総合研究開発機構

概要

 NIRA(総合研究開発機構)は、東日本大震災後の復旧・復興状況を総合的に把握するため、「東日本大震災復旧・復興インデックス」を開発した。
 震災発生から2013年3月までの2年間の推移をみると、生活基盤の復旧・復興は、3県ともに緩やかに進んでいることがわかる。市町村により進み具合に差がみられるが、それは主に鉄道の復旧と瓦礫の処理の状況の違いによる。
 被災地の生産・消費・流通などの活動状況については、福島県で回復の遅れがみられるなど、3県の間で進捗に違いがある。
 さらに、応急仮説住宅では高齢者の「1人暮らし」が増えており、女性は子育てや就労でストレスを抱えている。被災地では、生活面での課題が山積しており、今後、状況の把握と対応が求められる。

INDEX

エグゼクティブサマリー

●2011年秋以降、生活基盤の復旧は緩やかに進む(図1)
 生活基盤の復旧は、3県とも緩やかに進んでいるが、直近1年間をみると岩手県のテンポはやや緩慢である。瓦礫処理は3県ともに大幅に改善し、人口移動関連の指標も改善傾向にある。他方、教育・医療分野の進捗は依然として鈍い

図表1 「生活基盤の復旧状況」指数の動き

(注)「生活基盤の復旧状況」指数は、鉄道復旧度や瓦礫撤去率など、被災地での生活を支えるインフラ17項目について、震災前の状況を100としたときの総合的な復旧度を示すもの。

●市町村別では、鉄道復旧と瓦礫処理の進捗が復旧度を左右している
 被災37市町村の復旧は緩やかながらも着実に進んでいる。鉄道復旧や瓦礫処理が地域の復旧の進捗に影響を与え、その目処がついた岩手県普代村の復旧度は100に達した。岩手県洋野町、宮城県利府町などでも高い復旧度となった。

●2013年に入り、活動状況は上昇傾向にある(図2)
 震災後、生産活動を中心に回復が進んだが、2012年春以降はほぼ横ばいで推移した。2013年に入ると、岩手県が高い伸びとなり、直近では震災前の水準を上回っている。宮城県は緩やかながら上向いているが、福島県は低い水準で推移している。 

図表2 「人々の活動状況」指数の動き

(注1)データ処理のため、ここでは被災3県と全国を直接比較できないことに注意を要する。
(注2)「人々の活動状況」指数は、鉱工業生産指数や大型小売店販売額など、被災した人々やその地域の生産・消費・流通などの地域の活動について、被害と復旧・復興の状況を時系列で把握するもの。

●福島県の農業・漁業・医療の復興に課題がある
 岩手・宮城県では、被災した農業経営者・漁業者の多くが事業を再開したが、福島県での再開は低調のままである。医療分野では、岩手・宮城県で医師数が震災前水準に近づいたが、福島県では回復していない。

●応急仮設住宅に高齢者の「1人暮らし」が増えている
 応急仮設住宅には高齢者の居住割合が多く、「1人暮らし」が増加している。女性にとっては、子育て環境や就労環境が十分に回復していない。高齢者や女性のストレスが大きく、世代間、男女間の健康格差の解消が必要である。

目次

第1章 東日本大震災復旧・復興インデックス
第2章 インデックスの年次指数化に向けて
第3章 データを活用した復旧・復興期の政策形成に向けて

参考
資料1 東日本大震災復旧・復興インデックス 採用指標の一覧表
資料2 「生活基盤の復旧状況」指数 -グラフおよび数値-
資料3 「人々の活動状況」指数 -グラフおよび数値-
資料4  市町村別にみた「生活基盤の復旧状況」
資料5 「人々の活動状況」指数に含まれる個別指標 ―グラフおよび数値―
資料6 指数の更新状況について
資料7 東日本大震災復旧・復興インデックスの加工方法について
資料8 人々の活動状況指数 前月差に対する個別指標別の寄与度

図表

図表1   「生活基盤の復旧状況」指数の動き
図表2   「人々の活動状況」指数の動き
図表3-1-1 「生活基盤の復旧状況」指数の動き
図表3-1-2  指数の各構成指標の状況( 2013年 3 月と 2012 年 3 月の比較)
図表3-2-1 「人々の活動状況」指数
図表3-2-2 「人々の活動状況」指数を構成する個別指標の状況
参考図表1 雇用のミスマッチの状況について
参考図表2 震災前水準を上回った場合のデータ固定化処理を行わずに作成した「人々の活動状況」指数
図表3-3  復旧が比較的着実に進む市町村
図表3-4-1 農業経営体の事業再開状況
図表3-4-2 漁業経営体の事業再開状況
図表3-4-3 企業の事業再開状況
図表3-4-4 休廃業件数は震災後に増加
図表3-4-5 新規設立法人企業数が震災後に増加
図表3-4-6 震災前に比べて福島県および宮城県で貸出金が増加
図表3-4-7 被災地では事業所数・従業員数とも大幅減少
図表3-4-8 生徒の県外就職率が震災後に上昇(2012 年 2 月時点の状況)
図表3-4-9 福島県では学校が再開しても教員が減少、岩手県および宮城県では2012年以降横ばい
図表3-4-10 医師・看護師数、医療施設数
図表3-4-11 医療従事者数は足元では改善
図表3-4-12 介護供給は震災後に厳しい状況
図表4-1  高齢者人口増加率の推移
図表4-2  宮古市のA仮設住宅団地住民の年齢構成
図表4-3  一人暮らし高齢者の増加(釜石市の例)
図表4-4  買い物環境の悪化(山田町の例)
図表4-5  保育所開所状況(宮城県および福島県)
図表4-6  有効求職者数(男女別、前年比)
図表4-7  被災 3 県の住民の心身の健康状態(男女別)
図表4-8  生活への安心度・不安の有無(岩手県の調査の例)
図表4-9  こころの状態(男女差)
図表4-10  サポート拠点数

復旧・復興インデックス検討チームメンバー

市村英彦 東京大学大学院経済学研究科・公共政策大学院教授
柳川範之 東京大学大学院経済学研究科教授/NIRA理事
澤田康幸 東京大学大学院経済学研究科教授
梅林浩平 前岩手県復興局企画課主任企画専門員
神田玲子 前NIRA研究調査部長
斉藤徹史 NIRA研究調査部主任研究員
江川暁夫 NIRA研究調査部主任研究員
森直子  NIRA研究調査部研究コーディネーター・主任研究員

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)総合研究開発機構(2013)「東日本大震災復旧・復興インデックス(2013年7月更新)-データが語る被災3県の現状と課題Ⅳ-」

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構

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