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わたしの構想

アフリカ経済の今

わたしの構想No.43 2019/8発行
識者:ソロモン・K・マイナ,M. B. S.(駐日ケニア共和国 特命全権大使)、ジャーマン・カフル(国際金融公社 アフリカ・ラテンアメリカ テレコム・メディア・テクノロジー投資 地域リーダー)、田中秀和(レックスバート・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役)、アシュラフ・パテル(インスティテュート・フォー・グローバル・ダイアログ シニアリサーチアソシエイト)、横山 正 アフリカ開発銀行 アジア代表事務所所長*)
*原稿掲載順、識者肩書は2019 年7月時点
企画:東 和浩(NIRA総研 理事、株式会社りそなホールディングス取締役兼代表執行役社長)

アフリカ経済の今
アフリカ地域が世界から注目されている。ICT(情報通信技術)を中心に最先端技術の導入が進み、「リープフロッグ」とも呼ばれる経済の活況に沸いているのだ。二〇一九年五月には「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)」が発効。アフリカ単一市場の形成をめざす。 持続的成長の維持が期待される中、二〇一九年八月末には、横浜市で第七回アフリカ開発会議(TICAD7)が開催される。この機会にアフリカの今を知り、日本との新たな関係構築についての考察を深めたい。

 わたしの構想No.43「アフリカ経済の今」PDF    ■ 英文版PDF

 企画に当たって
東 和浩(NIRA総研 理事、株式会社りそなホールディングス取締役兼代表執行役社長)
「アフリカ経済の飛躍―日本に求められる三つの課題への貢献」

Keywords……………アフリカ経済、リープフロッグ、ICTを用いたイノベーティブなサービス、アフリカの多様性、アフリカ開発会議(TICAD)、日本の責務、日本にも学びと刺激

 識者に問う
「アフリカ経済の今」

デジタル技術に沸くアフリカ経済の今をどうみるか。
さらなる発展のために必要なことは何か。

1 ソロモン・K・マイナ,M. B. S. 駐日ケニア共和国 特命全権大使
  「リープフロッグで、SDGs 達成をねらう
  Keywords……リープフロッグ、金融サービス、e ガバメント、eコマース、ICT 分野への日本の投資

2 ジャーマン・カフル 国際金融公社(IFC) アフリカ・ラテンアメリカ テレコム・メディア・テクノロジー投資 地域リーダー
  「新機軸となるインフラ・シェアリング
  Keywords……インターネット普及の促進、多大な投資が必要となるデジタル・インフラ、インフラ・シェアリング

3 田中秀和 レックスバート・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役
  「自国での技術蓄積がアフリカにさらなるイノベーションを生む
  Keywords……新技術で革新的サービス、技術者の実務経験、先進国との協力、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)

4 アシュラフ・パテル インスティテュート・フォー・グローバル・ダイアログ(IGD) シニアリサーチアソシエイト
  「製造業の生産性向上がカギを握る
  Keywords……イノベーションハブの始動、ICT によるサービス化の急進、未発達な製造業

5 横山 正 アフリカ開発銀行 アジア代表事務所所長*
  「日本はICT でアフリカとのウィンウィン関係を飛躍させよ
  Keywords……膨大な開発課題がICT 活用のチャンスに、ICT 大国地域の可能性、日本に期待されるビジネス展開

インタビュー実施:2019 年6 月~7月
インタビュー:川本茉莉(NIRA 総研研究コーディネーター・研究員)、渡邊翔太(同)

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 識者が読者に推薦する1冊(推薦図書リストはこちらから)

ソロモン・K・マイナ,M. B. S.氏
Richard Heeks〔2017〕Information and Communication Technology for Development (ICT4D), Routledge

ジャーマン・カフル氏
World Bank Group〔2016〕World Development Report 2016: Digital Dividends http://documents.worldbank.org/curated/en/896971468194972881/pdf/102725-PUB-Replacement-PUBLIC.pdf

田中秀和氏
服部正也〔2009〕『ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版』中公新書

アシュラフ・パテル氏
Carlos Lopes〔2019〕Africa in Transformation:Economic Development in the Age of Doubt, Palgrave Macmillan

横山 正氏
アフリカ開発銀行ウェブサイト
「Information & Communication Technology」(ICT 分野への取り組み関連ページ)
https://www.afdb.org/en/topics-and-sectors/sectors/information-communication-technology

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 企画に当たって

東 和浩(NIRA総研 理事、株式会社りそなホールディングス取締役兼代表執行役社長)
「アフリカ経済の飛躍―日本に求められる三つの課題への貢献」

「リープフロッグ」の発展を遂げるアフリカ
 近年、アフリカ経済は大きく成長している。二〇〇〇年代初頭以降のドラスティックなアフリカの発展は、「リープフロッグ」と呼ばれている。リープフロッグとは、技術進歩を背景に、人びとの暮らしや産業の水準が段階を踏まずに一足飛びで進歩する現象を示す言葉だ。
 中でも、ICT技術を用いたイノベーティブなサービスが、アフリカで次々と登場している状況には、目を見張るものがある。ケニアでは、二〇〇七年に始まったM-Pesaというモバイル送金サービスの利用が急拡大している。この新たなサービスのおかげで、人びとは銀行口座をもたなくても、遠隔地間での送金や決済が可能となり、地域の金融アクセスは大きく改善した。また、同サービスを基盤に、銀行との連携融資や貯蓄口座の提供などのサービスも始まり、M-Pesa の登録ユーザー数は、二〇一二年の一五〇〇万人から、二〇一七年には二七〇〇万人に急増している。このできごとは、金融アクセスの困難さが成長の足かせといわれていたアフリカで、デジタル技術がその課題を克服した成功例といえる。
 デジタル技術に沸く「アフリカ経済の今」をどうみるか、また、アフリカの飛躍的な成長を持続的なものにするために必要なことは何か。五人の識者に話を伺った。

デジタル技術が解決する開発課題
 識者はみな一様に、ICTで躍動する今のアフリカを口にする。アフリカでは、ICTを使った多様なサービスが提供され、その普及のスピードは、先進国よりも速い。世界の成長から取り残されているといわれていたアフリカに、デジタル技術がこれほどの急速な変化をもたらすことができたのは、なぜだろうか。識者の指摘からは次のような点が浮かび上がる。
 一つには、課題を解決する上で、ICTやデジタル技術の導入がドラスティックな効果をもつことだ。アフリカ開発銀行の横山正氏が指摘するように、アフリカ大陸は広大で、人口密度は日本の八分の一程度であり、物流や通信、サービス供給網の整備は物理的に容易でない。だが、こうした厳しい環境だからこそ、道路や橋など既存の物流インフラを必要としないドローンは威力を発揮することができるし、また、住所を特定できない生活環境にこそ、モバイルは不可欠な手段となりうる。横山氏は、アフリカにはデジタル技術に対する大きな需要が潜在的にあると指摘する。
 もう一つには、先進国と積極的に協力するスタンスが革新的なサービスの誕生を可能にしていることが挙げられよう。レックスバート・コミュニケーションズの田中秀和氏は、革新的なサービスの多くは、先進国と協力することで実現している、と述べている。アフリカ各地に創設されたイノベーションハブでは、ICTを活用したビジネスを起業する取り組みがさまざまな形で行われており、それが先進国との協業を後押ししている。

「リープフロッグ」を邪魔する三つの足かせ
 他方、アフリカが持続可能な発展を実現するには、さらなる取り組みも必要である。識者からは、インフラの整備、技術者の育成、製造業の生産性の向上が指摘された。
 国際金融公社(IFC)のジャーマン・カフル氏は、インターネットはデジタル経済の基盤であり、世界最低レベルのインターネット普及率を引き上げることが、アフリカにとって急務であると強調する。デジタル・インフラには多大な投資が必要となるため、基地局、回線などを複数の事業者が共同で使用するインフラ・シェアリングなど、新たなビジネスモデルの活用を提案している。
 田中氏が指摘するのが、現地の技術者の能力向上だ。アイデアだけでイノベーションを生むことは難しい。現場で技術を鍛えてはじめて、アイデアを実現する実力が持てる。実務経験を積んだ技術者の層を地道に充実させていくことが、遠回りかもしれないが、確かな道である。

求められる日本企業の関与
 これらの点は、いずれも早急に解決しなければならない重要な課題であることは間違いない。考えてみれば、これらは、いずれも日本が得意とする分野ばかりであり、日本企業が協力できる可能性も高いのではないだろうか。しかしながら、現在のところ、アフリカのICT産業に対する日本の関心は低調なままである。ケニア共和国特命全権大使のソロモン・K・マイナ氏は、日本はインフラや人材開発、農業、エネルギー等、旧来のODA分野でアフリカへの支援を行ってきたが、ICT分野では米国・中国・韓国等に後れを取っている、としている。
 もっとも、アフリカが発展を遂げているとしても、その一人当たりの所得は世界平均の二割に満たず、かつ、国によってその特徴は一様ではない。当然、ICT技術の活用・発展の仕方や、開発課題も異なる。それぞれの地域に関する正確な情報を把握し、相手や状況に応じた適切かつ的確なアプローチをしていくことが求められる。
 二〇一九年八月には横浜市で、日本政府が国連等と共催して「第七回アフリカ開発会議(TICAD7)」を開く。アフリカは、国連が強い関心を持ち、また、開発課題の解決に力を入れている地域でもある。アフリカの持続的な成長を支えることは、国連の主要な財政貢献国である日本の責務ともいえよう。
 何も恩恵を受けるのは、アフリカだけではない。成熟国としての鈍いスピードに慣れ切った日本人が、アフリカ出身のランナーのように快走する「アフリカ経済の『リープフロッグ』型成長」を学ぶことは、大いなる刺激を受けることになるのではないだろうか。

東 和浩(ひがし・かずひろ)
NIRA総合研究開発機構理事。株式会社りそなホールディングス取締役兼代表執行役社長。株式会社りそな銀行取締役会長兼代表取締役社長兼執行役員を兼務。

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 識者に問う
デジタル技術に沸くアフリカ経済の今をどうみるか。
さらなる発展のために必要なことは何か。

1 ソロモン・K・マイナ,M. B. S. 駐日ケニア共和国 特命全権大使
「リープフロッグで、SDGs 達成をねらう」


 ここ一〇~二〇年で、アフリカはリープフロッグ(一足飛び)の発展を遂げている。ICTの発展はこれまで先進国がリードしてきたが、いまやアフリカの多くの国が国際的ブロードバンドとつながり、世界から刮目されるほどになったと思う。大陸間を海底ケーブルでつなげることで、ケニアのインターネットの通信速度は日本とほぼ同じ速度を実現している。特にアフリカでICTによる発展が著しいのは、金融、政府、そして小売りの三つの分野だ。
 まず金融については、例えばケニアでICTインフラが非常に発展している。携帯電話プラットフォームでの金融サービスは著しく成長しており、M-Pesa での送金は広く使われている。モバイル決済を利用すれば、どこからでも容易にビジネスを行うことができる。例えば、普通の農家も農場から直接製品を販売し、携帯電話から支払いを受けることが可能だ。プラットフォームは人々の生活に重要な存在となり、すべての国民が経済に包摂されるようになる。モバイルをうまく使えば、少なくとも世帯の二~三%を貧困や飢餓から救うことができ、貧困からの脱却を目指すSDGsの達成にもつながる。
 二つ目は、eガバメントだ。これまで、アフリカ政府のサービス効率は、悪いといわれてきた。このため、行政の透明性・説明責任の強化や、行政サービスへのアクセスの向上を図り、政府への信頼を高めようと努めている。ケニアでは、国の発展計画「ビジョン二〇三〇」の一環で、さまざまな行政手続きがオンラインでできるよう、eシティズンのプラットフォームを立ち上げた。またそれに関連して、政府は、すべての行政手続きを一カ所で行えるHuduma(注)センターを、国内各地に設けている。
 三つ目はeコマースだ。オンラインショッピングの利用者が増え、特に新しい動きに敏感な中間所得層の生活習慣が大きく変わろうとしている。先進各国に比べアフリカのeコマースの市場規模はまだ小さいがゆえに、これから成長の余地が十分ある。
 日本はインフラや人材開発、農業、エネルギー等、多くの分野でアフリカを支援してきたが、ICTに関しては大きな足跡を残せていない。米国・中国・韓国等がすでにICTでアフリカ社会に変化を起こしている中、日本がこの重要な分野で出遅れているのは非常に残念だ。八月のTICAD7 では「アフリカの今」の状況を議論する。日本にはICTの直接投資に積極的に関わり、アフリカ経済に「プラグイン」していただきたい。

(注)スワヒリ語で「サービス」の意味。


ソロモン・K・マイナ,M.B.S.(Solomon K. Maina, M.B.S.)
外交官として三二年以上のキャリアを持つ。米オハイオ大学修士(国際関係学)。ケニア外務省入省後、イギリス、ウガンダ、パキスタン、イタリア各国の大使館にて参事官等を務める。その間、英オックスフォード大学にて外交について研修を受ける。国際問題局長、儀典長等を経て、二〇一四年より現職。東アフリカ最大の経済規模を持つケニアは、ICTの発展においてもアフリカをけん引する。

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デジタル技術に沸くアフリカ経済の今をどうみるか。
さらなる発展のために必要なことは何か。

2 ジャーマン・カフル 国際金融公社(IFC) アフリカ・ラテンアメリカ テレコム・メディア・テクノロジー投資 地域リーダー
「新機軸となるインフラ・シェアリング」


 デジタル経済の隆盛は、新興市場にとって一世一代の好機だ。成長、経済的移動性、イノベーション、雇用への新しい道が開かれる。全産業の開発モデルがすでにテクノロジーによる創造的破壊へと進んでいる。アフリカの課題は、デジタル経済の基盤であるインターネット普及率を速やかに引き上げることである。
 デジタル経済が進展すると、どのような未来を手にできるのだろうか。アフリカ全土における携帯電話の普及、ブロードバンド接続の改良、モバイルマネーの広がりは、人びとやビジネスに新たなチャンスをもたらす。携帯電話契約率は、いまや五三%に及ぶ(二〇一〇年は二一%)。モバイルマネーによる金融包摂は加速しており、モバイル口座を持つ人の割合は二〇一七年には二一%と、ここ三年間で倍に増えた。アフリカのeコマースは、推計で年率四〇%の急成長を遂げている。
 将来的には、モバイル・エコノミーは、二〇二二年までにアフリカのGDPの七・九%を超える見通しである。また、同年までの経済拡大のうち七五%は伝統産業からもたらされる。例えば農業では、技術改良で一〇~二〇%成長するだろう。
 しかし、デジタル経済の十分な恩恵を得るには、デジタル・インフラへの多大な投資が必要だ。アフリカのインターネット利用率は急増しているとはいえ、いまだ二四・四%と世界最低レベルで、世界平均五一%の半分に満たない。より多くの人がネット接続し、また高速サービスに切り替えることが、デジタル経済の成長への第一歩だ。そのためには、例えばインフラ・シェアリング(編者注)でブロードバンド企業やマーケット・プレイヤーを呼び込むなど、新しいビジネスモデルに頼ることが必要だ。
 世界銀行グループは、二〇一八年、アフリカ・ムーンショット・イニシアチブ共同設立者となり、このアジェンダ達成に向け、二五〇億ドルの支援を表明した。アフリカの全人口、企業、政府がデジタルでつながることが目標だ。また、デジタル・サービス各社と連携し、さまざまな発展途上国に技術的な専門知識をもたらそうとしている。
 デジタル経済に大きな投資が行われれば、アフリカの経済成長は加速し、従来の経済発展のステップを飛び越えることさえ、できるかもしれない。

(編者注)鉄塔、建物などの基地局の設置場所を共同で利用したり、また、アンテナや基地局制御装置などを共同で利用したりするのが一般的。コアネットワークといわれる基幹回線網(交換機同士を結ぶ回線)の共同利用もありうる。この手法により、基地局設置や次世代規格への移行などの投資負担を軽減できる。

(寄稿)

ジャーマン・カフル(German Cufre)
IFCのアフリカ・ラテンアメリカの通信・メディア・テクノロジー投資部門を率いる。現在八五カ国におけるブロードバンドや通信事業者等の通信インフラに関する株式や負債の監視責任者。IFCは世銀グループの一つで、途上国の民間セクター開発に特化した世界最大の国際開発機関(本部ワシントン)。サン・アンドレス大学学士、ケロッグ経営大学院MBA。シカゴ、サンパウロ、ブエノスアイレスでのコンサルタント等を経て、二〇〇六年に加わる。二〇〇八年通信インフラ投資チームに配属。

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デジタル技術に沸くアフリカ経済の今をどうみるか。
さらなる発展のために必要なことは何か。

3 田中秀和 レックスバート・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役
「自国での技術蓄積がアフリカにさらなるイノベーションを生む」


 アフリカでは若者を中心にスマートフォンが普及しつつある。ITを学ぶ学生が増え、ICTを活用した新しいものを作り出そうというエネルギーが社会に生まれている。ケニアのモバイル送金サービスM-Pesa や、ルワンダでZipline が行うドローンによる輸送事業など、新技術を応用して現地の課題を解決する革新的なサービスが数多く登場している。これらの取り組みの多くは、先進国と協力することで実現しており、アフリカの技術発展に大きく寄与している。
 他方、アフリカ自身の手でICTを活用してイノベーションを生みだすには、まだ時間がかかる。多様なシステムを企画・開発するには、技術経験を持つ開発者の層の厚さが重要だが、まだまだ足りないからだ。いまのアフリカに必要なのは、ITを学んだ人が「職を持ち、経験を積む」ことである。グローバル市場で求められるサービスの品質も、技術者が実務経験を通して「感覚知」として身に着ける以外にはない。
 今はIT大国の中国も、先進国のオフショアや下請けを経験してきた。アフリカ諸国も、ICTサービスが広がる今こそ、自国内での開発の経験を重ね、技術の蓄積をして、力を蓄えるときだ。われわれは、ルワンダでオフショア開発事業を行い、現地の技術者に職を提供している。技術者が多くの開発を経験し、国内で抱える課題を自分たちで解決できるように育つことが目標だ。幸いなことに、アフリカには、先進国企業の進出を積極的に受け入れる姿勢がある。先進国とアフリカが一緒になって開発を進めるやり方を見つけることができれば、ビジネスとしても成功し、アフリカの発展にもつながる。
 アフリカと一言でいっても、五四の国があり、国ごとに言語や文化、歴史の違いや競争がある。近い国同士は歴史的に感情的な衝突もある。アフリカの発展は、他より一足早く成長した国が、少しずつ周辺国を巻き込みながら、結果的に一つのそれなりの規模を持った市場やサービスができていくという展開になるのではないか。将来的には、それらの市場やサービス間の連携をとるようなビジネスやサービスが生まれ、イノベーションの果実がアフリカに行き渡ることが期待される。その意味でも、「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)」の発効は、成長の機会になるだろう。

田中秀和(たなか・ひでかず)
レックスバート・コミュニケーションズ株式会社は、ソフトウエア開発事業および日本企業のアフリカ進出支援を行う。田中氏が、ソフトバンクグループ開発会社、米国ベンチャー企業の日本国内CTOを経て、起業した。二〇一四年には、同社のグループ企業として、ソフトウエア開発事業を行うアフリカ企業「WiredIn LTD」をルワンダで立ち上げ、日本やアフリカ、欧米向けにソフトウエア開発サービスを提供。事業活動を通して、アフリカのICT業界の育成支援に尽力している。

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デジタル技術に沸くアフリカ経済の今をどうみるか。
さらなる発展のために必要なことは何か。

4 アシュラフ・パテル インスティテュート・フォー・グローバル・ダイアログ(IGD) シニアリサーチアソシエイト
「製造業の生産性向上がカギを握る」


 アフリカの多くの国で、ICT関連のイノベーションハブが始動しつつある。ケニアのシリコン・サバンナ、ケープタウンのシリコン・ケープやCiTiなどがその代表例だ。とりわけ、政府部門の電子化は、ガバナンス全体を向上させるだけではなく、市民の政治参加や、行政の説明責任能力を促進させる。ビッグデータを活用するようになれば、健康、公営住宅、都市計画、交通システムなどの政策決定に大きな効果がある。
 一方で、アフリカは、かつての先進国やアジアの成長モデルとは異なり、経済発展する上で大きな矛盾を抱えている。それは、製造業の発展段階をスキップして、サービス化に一気に進んでしまったという点だ。過去二〇年、農村から都市へ大量に流れこんでいる労働者の就業先は、製造業ではなくサービス業であり、その流れを後押しているのがICTであることは紛れもない。発展途上国における製造業の発達は、本来は、雇用創出の要であり、貧困を減らす非常に重要なファクターである。国内の所得格差を解消させる上でも、製造業が発達することが望ましい。
 ハーバード大学ダニ・ロドリック教授は、アフリカ経済の異質さを、「金融業はグローバル市場に統合されているが、製造業は先進国のサプライチェーンにつながっていない」と指摘する。アフリカの製造業の一人当たりの付加価値は、アジア地域やラテンアメリカよりも低く、素朴な財の生産にとどまっており、これでは、グローバルなサプライチェーンの仲間入りをすることはできない。先進国の生産プロセスに組み込まれるためには、付加価値の高い財の提供が不可欠である。付加価値の高い財を生産する先進国は、部品であっても付加価値の高いものを求めている。
 現状から脱却するには、堅実、かつスマートな産業政策を実施することだ。政府は研究開発に対して投資を増やし、後押しをする。また、技術革新やロボット化を活用して、工場のシステムを改善し、スマートファクトリーを実現することも必要だろう。それにより、アフリカ地域のバリューチェーンの改善や中小企業の成長が見込める。さらに、労働者の訓練やスキルアップの環境整備も求められる。製造業の確立なくして、アフリカが中国のようなIT大国にはなりえないだろう。

アシュラフ・パテル(Ashraf Patel)
南アフリカ・プレトリアに拠点を置く独立系シンクタンクで、デジタルおよびICTに関する規制政策やイノベーション政策について研究、政策提言を行う。南アフリカやサブサハラ地域における、公共政策やICT政策、電気通信規制、ICT4D(ICT for Development)構想などの分野に、一五年以上にわたり携わっている。ITU Telecom World やT20などの国際会議にて、アフリカ地域のICT活用に関する提言を発表している。

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デジタル技術に沸くアフリカ経済の今をどうみるか。
さらなる発展のために必要なことは何か。

5 横山 正 アフリカ開発銀行 アジア代表事務所所長*
「日本はICT でアフリカとのウィンウィン関係を飛躍させよ」


 アフリカは、基礎インフラの不足、貧困、失業に加え、医療衛生保健、教育、金融分野でのアクセスが不足する等、広範な開発課題を抱えている。アフリカは日本の約八〇倍の面積を有する広大な大陸からなる。人口密度は高くなく、日本の八分の一ほどだ。人やモノの移動、送配電、通信、サービス供給の各面で、物理的に連結させることは容易でない。しかしその開発課題は、潜在性とコインの表裏をなしている。課題克服への需要も膨大であり、大きなビジネス投資機会が存在する。
 ここで大きな役割を果たしえるのがICT、デジタル技術である。ドローン、航空、衛星、リモートセンシング関連の技術は、広大で人口密度の高くない大陸での課題克服の可能性を広げる。先進国とは異なる制度・規制環境の下、また、レガシーが必ずしもないことが、これらの技術の活用に追い風となりえる。アフリカは、ICT等の技術を活用した革新的方法で開発課題を解決し、また、第四次産業革命を急速に実現し、ICT大国地域となる可能性を秘めている。リープフロッグの成長を遂げる大きな潜在性を有しているのである。
 ICT技術のビジネス活用例としては、銀行口座を有さず、物理的決済網も張り巡らすことなく、携帯電話等を通じた電子マネー送金や貯蓄が普及し始めている。多くの地域で住所付番がない中、携帯電話等の位置情報(仮想住所)を活用したモノ、サービスの配送・提供も始まっている。遠隔地への医療、教育サービス(画像診断、オンライン教育等)の提供も可能となってきている。また、多くのスタートアップが生まれている。
 日本に期待されるのは、ICT等の技術も活用したビジネス展開である。現地の課題や需要を理解し、利用可能な技術で解決策を提供すれば、多額の資金を要しなくてもビジネスとして成立するものは多々あろう。また、雇用創出、人材育成も期待される。
 少子高齢化が進む日本と若い労働力が豊富なアフリカは、補完関係にある。アフリカ発のビジネスモデルの中には、逆に日本で活用できるものもあろう。TICAD7 を機に、令和元年が、日本の官民でアフリカの開発課題の克服に貢献しつつ、その成長の果実を共有するといったウィンウィン関係飛躍の「元年」となることを期待したい。

(*)寄稿。肩書は原稿執筆時点。


横山 正(よこやま・ただし)
二〇一五年より二〇一九年七月まで、アフリカ開発銀行アジア代表事務所所長を務めた。現在、財務省大臣官房企画調整主幹。一九八八年に大蔵省(当時)入省後、金融庁八年間、外務省五年間勤務。二〇〇九年より財務省にて国際租税制度担当参事官、二〇一一年より外務省にて東南アジア等と太平洋島嶼部のODA政策担当課長、二〇一三年より財務省でASEAN+3や国際開発金融機関の担当課長を歴任。東京大学経済学部卒業、豪シドニー大学経営管理学修士取得。


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©公益財団法人NIRA総合研究開発機構
編集:神田玲子、榊麻衣子、北島あゆみ、山路達也

※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。
E-mail:info@nira.or.jp

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