[ゲスト]
冨山和彦
経営共創基盤代表取締役CEO

[聞き手]
伊藤元重
総合研究開発機構理事長
          

 対談シリーズNo.64  2011.09

電力市場の再設計を急げ

概要

 福島第一原子力発電所事故後の東京電力の問題は、長期にわたる巨額の損害賠償と、エネルギー政策が大きな曲がり角に来ていることに難しさがある。被害を受けた人々への損害賠償という視点を踏まえて、企業の再生、電力業界全体のあり方について、経営共創基盤代表取締役CEOの冨山和彦氏にお聞きした。

対談のポイント

●東京電力の問題は、長期にわたる巨額の損害賠償問題を抱えていること、日本の電力に関わるエネルギー政策が大きな曲がり角に来ていることに、難しさがある。
●既存の法律では原発事故に伴う賠償問題を解決できない。原賠法では、東電が一括して責任を負うか、免責しかなく、国と東京電力との共同責任の形がとれない。一方、会社更生法も債権者のための法律であり、被害者を救済できない。
●緊急避難的に作られた原子力損害賠償支援機構法に、損害賠償のための資金を提供するだけでなく、抽象的ではあるが国の責任の規定が入ったことも重要である。
●2年ぐらい後に損害賠償の全貌が見えた段階で、最終処理スキームが決まる。その時までに、将来のエネルギー政策についての議論を深めておく必要があるが、大事なことは、効率的な価格メカニズムと、新規参入を促し、イノベーションが起き得る自由度を、電力市場の中に組み込んでおくことである。

冨山和彦(とやま かずひこ)
経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO。東京大学法学部卒。1992年スタンフォード大学経営学修士(MBA)及び公共経営課程修了。(株)ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役社長を経て、2003年(株)産業再生機構代表取締役専務業務執行最高責任者(COO)に就任。解散後の2007年にIGPIを設立、数多くの企業の経営改革や成長支援に携わり、現在に至る。財務省「財政投融資に関する基本問題検討会」委員、文部科学省科学技術・学術審議会基本計画特別委員会委員なども務める。主な著書に『プロフェッショナルコンサルティング』(共著)[2011]東洋経済新報社、『挫折力』[2011]PHP研究所、『カイシャ維新変革期の資本主義の教科書』[2010]朝日新聞出版、『会社は頭から腐る』[2007]ダイヤモンド社、『指一本の執念が勝負を決める』[2007]ファーストプレス等多数。

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