利用方法

日本を動かす知をつなぎ、政策課題を論じ、ビジョンを提示するシンクタンク

トップ > 研究の成果と課題の発信 > NIRAオピニオンペーパー > 「AI人材」育成の真価は課題設定能力―シリコンバレーからAI革命の本質を踏まえて―

NIRAオピニオンペーパー

「AI人材」育成の真価は課題設定能力―シリコンバレーからAI革命の本質を踏まえて―

NIRAオピニオンペーパーNo.51 2020/07発行
櫛田健児(スタンフォード大学アジア太平洋研究所リサーチスカラー)

 日本ではAI人材の教育が注目されている。政府は「AI戦略2019」を発表し、一部の大企業もAI人材育成に力を入れ始めた。新型コロナウイルスによって世界経済が大不況に突入する2020年は、松下幸之助が「不況時こそ人材育成の好機」という言葉を残しているとおり、体力のある大企業にとって、人材育成に力を入れるタイミングだ。
 しかし、AI人材育成の取り組みは、「AI人材」に対する正しい理解がなければ多大なリソースの無駄となる。日本が最も必要なAI人材は、世界のトップ企業のように優れた基盤のAIツールを開発する人ではなく、AIツールを使いこなす「リードユーザー」となるための経営層と現場の従業員だ。そのためには、文系の人も理系の人も「課題設定能力」を身につけなければならない。
 「課題設定能力」とは、ペインポイント(課題)を、徹底的にユーザー目線で深掘りする能力である。では、「課題設定能力」をどう養うべきなのか。一つは、トップ大学が社会人向けの本質的な教育を企業相手に行っているExecutive Educationにより、外からみた視座、徹底したペインポイント発掘、そしてAI活用や基本的なデータサイエンス経営を学ぶことである。さらに、産学連携による共同研究や人材循環を通じ、トップ研究者に産業界の問題意識を共有させることで、意味のある価値を共に作り出せる可能性が高まる。政府や企業は、課題設定能力に重点を置き、「AIを活用できる経営人材こそ日本に必要なAI人材」という視座で人材育成に取り組むべきだ。

○序論:注目される「AI人材」と育成計画
○そもそも現在の「AI」とは:「知能」というラベルの誤解と危険
○AIによる新しい価値創造のメカニズム、具体例
○新技術の歴史と生産性:補完関係にある別の技術と、活用法の開発と発見
○AIでの価値創造:補完関係となっている別の技術やビジネス
○日本ではどのようにAIは価値になりうるか:プロセスの仮説
○日本がリードユーザーになるポテンシャル
○真のAI人材は「課題設定能力」が高い人、ペインポイントの考え方
○トップのAI人材を作り出す産学連携の仕組み
○大学での「AI人材」育成の最前線、シリコンバレーとアメリカトップ大学
○AI人材の議論の根底:「価値」を作ること、IT革命の本質
○まとめ

<関連頁>
日本の「ユニコーン」不足はバッドニュースか?―歴史的な制度発展の観点から考察―(NIRAオピニオンペーパーNo.39)

※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp

このページのトップへ