FOREWORD

意見の多様性を広く知って頂くために

本書「わたしの構想」は、人々の意見の多様性を広く知ってもらうことを意図して、今日の重要な課題についての「問い」を識者に投げかけ、凝縮した文章に編集し伝えています。90からなる識者のメッセージには、独自の情報、経験、価値観の違いが映し出され、一つひとつの意見が専門家ならではの深い洞察に満ちています。

読者の皆さんには、自分なりに考えを膨らませ、思いを巡らせていただき、そして、共感できると思われる部分や新しい見方を発見し、それを自分なりに解釈していただければ、編者としてこれに勝る喜びはありません。

(公財)NIRA総研会長 牛尾治朗

ちゅうかく ー そう【中核層】

日本が直面する課題に取り組んでいく人々は、どのような人たちであろうか。ここでは、新たな人間像として「中核層」という概念を提唱したい。この「中核層」とは、これまでもしばしば語られてきた「中間層」とは異なる。「中間層」とは文字通り「中間(middle)」であり、「上」でもなければ「下」でもないという消極的な定義に基づくものである。これに対し、「中核層」とは上下の階層や所属する組織との関係で定義されるものではない。自らの生き方を主体的に選択し、それゆえに積極的に社会を支えようとする自負と責任感をもった人間像こそが、「中核層」 である。それはまさしく社会の「中核(core)」を担う存在である。

─『中核層の時代に向けて』より

CONTENTS

PART1

中核層として知っておきたいこと

イノベーション

  • CHAPTER01

    構想力に科学が挑む

  • CHAPTER02

    中学・高校の科学技術教育

  • CHAPTER03

    技術と社会の対話に向けて

  • CHAPTER04

    脱・停滞へのイノベーション

  • CHAPTER05

    人工知能の近未来

  • CHAPTER06

    金融大変革、FinTech

PART2

中核層として知っておきたいこと

つながる

  • CHAPTER07

    公的年金の世代間公平性を考える

  • CHAPTER08

    女性就労とオランダモデル

  • CHAPTER09

    高齢者が働く社会

  • CHAPTER10

    人口減少時代の地域の強み

  • CHAPTER11

    グローバル都市 東京

  • CHAPTER12

    コーポレートガバナンス・コード

PART3

中核層として知っておきたいこと

社会の問題

  • CHAPTER13

    岐路に立つユニバーサルサービス

  • CHAPTER14

    再生可能エネルギーの将来性

  • CHAPTER15

    所得格差と税制

  • CHAPTER16

    本腰の医療改革

  • CHAPTER17

    今こそ問う、日本の財政規律

  • CHAPTER18

    日中関係を問う

FOREWORD

CHAPTER01

構想力に科学が挑む

日本の変革をけん引する力が求められている。
未来を切り開く画期的なイノベーションを起こす構想力は、
どのようにすれば高められるのか。

「日本人の構想力・発想力を高めるために、何が必要か」

  • 「構想力・発想力は「対話」から生まれる」

    ・・・・・・対話を働く場で成功させるには、(中略)さまざまな発想を持つ人々が対等に話し合い、一緒に答えを作っていける場をつくること。(中略)もう1 つは、対話を促すための適切な「問い」を立て、目的を共有して、具体的な答えを作り合うこと。・・・

    三宅なほみ東京大学名誉教授・東京大学大学総合教育研究センター 特任教授

  • 脳は、環境の変化や異質性に反応して機能する・・・

    築山 節(公財)河野臨床医学研究所北品川クリニック・予防医学センター 所長

  • 企業が構想力や発想力のある人材を必要とするならば、社外から連れてくるべきだ。・・・

    三品和広 神戸大学大学院経営学研究科 教授

  • これからは、組織の「分化」に力を入れるべきだ。・・・

    太田 肇 同志社大学大学院総合政策科学研究科 教授

  • 大事なのは、一般的な知識や経験を蓄えること。・・・想定外の機会を生かすことも大切だ。・・・

    宮永博史 東京理科大学大学院イノベーション研究科MOT専攻 教授

CHAPTER05

人工知能の近未来

いずれは人間を超えるともされる人工知能(Artificial Intelligence, AI)。
今後5 ~ 10年で、われわれの生活・社会はどう変わるのか。
進化を続けるAIに人間はどう向き合えばよいのか。

「人工知能はわれわれの近未来をどう変えるのか」

  • 「ロボットに代替されるホワイトカラー」

    ・・・・・・ 大企業は2 つの道を迫られる。1つは雇用を守り国際競争力を失うか。もう1つはその業態のボリュームゾーンの雇用を人工知能で中抜きするかだ。・・・

    新井紀子国立情報学研究所 情報社会相関研究系 教授・社会共有知研究センター長

  • 成熟し停滞していた産業が再び活性化される・・・

    小林雅一 株式会社KDDI総研 リサーチフェロー

  • AIは非常に大きい産業力になる・・・

    松尾 豊 東京大学大学院工学系研究科 特任准教授

  • より便利で豊かな生活が実現する。・・・

    塚本昌彦 神戸大学大学院工学研究科 教授

  • AIは人間の能力を超える・・・

    佐倉 統 東京大学大学院 情報学環長

CHAPTER06

金融大変革、FinTech

金融サービスとITを融合させた「FinTech(フィンテック)」の興隆が著しい。
出遅れ気味の日本は、金融の高い公共性を踏まえつつ、新たな潮流への対応が
求められている。

「わが国のFinTech発展のために、何をすべきか」

  • 電子決済への信頼性を高めることが鍵となる。・・・

    エレナ・ワイズ ペイパル・ジャパン カントリーマネージャー

  • 安全・安心を確保しながら、いかなる付加価値ををつけるかが鍵だ。・・・

    古閑由佳 ヤフー株式会社 決済金融カンパニー 金融事業本部 本部長

  • 「金融機関こそフィンテックに学んで挑戦を」

    ・・・・・・ フィンテックとは、ITベンチャー企業による金融分野における新しいソリューションのことだ。インターネットを活用したBtoCのサービスを中心に、新しいビジネスモデルが次々と生み出されている。これらの新たなビジネスと伝統的な金融機関とで大きく異なるのは、IT 投資の考え方だ。・・・

    岩下直行日本銀行 金融機構局 金融高度化センター長 兼 決済機構局 FinTechセンター長(当時)日本銀行 決済機構局 審議役 FinTechセンター長(現)

  • BtoB分野で堅牢かつ利便性の高いシステムを構築していく・・・

    太田 純 株式会社三井住友銀行 取締役兼専務執行役員

  • 急速な変化に対応するためには、細かなルールを作るよりも、実現すべき結果をプリンシプル・ベースで押さえることが適当だ。・・・

    森下哲朗 上智大学法科大学院 教授

CHAPTER08

女性就労とオランダモデル

オランダでは、パートタイム労働とフルタイム労働の待遇を均等化し、
また、労働時間の短縮・延長を労働者が申請する権利を認めるなど、労
働時間の選択の自由度を高めたことが、女性の就業率アップに貢献して
きたとされる。オランダのパートタイム雇用の枠組みは、わが国の女性
就業の促進に有効か。

「オランダのパートタイム雇用モデルはわが国にも有効なのか」

  • オランダでは、働く時間が短くても活躍する機会は豊富だ。・・・

    権丈英子 亜細亜大学経済学部 教授

  • 多様な働き方が可能なパートタイム雇用モデルは、大いに参考になる。・・・

    八代尚宏 昭和女子大学グローバルビジネス学部 特命教授

  • オランダ型のパートの均等待遇で社会を変える。・・・

    マルセル・ウィガース ランスタッド株式会社 代表取締役会長兼CEO

  • 日本でも均等待遇は実現すべきだが、現実には困難だ。・・・

    水島治郎 千葉大学法政経学部 教授

  • 「働き方をもっと柔軟に」

    ・・・・・・ オランダの労働市場のルールはオランダの歴史・社会・文化の産物であり、その文脈を抜きにしてパート労働という要素だけを別の国に移植することは適切とはいえない。ただし、より包括的な改革パッケージの1つとして取り入れるなら、うまく機能するだろう。・・・

    デイヴィッド・バーンズIBM Corporation 人事政策担当副社長

CHAPTER10

人口減少時代の地域の強み

大都市に人口や経済が集中する一方、人口の急速な減少に悩む地域
では、地域社会の維持が困難になりつつある。都市と比べたときの
地域の「優位性」を明らかにすることが、地域と都市の役割分担を
問い直し、地域の今後の戦略を考える上で重要となる。

「都市と比べた地域の『優位性』とは何か」

  • 「大田園回帰の時代を目指せ」

    ・・・・・・ 若者が地方に向かうのは、人との実体的なつながりや、自分の居場所を求めているからだ。かつては「うっとうしい」「遅れている」といわれた集落のネットワークやコミュニティーを「温かい」と感じ、自立して働く地域の人々の姿を「かっこいい」と感じている。・・・

    小田切徳美明治大学農学部 教授

  • セーフティネットの役割を果たし得ることが、地方の価値である。・・・

    寺田典城 参議院議員、前秋田県知事

  • 産業の持続性を担保してくれるのは、地域のコミュニティー力やネットワーク力の強さだ。・・・

    内山 節 NPO法人森づくりフォーラム 代表理事

  • ひらめきやアイデアなどの「感性」と、地域資源を結びつけることができれば、地域経済は十分に存立可能だ。・・・

    松原 宏 東京大学大学院総合文化研究科 教授

  • サステナブルな暮らしはゆとりがあり魅力的なものである。・・・

    セーラ・マリ・カミングス 株式会社文化事業部 代表取締役、NPO法人桶仕込み保存会 代表理事

中核層への90のメッセージ

三宅 なほみ╱築山 節╱三品 和広╱太田 肇╱宮永 博史╱中村 道治╱森本 信也╱松本 紘╱門田 和雄╱清水 亮╱妹尾 堅一郎╱夏野 剛╱横山 禎徳╱藤垣 裕子╱米本 昌平╱金出 武雄╱金丸 恭文╱國井 秀子╱木川 眞╱山村 俊夫╱新井 紀子╱小林 雅一╱松尾 豊╱塚本 昌彦╱佐倉 統╱エレナ・ワイズ╱古閑 由佳╱岩下 直行╱太田 純╱森下 哲朗╱小塩 隆士╱宇佐美 誠╱牧原 出╱宮本 太郎╱白波瀬 佐和子╱権丈 英子╱八代 尚宏╱マルセル・ウィガース╱水島 治郎╱デイヴィッド・バーンズ╱上田 研二╱廣瀬 通孝╱ケイトリン・リンチ╱八代 充史╱大内 伸哉╱小田切 徳美╱寺田 典城╱内山 節╱松原 宏╱セーラ・マリ・カミングス╱藤村 龍至╱門脇 耕三╱市川 宏雄╱遠藤 薫╱レジス・アルノー╱伊藤 邦雄╱斉藤 惇╱川村 隆╱マッツ・イサクソン╱柴田 拓美╱北村 亘╱矢作 弘╱川本 裕子╱松村 敏弘╱中川 雅之╱和田 武╱池辺 裕昭╱八田 達夫╱澤 昭裕╱藤野 純一╱近藤 絢子╱森信 茂樹╱佐藤 主光╱小林 慶一郎╱吉川 洋╱堀田 聰子╱赤塚 俊昭╱土屋 了介╱川渕 孝一╱加藤 淳子╱井堀 利宏╱与謝野 馨╱江利川 毅╱北岡 伸一╱ロデリック・マクファーカー╱津上 俊哉╱エズラ・ヴォーゲル╱川島 真(掲載順)

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日本の課題を読み解くわたしの構想I

NIRA総合研究開発機構 (編)

定価:900円+税 B5判 144ページ
発行年月:2016年6月
ISBN:978-4-7887-1454-0

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