を走らなくてはいけない。一歩間違えると、通貨ユーロからのいくつかの国の離脱がおきる可能性もある。ユーロ圏は、創設以来の最大の危機を迎えている。

1.ギリシャ財政の粉飾発覚が発端
 今回のユーロ圏の経済危機は、2009年10月に、それまでのギリシャの財政赤字の数字が過小であったということが明らかになったところから始まった。ギリシャに対するIMFとユーロ圏による支援の枠組みができたのは2010年5月であるが、このギリシャ支援のプログラムは楽観的なシナリオで修正が必要になる、という指摘はこの時点でも多かった。
 ギリシャの放漫財政の理由としては、つぎの4つが指摘されてきた。第一に、徴税能力が弱いこと。消費税率は21%であるが(その後23%に引き上げられた)、経済活動に比して、歳入額が低い。第二に公務員の数が多いこと。同じ経済規模のポルトガルに比べて公務員の数は3倍。第三に、オリンピック施設など国有財産が使われないまま放置されていること。第四に、年金制度が退職者に有利にできており、公務員では、55歳で、年金満額を受け取れるという。これらの構造的要因により、ギリシャの財政赤字が膨らんだまま、修正が難しかった。
 2009年10月からギリシャの財政再建の方策についてギリシャ政府の努力はあったものの、ギリシャ国債の利回り上昇、緊縮策に対する一部国民の反対などから、赤字縮小にはつながらなかった。

2.後手後手の対応が危機を拡大
 2010年春に、財政不安が再燃、その結果、ギリシャに対しては、2010年5月2日に欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)が計1100億ユーロの支援策を発表し、当面、国債償還の資金繰り不安はなくなった。
 その時点で、ギリシャ以外にも、財政赤字と政府債務・GDP比率の大きな国があることは心配されていた。そのなかでも、アイルランド、ポルトガルが、特に財政状況がよくない、ということは周知の事実だったので、ユーロ圏は資金を出しあう域内支援の仕組みを作ることに合意した。これが、欧州金融安定基金(EFSF)の始まりである(仕組みはその後、改訂が加えられる。)
 2010年12月には、アイルランドに対して、IMFとEFSFから総額850億ユーロの支援パッケージが決まった。アイルランドは、もともと財政赤字が大きな国ではなかった。しかし、アイルランドの住宅バブルがはじけると銀行の資産内容が急速に悪化、銀行を救済することで今度は財政赤字が急拡大した。政府債務・GDP比率は急拡大したものの、アイルランドに財政赤字体質があるわけではない。一方、ポルトガルも、財政赤字の縮小が進まず、2011年5月にIMFとEFSFから、780億ユーロの支援を受けることになった。
 しかし、ユーロ危機はこれでは収まらなかった。6月から7月にかけて、ヨーロッパ各国のドイツ国債に対する国債利回りスプレッドや債務不履行確率を示すCDSが急騰した。ギリシャでは、成長率が予想よりも低いことで、税収が低く、財政再建がうまくいかないのでないか、という見方が広がった。第一次支援では十分ではなく、追加支援が必要になるとの見方が広がった。
 7月21日のEU合意では、次のことが決められた。ギリシャに対しては、EUとIMFが総額1090億ユーロの追加支援を行う。返済期間を第一次支援も含めて、7年から15-20年に延長する。これらの措置を前提として、ギリシャは、遅れている民営化(政府資産の売却)を含む、財政赤字削減に取り組む。ギリシャ国債は「自発的」に、既発債を30年債に交換する債券交換を民間銀行に提示して、実質的に満期の延長を図ることになった。一般には21%の削減と言われている。
この しかし、7月21日の合意においてもいくつかの疑問は残っていた。最大の問題は、ギリシャ国債の債務削減は、ふたつの危機伝播のチャンネルを開いてしまった。第一は、ギリシャ危機がギリシャ国債を保有する銀行(主に、仏、独と、ギリシャ)の債務超過危機へ転化するチャンネル、第二は、ギリシャ危機がスペイン、イタリアなど大国の国債危機に発展するチャンネルである。前者に対しては、銀行に対して資本増強を求めることが必要となるし、後者に対しては、強力にスペイン、イタリアを支援する枠組みが必要になる。たとえば、ECBによるスペイン、イタリア国債の大量購入はマーケットのパニックを鎮静化するのに、有効であると、多くの経済学者が考えたが、これはドイツやECBが強く反対した。理由は中央銀行による「最後の貸し手」の発動は、改革努力を怠るようなモラル・ハザードを起こす、というものである。 しかし、この二つの危機伝播のチャンネルに対する備えは、7月21日の合意のなかにはなかった。
 8月末には、IMFのラガルド専務理事が、ドイツ以外の欧州各国の国債が軒並み下落していることから、これらの国債を保有する欧州の銀行が不良債権を抱える状況になっている、として、自己資本の充実を求めた。これに対して、欧州の政治家や銀行は大きく反発、認識不足と非難した。しかし、その後の展開は、まさにラガルド専務理事が指摘したとおりの展開となり、10月のEUの銀行に自己資本充実を促す決定へとつながっていく。ここでも、EUの対応が後手後手に回っていたことが現れている。

3.ギリシャ国民投票表明の衝撃
 9月になると、ギリシャ危機が再燃、さらに、イタリアの国債スプレッドの上昇がみられた。ギリシャとイタリアの国内の反発も強まってきた。ギリシャ経済の不振は続き、税収増の見通しも立たない状況である。そして、ギリシャの債務不履行がいよいよ回避できない状況になってきた。ギリシャ国債の保証コストであるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は過去最高を更新し続け2771ベーシスポイント、10年国債利回りは20%を超えた。
 このような事態を収拾すべく、ユーロ圏の首脳は会議を重ねて、更なる支援体制の構築を目指した。その結果が10月27日未明に発表された、ユーロ圏17カ国首脳会議の「包括戦略」である。その中で、ギリシャの債務削減について5割の民間負担を求める一方、域内主要70行に対し資本増強を要請する。さらに、イタリア、スペインへの波及を防止するために、欧州金融安定化基金(EFSF)に最大5倍のレバレッジをかけ、1兆ユーロ以上に再拡充する。その使途は、イタリア、スペインの国債買い入れなどが想定されている。
 銀行の資本増強は、2012年6月を期限として、中核的自己資本比率を9%以上にするように求めている。さらにイタリアについては、3ヶ月ごとのIMFによる経済監視を受け入れる、ということも合意された。
 この10月27日の決定を受けて、銀行の資本不足も、イタリアへの波及も防ぐ手立てが行われたので事態は沈静化すると、EU首脳は思ったに違いない。ところが、10月31日になり、世界に衝撃が走る。
 ギリシャのパパンドレウ首相が、EU、IMF、ECBによる第二次支援の枠組みで要求されている財政再建を受け入れるか(ユーロ圏残留)、受け入れないか(ユーロ圏からの脱退)決める国民投票を行うと、10月31日に表明したのだ。国民投票で、救済策が否決されるのではないかと憂慮する国際金融市場は、この日、大きく下落した。その後の数日混乱が続いた結果、パパンドレウ首相が辞任を表明した。パパンドレウ首相率いる与党と野党が大連立政権の樹立について、合意したものの、後任の首相選出に手間取った。11月12日にパパデモス氏が、ギリシャの新首相に就任した。パパデモス氏は、MITの経済学PhDを持ち、ギリシャ銀行総裁(1994-2002年)、ECB副総裁(2002-2010年)を歴任している。経済学者(テクノクラート)が経済改革の指揮をとることになる。
 イタリアでは、11月9日、イタリア国債の金利が、危険水域といわれる7%を超え、12日ベルルスコーニ首相が辞任、新たな連立政権に向けた連立協議が始まった。これを受け大統領は13日、経済学者のマリオ・モンティ氏を新首相に指名した。モンティ氏は、欧州委員のときに、競争政策の厳格適用で、おおいに評判が高まった人である。しかし、大連立政権が早急に形成されるのか、総選挙を行うのかは、この段階では不透明だ。

4.ユーロ危機を巡る論点
(1)ギリシャの債務削減の実効性
 これまでの経過についての評価や今後の展開では、いくつかの論点がある。
 論点(1)。ギリシャの50%債務削減は実現するか。対GDP比の債務残高を現在の160%から2020年までに120%に低下させるべく、EUは銀行団を代表する国際金融協会(IIF)と長い協議の末、50%の削減で合意した。自発的な債務削減には、個別の銀行が合意する必要があり、どれだけの銀行が削減幅拡大に合意するかはまだ不明である。またこの債務削減は民間金融機関や民間投資家の保有分にのみ適用され、欧州中銀(ECB)が保有するギリシャ国債には適用しないと合意されている。ギリシャ政府はECBに対しては満額を払い続けるので、債務削減の割合が大きく減少し、ギリシャ政府の救済にはつながらないことになる。
 7月に決まった第二次ギリシャ支援の柱の一つが、実質21%の自発的な債務削減(短期国債からEFSFの保証が付いた長期国債への乗換えスキーム)だった。ようやく21%削減に大方の合意が得られる見通しが立ったところに、これを反故にした上での、削減幅の拡大である。
 債務を削減してもギリシャの経済成長、財政赤字の是正は無理ではないか。財政赤字削減には経済成長による税収増が重要だが、債務を削減してもユーロを採用しているギリシャは為替レートの減価による輸出振興ができず、経済成長は難しそうだ。 解決策は、大不況と、大デフレによる「実質」為替レートの引き下げである。しかし、大不況は、さらに財政を悪化させることになるという悪循環に陥る。


(2)当事国の政治的実行力
 論点(2)。10月31日から2週間で、ギリシャとイタリアの首相が辞任、新首相が選出されることになったが、これで、この2カ国の国内政治の混乱は収まり大連立が粛々と財政再建に向かうのか。両国の新首相が、経済学者であり、テクノクラートであるというのはプラスでもあり、マイナスでもある。もちろん、両首相とも、財政危機や信用不安についての、経済学の論理、経済学的整合性については、十分理解していると考えられる。しかし、政治的な大連立を維持できるかどうかは不透明だ。
 すでに、ギリシャでは大連立に暗雲が立ち込め始めた。11月14日になり、ギリシャの野党党首が、IMF、EU、ECB(トロイカ)が要求する緊縮財政政策を支持しないと述べ、欧州委員会が要求する書面での支持表明を拒否したという報道がある。これが正しければ、12月中旬までにEU/IMFの第一次支援、第6次融資の支援を引き出すことは不可能になり、ギリシャは「非自発的」なデフォルトに発展する可能性が高まる。

(3)ECBは国債の無制限購入に踏み切れるか
 論点(3)。究極の解決策はなにか。現在のユーロ圏全体の危機を回避するためには、解決策は一つしか残されていない。ここまで拡大してしまった債務危機に対する抜本的な解決策は、ECBによる財政難に陥った国の国債の無制限購入以外に見当たらない。そう宣言するだけで、市場が安心する効果も見込める。
 フランスはECBによる国債買い入れの増額、またはEFSFに銀行免許を与え、ECBから低利で借り入れて国債を買い入れるよう求めたが、ドイツとECBが反対し、検討項目からはずされた。ECB総裁には11月1日付でマリオ・ドラギ伊中銀総裁が就いた。
 そしてこの究極の選択を左右するのが、独仏の対立である。これまでフランスは何としても、ギリシャの一方的不履行を回避し、ギリシャ支援を継続するよう主張してきた。その理由として挙げるのは、すでに想定されているとはいえ、実際にギリシャが債務不履行となった場合、何が起こるかわからない、不確実性が大きい時にリスクはとれないという点である。モラル・ハザードを引き起こすといって、債務不履行や債務削減を実施すると、リーマン・ブラザーズを破綻させた結果、巨額のCDSの引き受け手であったAIGの経営危機が表面化して、金融システム危機が起こった時と同じ過ちを犯しかねないとしている。
 これに対してドイツは、ギリシャの不履行が銀行の資本不足を引き起こすことは認めるものの、ポルトガル、スペイン、イタリアの国債価格暴落につながるとは考えていないという。万が一波及しても、それはその国の財政赤字削減の努力不足、ファンダメンタルズが悪いからだと主張。自分たちの税金が他国の救済に使われ、結局焦げ付いて返済されないという不安を持つ国民感情も反映し、両国の主張は平行線をたどったという。
 11月に入り、フランスの国債金利も上昇している。今後の独仏の政治的妥協を探る動きに新しい展開があるとも思えない。ギリシャの無秩序国債不履行などで、ユーロ圏が本当に危機に瀕するような状態になってめて、「最後の貸し手」の究極の選択がドイツで討議されるであろう。またしても、後手後手の対応になると思われる。
(2011年11月16日執筆)

伊藤 隆敏(いとう・たかとし)
一橋大学経済学部卒業。ハーバード大学大学院経済学博士課程卒業(Ph.D.)。ミネソタ大学経済学部助教授、同准教授、一橋大学経済研究所助教授、同教授、東京大学先端科学技術センター教授を経て、2004年より現職。近著に、『日本経済の活性化―市場の役割・政府の役割』共編著(2009年)、日本経済新聞出版社、ほか。

このページのトップへ

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

解説解題 加藤 裕己(本誌編集主幹)

 伊藤元重氏の問題提起では、ギリシャ等の国債をユーロ圏の北側の国々の銀行が大量保有した要因、財政危機とグローバルマネーの関係などが問題点としてあげられ、共通通貨制度の持つ課題が指摘されている。最適通貨圏理論の観点から共通通貨をみた場合、問題点として為替レートによる調整機能の喪失、それに代わるインフレ調整の困難さ、労働移動に伴う問題が指摘され、本格的な財政統合の必要性について言及されている。リーマンショック後のグローバルマネーの安全資産選好と各国の経済情勢が問題の要因として指摘され、これまで取られてきた先送り的な対応策では抜本的な解決とはならないことが述べられている。
 伊藤元重氏、竹森俊平氏ともにユーロを最適通貨圏理論から考えた場合制度的欠陥があり、対処が難しいことを指摘している。伊藤元重氏は、共通通貨で為替調整が行えない状況下では、インフレ格差による実質為替レートの変化での調整の可能性があるが、実際にはユーロ圏の北南諸国間でのインフレの状況は逆に問題を拡大させたと指摘している。竹森俊平氏は、北側の金融機関がギリシャ国債などの保有を増加させる要因として、金利差の存在をあげている。労働移動に関しても、伊藤元重氏は低賃金国から高賃金国へ労働移動が生じて相互にメリットを受けるよりも、生産性の高い北側の国々に人材が集まって経済活動がますます北側に集中したことと述べている。竹森俊平氏は、貧しい地域から豊かな地域への労働移動が起こりにくいことを指摘している。また、竹森俊平氏は、財政統合に関しては、ドイツが東西統合での財政負担の経験から財政支援に消極的なことを指摘し、南側の国々の好調さは財政支援の代わりに北から南への民間資本移動がインフレ格差により積極化したことを要因として挙げている。これに対し伊藤隆敏氏は、今回の金融危機についてギリシャ問題での発生から最近に至るまでの時間的経過をたどりながら、問題点を整理している。ギリシャ問題では、税収基盤の弱さ、制度面での問題が、アイルランドでは住宅バブルの崩壊と銀行への資本注入による財政赤字の急拡大が指摘されている。
 今後のユーロ危機の行方について、伊藤元重氏は問題の波及を防ぐためには、南側の国への財政支援と国債の買い支えを挙げ、財政統合という本格的な対応がない限り解決が困難であるとしている。伊藤隆敏氏は、10月の包括戦略の決定を踏まえ、ギリシャ国債の50%の債務削減の実現可能性、ギリシャ、イタリアの新首相による大連立と財政再建の困難さを指摘し、ECBによる財政難にある国の国債の無制限購入を提言している。竹森俊平氏はユーロ危機への対応の問題点として、これまで南側の国々の問題が返済不能の危機であることを見誤り、流動性供給増加により先送り的に対応したこと、銀行への資本注入を怠ったことにあるとし、10月下旬に決定された新政策に関しても、イタリアにまで不安が広がりつつある状況では、遅すぎたのではないかと指摘している。これまでの先送り的な対応策が問題を長期化させ、対象国の範囲を広げ、解決策としての財政統合や国債の買い入れも、資金提供国の反対が多く難しいことなどが共通して示されている。
 ギリシャに端を発した財政問題はユーロ危機にまで広がった。当初は、ギリシャの財政規律上の問題として認識され、竹森俊平氏の指摘にあるように流動性の供給による対応が行われたが、問題の本質は返済能力にあった。伊藤元重氏が述べているように共通通貨という枠組の下でグローバルマネーがリーマン危機後に安全資産選好を強めてきたことが、南側の国々の国債を保有する金融機関の不良債権問題の深刻化を招いた。ギリシャの問題はギリシャ国内の問題にとどまら
ず、ユーロ全域、ひいては世界経済全体のリスク要因となりつつある。ギリシャ、イタリアでの議会に基盤を持たない新政権が抜本的な財政再建を実現できるかは不確実であるほか、財政赤字の削減自体が経済情勢の悪化や国内の反発を招き、財政赤字の削減をかえって遅らせるという事態も懸念される。根本的な対応策個別の国の対応を待つだけではなく、ユーロ圏での財政面での統合を進めるか、伊藤隆敏氏が指摘するように財政難にある国の国債をECBが無制限に買い入れるしかないであろう。今後、ユーロを存続させていくためには、多くの困難を伴うことが必至であっても、かつて掲げた通貨統合実現のための高い政治目標を堅持しつつ、南側の国々の財政再建と北側の国々からの財政支援を着実に進めることが必要である。

加藤裕己(かとう・ひろみ)本誌編集主幹
1974年東京大学経済学部卒。経済企画庁入庁。経済社会総合研究所総括政策研究官、内閣府官房審議官(経済財政分析担当)、日本エネルギー経済研究所理
事を経て、2006年より東京経済大学経済学部教授、現在に至る。2006年より本誌編集主幹。著作に『日本経済読本』(共編著)[2007]東洋経済新報社、等。

このページのトップへ

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

参考資料[PDF]

図表1 ユーロ危機を巡る主な動き



図表2 ユーロ圏主要国の国債利回り(10年)の推移



図表3 PIIGS諸国の国債保有主体


図表4 主要国金融機関のPIIGS諸国向け与信残高

 









 

 


図表5 欧州主要行のCDSプレミアムの推移


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


≪関連頁≫
「ユーロ危機:何を学ぶのか?」(対談シリーズ第70回2013年1月)
   ジャン ピサニ・フェリー(ブリューゲル研究所所長)
   グントラム ヴォルフ(ブリューゲル研究所次長)
   伊藤元重(NIRA理事長)

・「金融市場が問う日本の信用」(対談シリーズ第66回/2011年11月)
   森田長太郎 バークレイズ・キャピタル証券ディレクター/チーフ・ストラテジスト
   伊藤元重 NIRA理事長

・「歪みが制御不能になる前に財政の再建を」(オピニオンペーパーNo.5/2011年10月)


※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。 E-mail: info@nira.or.


このページのトップへ