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NIRA政策提言ハイライト

再生可能エネルギーに立ちはだかる壁

NIRA政策提言ハイライト 2013/7発行

1.太陽光が先導する再生エネ
 2012年7月の「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(通称「FIT法」)施行から1年が経過した。同法は、再生可能エネルギー(以下、「再生エネ」)普及の大きな原動力となっており、これまでのところ、再生エネ導入は順調に拡大しているように見える。2012年4月末の電気事業者1及び自家発電事業者その他による再生可能エネルギーの認可出力の合計が太陽光発電85MW、風力発電2,419MW2であったのに対して、同法施行以降、2013年2月までの8カ月間に太陽光12,258MW、風力622MW3の発電設備が認定4された(図表1参照)(ただし、2013年2月末時点の実稼働出力は、太陽光1,256MW、風力63MWである。)。NIRA政策レビューNo.57「再生可能エネルギーの将来性」で新原が述べたとおり、太陽光が先導し、風力が後から伸びてくる構図である。しかし、現在までの主力となっている太陽光及び風力は、同レビューで澤が指摘したとおり、その日の気候条件により発電量が大きく左右される不安定な電源、いわゆる間欠性電源であり、安定的な供給源たり得ない。


2.北海道電力の現状が示唆する再生エネ導入量の限界

 今、送電網が受け入れることができる間欠性電源の容量が限界に達しつつあり、これが再生エネ普及の大きな壁となっている。北海道電力(以下、「北電」)は、2013年4月、太陽光発電の容量が、特別高圧(出力2,000kW以上)で400MW、高圧(出力500kW以上2,000kW未満)で700MW以上となった場合、北電の送電網では受け入れることが困難となると発表した5,6。また、北電は、かねてより風力発電の受け入れ可能容量を560MWとしている7
 この受け入れ可能容量の限界まで太陽光および風力を導入した場合、再生エネ比率はどれだけ高めることが出来るのであろうか。図表2の北電管内の発電設備容量を基に、発電量ベースでの電源構成比率を推定すると、北海道においては、太陽光3.0~3.5%、風力2.3~2.5%、合計で5.3~6.0%までしか導入できないという計算になる8

 環境省によれば、日本の陸上風力発電の適地は49%が北海道に集中しているとされている9。つまり、北海道での風力開発が日本の再生エネ活用の一つの肝となるが、上記試算結果は、その期待に応えるために十分な数字といえるものではない。このままでは、北海道が有する風力発電のポテンシャルの1%も活用できないということになる。
 では、この問題を克服する方策はあるのだろうか。


3.再生エネ活用へ向けて
 NIRA対談シリーズNo.65「電力供給システムは垂直統合型から構造分離型へ」において、山田は、太陽光や風力のような間欠性電源をより有効に活用するためのいくつかの方策を示した。方策の一つにはバッテリーとの組み合わせが考えられるが、バッテリーは高額であり、発電量の7~8%を風力が占めるドイツではバッテリーに頼らず送電網で制御していると指摘した。また、同対談で伊藤は、風力等再生エネの有効活用には発送電分離が必要であることを確認した。
 太陽光/風力発電の導入が進むのは、ドイツだけではない。デンマーク、ポルトガル、スペインは、総発電量の15%以上をこれら間欠性電源から取り出している。また、アイルランドでも総発電量の10%弱を太陽光/風力が占める(図表3参照)。これらの国は、発電規模において、北海道より大きいものや小さいものまで様々であり、規模の大小が問題ではないことがわかる。

 もちろん、北海道は、本州との連系施設が限られているという事情はある。欧州各国は、網の目のような送電網を有しており、電力を容易に輸出入できるから可能なのだとする論調もある。これについては、デンマークやポルトガルについては事実かもしれない。しかし、アイルランドやスペインの電力輸出入の総発電量に対する割合は、北電が本州の電力各社と送受電した電力量と総発電量の割合と比較しても決して高いとはいえない(図表3右2列)。つまり、北電だけが特別な環境に置かれているわけではないのである。現時点の北電の送電網管理技術ではこれ以上の間欠性電源導入限界量の拡大は無理だとしても、技術向上により、今後さらに導入量限界量を上昇させることは可能であると考えるべきであろう。
 この問題は、北電だけのものではない。たまたま再生エネ接続の申請が他の地域よりも進んだ北海道で先に顕在化したに過ぎない。日本の全ての送電網管理者は、今一度、再生エネ受け入れのために何が必要かを学ぶ必要がある。そのためには、上記欧州諸国の送電網管理技術を真摯に学ぶことも必要だろう。加えて、発電技術、蓄電技術の向上も欠かせない。そして、来るべき発送電分離の後に、再生エネを最大限に導入することが出来る世界最高の電力システムが花開くことを期待したい。

(注)
1  一般電気事業者、卸電力事業者、特定電気事業者、特定規模電気事業者の合計。自家発電事業者、卸供給事業者等は含まれない。
2  その他、水力48,418MW(大規模水力を含む)、地熱537MWが認可されている。
3  その他、水力28MW、地熱4MW、バイオマス147MWが認定されている。
4  厳密には、「認可」と「認定」では、段階が異なる事に注意が必要。
5  北海道電力2013年4月17日プレスリリース参考資料参照
6  加えて、同年7月、北海道電力では一部地域で再生エネの接続が限界に達したとの報道もある。日経新聞2013年7月19日「北海道電、再生エネ普及へ高い壁」参照。
7  本州への連系活用による追加分200MWを含む。北海道電力HP「風力発電連系可能量の再評価結果(2008年3月)」参照 
8  筆者試算に基づく。電源比率は、想定総発電量に対する各電源の想定発電量の占める割合とした。上限値は原子力発電の利用を想定した値であり、下限値は原子力発電の利用を想定しない場合である。各電源の想定発電量は、電源出力×24時間×365日×稼働率とした。稼働率は、太陽光発電14%、風力発電20%とし、水力発電、火力発電、原子力発電については、2013年3月末現在の認可出力と2012年度の発電実績に基づき推定した(原子力発電の利用を想定しない場合。原子力発電を利用する場合は、2010年度の実績値を用いている)。
9  環境省「平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書」(2011年4月)参照。同報告書においては、北海道における5.5m/s以上の陸上風力発電導入ポテンシャルは13,966万kWとされている。

西山裕也 NIRA主任研究員


<リンク>
再生可能エネルギーの将来性
(NIRA政策レビューNo.57/2012年7月)

電力供給システムは垂直統合型から構造分離型へ
(NIRA対談シリーズNo.65/2011年10月)

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