大久保敏弘
慶應義塾大学経済学部教授/NIRA総合研究開発機構上席研究員
NIRA総合研究開発機構

概要

 慶應義塾大学経済学部大久保敏弘研究室および(公財)NIRA総合研究開発機構は、「第3回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査(注1)」を実施した。本調査は、ポストコロナ期におけるデジタル技術の社会実装の進展状況、ならびにデジタル技術が就業者の働き方、生活、意識にもたらす変化を把握することを目的としている。調査は202582日(土)から同年825日(月)にかけて実施した。回収数は10,502件であり、うち前回以前からの継続回答は7,762件である。
 速報結果は以下のとおりである。なお、本速報のグラフ中の数値は小数点以下を四捨五入しているため、構成比の合計が100%にならない場合や、本文中の数値と一致しない場合がある。

INDEX

ポイント

●テレワーク:2025年7月時点の全国の利用率は14%と、2024年12月比でやや上昇した。東京圏でも同様の傾向がみられ22%であった。

●生成AI:月1回以上、仕事で生成AIを利用している就業者は22%まで拡大した(2023年10月時点で12%)。生成AIの利用で仕事の効率向上を実感した人の割合は78%であり、うち「30%以上の効率向上」は12%に上昇した(2023年10月時点で5%)。

●政策の賛否:賛成の割合が比較的高いのは、「異常気象対策・地球温暖化防止対策」(43%)、「働き方改革」(40%)であった。一方、「移民の受け入れ促進」は反対の割合が28%と、賛成の15%を上回った。

●国際関係の認識:「日本に脅威を与える」との回答は、トランプ氏で55%、中国で65%、ロシアで63%となり、「利益をもたらす」との回答(それぞれ9%、5%、6%)を大きく上回った。トランプ氏が大統領就任前の2024年12月時点と比べて、トランプ氏を脅威とみる割合は増加した。

●日米経済合意(2025年7月):日本経済にとって「良い」は9%に対し、「悪い」は37%で、否定的な見方が相対的に多い。今後の追加関税措置があった場合の対応は、「強く対抗すべき」(24%)と「合意順守を交渉すべき」(22%)が拮抗している。

●環境規制:異常気象・災害対応として「経済活動への環境規制を強化すべき」(34%)が、「環境規制を撤廃すべき」(12%)を上回り、規制強化を支持する見方が相対的に多い。

●企業の社会的責任(CSR):回答者が所属する企業、組織で重視している割合が高い取り組みは、「ワークライフバランスのとれた職場環境」(41%)、「女性の雇用・活用」(37%)が挙げられる。これらは、2021年4月からの増加幅も相対的に大きい。

●投票先を決める際に重視した情報源:2025年7月の参議院選挙では、伝統的メディア(テレビ、新聞・雑誌など)重視は63%、オンラインメディア(ネットニュースやSNSなど)重視は41%であった。2024年10月の衆院選と比べて、前者はやや低下、後者は増加した。

●投票時に重視した政策:2025年7月の参議院選挙では、物価高騰対策が最上位、次いで雇用や年金、米・農業となり、足元の生活に直結するの課題を優先する傾向がみられた。

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2025)「第3回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査(速報)」

脚注
1 この調査研究は科研費(基盤研究B「ポストコロナの世界経済とデジタル経済:国際貿易・空間経済学・災害の経済による分析」研究代表者:大久保敏弘23H00821、挑戦的萌芽研究「AIがもたらす不平等と平等:社会関係資本(ソーシャルキャピタル)による解決」研究代表者:大久保敏弘24K21419)」、住友電工グループ社会貢献基金・学術研究助成(研究代表者:大久保敏弘)の補助を受けている。 1 この調査研究は科研費(基盤研究B「ポストコロナの世界経済とデジタル経済:国際貿易・空間経済学・災害の経済による分析」研究代表者:大久保敏弘23H00821、挑戦的萌芽研究「AIがもたらす不平等と平等:社会関係資本(ソーシャルキャピタル)による解決」研究代表者:大久保敏弘24K21419)」、住友電工グループ社会貢献基金・学術研究助成(研究代表者:大久保敏弘)の補助を受けている。

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