企画に当たって

金丸恭文

日本だけがなぜ成長できないのか?

新たな市場を創出できる日本へ、今こそ変革を

金丸恭文

NIRA総合研究開発機構会長/フューチャー株式会社代表取締役会長兼社長グループCEO

KEYWORDS

時代に合わない規制、新プレイヤーの活躍、挑戦意欲や創意工夫を生かす社会

 半導体の爆発的な性能向上により、画期的なソフトウエアサービスが次々と生まれ、予想をはるかに超える速さでAI(人工知能)の進化をもたらした。1955年にショックレー半導体研究所がカリフォルニア州マウンテンビューに誕生して以来、米国における技術革新をけん引してきたのは「若者」だ。ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、ラリー・ペイジ、マーク・ザッカーバーグ、サム・アルトマンといった、当時10代や20代の起業家たちの多くはチャンス到来と捉え、大学を中退して起業し、それまで存在しなかった若い企業を「巨大なガリバー」に成長させた。これらの新しい企業が新たなGDPと雇用の創出に大きく貢献して米国経済をけん引している。一方、日本では20世紀に各省庁が策定した「時代に合わない規制」が、新しい技術の開発や事業の誕生を阻み、その規制を見直すスピードも致命的に遅い。例えばライドシェア、先進国はもちろんのこと、今やアジア諸国でも日常生活に欠かせなくなったが、日本ではいまだに社会実装されていない。若者や新しいプレイヤーの活躍の場を極小化していては、新しい成長を自ら放棄しているのに等しい。日本人の潜在能力を信じ、もっと個人と組織の挑戦意欲や創意工夫が生かされる社会に転換すべきだ。

 日本の成長を阻んでいるのは旧態依然とした法規制や前例主義、実績主義、年功序列―識者の方々もその点を指摘する。

規制を撤廃して実験―都会のビルで植物工場、養豚場も?

 内閣官房内閣審議官の中原裕彦氏は、問題点は社会実装の段階にあるとして、「規制サンドボックス」の推進を説く。私自身、サンドボックスを推進する立場にあるが、より重視すべきは「場所よりも期間」であろう。どんな技術であれ、将来的に実を結ぶかどうか、事前に知ることはできない。ならば、実験期間を設けて規制を廃し、既存組と新規参入組で競争をさせて、実験後にあらためて必要な規制を考えるのが適切だ。

 Oishii Farmの古賀大貴氏はニューヨークでいちごの植物工場ビジネスを起業した。米国には日本のような高品質の農作物は少なく、市場の求めに合致していたからだという。

 日本でも植物工場のニーズは間違いなく存在する。だが、ビルで農作物を作っても農地とは認められず、住宅地に工場を作ってはならないという理屈で、植物工場や養豚場(中国では高層ビルで豚を飼育する「ハイテク養豚」が注目を集めている)を日本国内では実現できない。農林水産省の法規制は家族経営の保護、大企業参入の排除を前提としており、農業分野でダイナミックな生産性向上は望むべくもない。

技術革新の節目こそ若い人材を育てる環境をつくる

 レネ・エハサル氏はエストニアの防衛産業における産官学連携を解説しているが、ここで注目すべきはプレイヤーの違いだ。エストニアでは大学から多数の防衛系スタートアップが生まれている。一方、日本で防衛産業を担っているのは財閥由来の大企業で、まったく新陳代謝が起こっていないし、新しいプレイヤーの英知が入る余地はない。

 Preferred Networksの西川徹氏は、生成AIという大きな変化の節目に、日本の競争力向上のチャンスを見ている。私も十数年にわたり、コンピューターサイエンスを学ぶ人材の必要性をアカデミアに提言し続けてきたが、どの大学も学科のポートフォリオを一向に変えようとしなかった。

 大きな理由は、リチャード・ダッシャー氏も指摘するように、年功のヒエラルキーにある。グローバルマーケットでは価値のない教授陣が上にとどまり、優秀な若手が活躍するのを阻害してきた。一方、米ビッグテック創業者のほとんどが、社会の変化やチャンスに即応して、10代、20代で有名大学を中退したり、在学中に起業したりしているのは、冒頭に述べたとおりだ。人材は学生の時こそ最も旬で、歳を取るごとに劣化していくと言っても過言ではないが、日本では大学でも企業でも50代以上が主役だ。

あらゆる前提が崩れつつある今こそ、1人ひとりが目を覚まそう

 日本では長年にわたって、法規制とそれが生み出した既得権益が結びつき、変化を拒んできた。何十年もの間、法律がほとんど改正されず、世の中の状況とかけ離れてしまっている産業分野も少なくない。19世紀後半のイギリスでは、蒸気自動車が登場した際、馬車関連業者の権益を守るため、「赤旗法」を成立させた。赤旗を持った先導者に自動車の前を歩かせるというナンセンスな規制は、自動車産業の発達を遅らせることになったわけだが、同じ過ちを日本はいまだに続けている。長期的な視点に立った抜本的な改革を難しくしている理由の1つは、選挙制度にもあるだろう。日本では選挙の頻度が高く、政治家は政策を練る間もなく、近視眼的な票集めに奔走することになる。そうなると、全国規模のネットワークを有した既得権者がどうしても有利になってしまう。

 日本が江戸時代に戻って鎖国ができるなら、今のままでもよかろう。だが、そんなことは不可能だ。ならば、時代の変化に対応できる、より俊敏な国に変わっていくしかない。

 幸いにして、と言うべきか、現在は、私たちが前提としていたあらゆる事柄が崩れている最中だ。米国との同盟関係ももはや当てにはできず、生成AIやロボットの登場によって雇用のあり方も根本的に変わろうとしている。

 政治家や官僚、企業だけではない。今は、私たち全員が目を覚まさなければならない時なのだ。

識者に問う

日本で新規事業の開拓が進まない要因は何か。日本の国際競争力強化に必要なことは何か。

中原裕彦

サンドボックス制度で新しい技術やビジネスモデルのスピーディーな発展を実現

中原裕彦

内閣官房内閣審議官(文部科学戦略官・文化戦略官)

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社会実装のボトルネック、技術革新のスピード、規制のサンドボックス

 日本人は創造的なアイデアを生み出すことが苦手だ、という指摘をよく聞く。しかし、実際のボトルネックはアイデア創発ではなく、社会実装の段階にある。日本企業が欧米企業よりもリスクテイクをしたがらないことは、総資産利益率(ROA)の分布などから明らかだ。過去の成功体験によるイナーシャ(現状維持の慣性)が働き、企業でも行政組織でも新たなリスクテイクへの抵抗が大きい。米国では、新技術が規制に抵触した場合に支払う過料や、訴訟が起きたりした場合に支払う損害賠償をコストとして織り込んだうえで事業を推進する企業もあると聞く。これに対し、これらを支払う事態を回避しようとする日本企業とのマインドセットの違いは大きい。

 他方、わが国において政府が現行制度を改正するときは、一般的に、制度を変更する必要性があること、かつ、外部への不都合は生じないことを明らかにした上で、関係当局の理解を得なければならない。しかし、デジタル分野は技術革新のスピードが速い。国内で革新的なアイデアが出てきても、霞が関で議論を詰めている間に、海外勢にビジネスを取られることになりかねない。

 こうした課題を打破するために作ったのが「規制のサンドボックス」(新技術等実証制度)だ。期間・場所を限定したうえで、規制に縛られずに新技術を実際の現場で試すことができるようにし、問題がなければ、その新技術、サービスを社会実装できるようルールを変えていく仕組みである。英国などと異なり、日本ではすべての領域で導入したことが革新的であった。例えば、電動キックボードもこの制度を活用して実現し、規制改革につながった。この実践から高齢者向けの安全な仕様の開発に弾みがついており、新たなモビリティーが生まれる可能性が高まる。

 このサンドボックスを利用することで、「民」の人も実証段階から積極的にルール形成に参加し、官民一体で進めていくことができる。事業者だけでなく、消費者・生活者も積極的に参画していくべきだ。また、規制は事前に条件や仕様で制限するのではなく、守るべき結果に着目し、それを達成する方法は事業者の創意工夫を最大限引き出すのがよい。これによって、より良い政策や規制を実現することができる。まさに、規制のサンドボックスは官民共創でイノベーションを促進し、デジタル社会にふさわしい制度づくりを担うものだ。

識者が読者に推薦する1冊

識者が読者に推薦する1冊

中原裕彦・池田陽子(編著)〔2024〕『官民共創のイノベーション―規制のサンドボックスの挑戦とその先』ベストブック

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日本で新規事業の開拓が進まない要因は何か。日本の国際競争力強化に必要なことは何か。

古賀大貴

「日本の技術×グローバル市場」の視点で、日本の未来をひら

古賀大貴

Oishii Farm Corporation CEO

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世界市場への挑戦、スタートアップへの投資、成功の物語

 日本という国は居心地が良過ぎる。一定の内需があり快適に暮らせるため、国外でリスクを取る動機が弱い。世界に目を向けて情報を収集する人は少数で、米国への留学生や起業家の数も中国や韓国と比べて見劣りする。韓国の起業家は日本の農業技術や種苗を活用し、「コリアンピーチ」「コリアングレープ」としてニューヨーク市場で実績を上げている。日本初の技術が他国ブランドとして評価されている現実に、もっと敏感になるべきだ。

 国家の安全保障に直結するディープテックは、政府の戦略的支援が欠かせない。デカコーン(注)の育成には、1社あたり100〜1,000億円規模の投資が要る。グローバルな商業化段階で多くがつまずくが、米国で起業した日本人は外国企業扱い、日本では海外登記のため助成対象外とされ、支援を受けられない現状もある。日本の技術で世界市場を目指し、道筋が見えたスタートアップには大胆な投資で後押しすべきだ。

 私は「サステナブルな農業」へのパラダイムシフトを掲げ、植物工場技術で高品質な農産物を安定的かつ手頃な価格で提供する、世界最大の農業生産者を目指している。ニューヨークで起業したのは、米国には日本のような「おいしい農作物」が少なく、市場ニーズと合致していたからだ。干ばつや気候変動がより深刻な米国では植物工場への理解が進んでおり、サステナビリティへの投資家の関心も高かった。私が創業した植物工場企業「Oishii Farm」は、農薬を一切使わず安定的に栽培できる技術を確立し、まず富裕層や高級レストラン市場の評価を得た。研究開発を重ねることで、現在はより幅広い消費者層に高品質な農産物を届けられるようになり、大規模な資金調達にもつながった。同じ技術でも「どこでやるか」で事業の価値は大きく変わる。

 いま日本に最も必要なのは「成功の物語」だ。大谷翔平選手のようなスターがいれば、人は自然とその背中を追う。世界で結果を出している日本人起業家をもっと可視化し、「自分にもできる」と思える環境をつくること。それが新たな挑戦者を生む最も確実な近道だ。そしてその挑戦は、「日本の技術×グローバル市場」の視点を持ってこそ、日本の可能性を最大限に引き出せる。

(注)時価総額100億ドル超のスタートアップやベンチャー企業

識者が読者に推薦する1冊

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ウォルター・アイザックソン〔2011〕『スティーブ・ジョブズ Ⅰ・Ⅱ』井口耕二(翻訳)、講談社

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日本で新規事業の開拓が進まない要因は何か。日本の国際競争力強化に必要なことは何か。

レネ・エハサル

スタートアップも含めた産・官・学連携―エストニアの防衛産業

レネ・エハサル

エストニア防衛航空宇宙産業協会(EDIA)クラスター・マネジャー

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トリプルヘリックス、6つの戦略分野、国際的な連携

 エストニア防衛航空宇宙産業協会(EDIA)は、2009年に設立された非営利団体で、エストニア政府に協力して国家安全保障を支える中核的な存在だ。現在、EDIAには178社の企業が加盟しており、グローバル企業8社からエストニア資本のスタートアップまで、多様な企業が名を連ねている。

 EDIAのミッションの1つは輸出市場の開拓である。エストニアは国内市場の規模が小さいため、2024年には防衛産業全体の売り上げ5億ユーロのうち、その7割にあたる3億5千万ユーロを輸出に頼っている。海外市場を開拓することが、成長のためには不可欠である。もう1つのミッションは防衛能力の増強である。6つの戦略分野―サイバー防衛、AI(人工知能)、ロボティクス、電子戦、無人システム、監視技術―を特定し、2030年までに、売上額を現在の4倍に拡大することを目指す。

 これらの目標達成を支える柱の1つがイノベーション・エコシステムだ。エストニアでは「トリプルヘリックス」モデルと呼ばれる産・官・学連携が機能しており、タリン工科大学やタルトゥ大学などの大学から多数の防衛系スタートアップが誕生している。企業規模が小さくても、研究機関やエンドユーザーと連携することにより、顧客のニーズの的確な把握や知的財産の共有を通じて、柔軟にコスト効率の高い製品開発を実現している。国際的な連携もEDIAの強みの1つだ。欧州防衛基金(EDF)を通じて助成金を受けており、NATO加盟国をはじめ、アジアや北米などの市場でも積極的に活動している。ウクライナへの支援に直接関わっており、今回のロシアの侵攻で得た知見を製品開発に生かしている。

 われわれの活動の特徴は、会員企業と密な対話が基礎になっていることだ。毎年、全加盟企業に調査を行い、市場や収益動向、連携の意向などを詳細に把握している。その調査結果と、政府が策定する防衛産業政策の大きな枠組みとを組み合わせ、優先順位を定めて戦略を練り、活動計画を立てる。2024年に政権が交代し、主要な防衛調達において国内企業の関与を義務づける政策が導入された。これにより、政府調達の一定程度を必ずエストニア企業が担うこととなった。防衛産業の国内経済への還元、供給網の強化、そして国際企業との協力推進を期待している。

識者が読者に推薦する1冊

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M.Laar.〔1996〕 “Estonia's Success Story”, Journal of Democracy, 7(1), 96-101.

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日本で新規事業の開拓が進まない要因は何か。日本の国際競争力強化に必要なことは何か。

西川徹

AI、コンピューターの進化に合わせて事業の価値を高めよう

西川徹

株式会社Preferred Networks代表取締役最高経営責任者

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コンピューターの進化速度、エンジニア教育、分野横断的な技術革新

 日本の競争力の停滞は、コンピューターの進化速度を過小評価し、その流れに対応できなかったことが根本にある。この数十年の間に、プロセッサーに加えインターネットが発達し、10億、20億のユーザーにサービスが瞬時に届けられるようになった。この進化の速度に、GAFAMやエヌビディアはうまく乗り成長を遂げた。日本も追随しているが、DX化が周回遅れで広がり始めた段階だ。コンピューターサイエンスを学ぶ人材の数も、米中と日本では圧倒的な差があり、人材育成の遅れが今日の国力の差として顕在化している。

 生成AIの登場で、プログラマーの仕事はドラスティックに変わる。これは、日本が遅れを取り戻すチャンスになり得る。従来、AIはプログラマーを支援する程度だったが、今後はプログラマーがAIに指示を出し、AIが書いたコードを確認することになる。「プログラムの構造化」という大きな変化の節目をしっかり捉え、そこにフォーカスしたエンジニア教育をきちんと行い、人材を育てれば、日本の競争力も向上するはずだ。

 コンピューターの進化速度はこれからも指数関数的に向上し、新しい知見がどんどん生み出される。また、AIの高度化で領域の横断や複雑なシステムの連携が進み、分野の掛け合わせが新たな価値とイノベーションを生み出していくことになる。例えば、弊社では原子レベルシミュレーターとAIによって、新素材の探索と開発を行っているが、今、起こりつつあるのは、AIの進化が新素材の探索と開発を加速し、それがAIで使われる半導体の開発を加速させるといった「スパイラル的な技術革新」である。こうした分野横断的な技術革新の流れに乗れるかどうかが、日本が競争力を取り戻す重要なポイントになる。

 日本は、機械や化学、エンターテインメントなど得意な領域で、戦っていくことが大切だ。同時に、優れた機械を作れるといったことだけでは不十分で、単体の事業をAIやソフトウエアの強みに掛け合わせて価値を高めていくのが、資源の少ない日本の「勝ち筋」ではないか。人間は、何と何を掛け合わせるのか、仮説を立てる能力と想像力を育むことが一層重要になる。

 スタートアップに対する政府の支援は機能しているので、継続すべきだ。一方、官公庁による政府調達の要件はスタートアップにとっていまだハードルが高く、大きな事業に参画できない状況が継続している。この点は引き続き政府による改革の推進を期待している。

識者が読者に推薦する1冊

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岡野原大輔〔2023〕『大規模言語モデルは新たな知能か―ChatGPTが変えた世界』岩波科学ライブラリー

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日本で新規事業の開拓が進まない要因は何か。日本の国際競争力強化に必要なことは何か。

リチャード・ダッシャー

揺れ動く米国、日本はスタートアップの役割を高めグローバル志向を

リチャード・ダッシャー

スタンフォード大学アジア・米国技術経営研究センター所長

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規制による研究開発の阻害、年功ヒエラルキー、グローバル志向

 人工知能(AI)開発は今や、ディープラーニングの技術モデルを越えて、汎用はんようAIの研究開発の局面を迎えつつある。従来、米国のAI分野は大企業が基盤モデルの構築、スタートアップがアプリケーションレイヤーの開発という役割分担があったが、今後はスタートアップが画期的なモデル変革でイノベーションを起こす可能性が高い。他方、中国の生成AIディープシークは衝撃を与えたが、中国はデータの質に課題がある。国際競争の中、日本はスタートアップの役割を高め、イノベーションを生かせる環境づくりを重視すべきだ。

 ところが、日本では新規事業の開拓や新たな事業者の参入が進まない。なぜか。主な要因は規制に対する姿勢にある。米国では規制より先に開発・導入を行い、試行後にどのような規制が必要かを考える。日本ではまず規制を作ることを考えるため、企業は政府が規制に関する意向を固めるまで、開発や事業開拓を待つ傾向がある。研究開発の動きは速い。規制が企業の研究開発のスピードを阻害しないよう、政府は自制する必要がある。また、政府は大企業の意向を優先するのではなく、スタートアップも含めた産業界全体と綿密な意見交換を行うことが必要だ。頻繁な交流・知識交換はイノベーションにもつながる。加えて、政府は、市民の安全を守る役割を負っていることも忘れてはいけない。

 研究投資の継続は、国際競争力の強化に向けて不可欠となる。日本の「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」は極めて評価が高く、成果が期待される良い例だ。ただし、日本は若者にもっと挑戦のチャンスと責任を与える必要がある。日本の大学は今も年功のヒエラルキーが強く、助教は教授の部下扱いだが、これは米国とは全く異なる。

 そして、日本に足りないのはグローバル志向である。大企業は世界をけん引する意識を、スタートアップはグローバル市場を目指す意志を持つべきだ。他国に比べて、日本はスタートアップへの支援は現状でも手厚いが、スタートアップが国内だけでなくグローバル市場で戦えるよう、政府はさらなる保護と支援を促進すべきである。また、研究者間では国際水準のグローバルな人材交流を促進すること。企業間の国際的な協力では、データの安全を確保しつつ、リアルタイムでデータシェアリングを進めることが、非常に重要となる。米国が政治的/経済的に揺れ動いている今こそ、日本が海外との協力を積極的に行う好機だ。

識者が読者に推薦する1冊

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Nestor Maslej, Loredana Fattorini, Raymond Perrault, et al.〔2025〕"Artificial Intelligence Index Report 2025," Stanford University for Human-Centered Artificial Intelligence (HAI).

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)NIRA総合研究開発機構(2025)「日本だけがなぜ成長できないのか?【速報】」わたしの構想No.78

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神田玲子、榊麻衣子(編集長)、河本和子、山路達也
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