NIRA総合研究開発機構

※本調査の個票データはこちら

概要

 政府は近年、キャッシュレス決済の推進に取り組んでいる。現在のキャッシュレス決済の実態を正確に把握するため、NIRA総研はアンケート調査を実施した。結果として、個人の消費支出額におけるキャッシュレス決済比率は、70.6%であることが明らかになった。5年前の2018年に実施した同調査と比べると、19.3%ポイント増加している。この結果は、従来の統計には含まれない銀行口座間送金なども考慮しており、消費者個人の実感により近いものと考えられる。こうした現状と変化を踏まえた上で、キャッシュレス社会に向けた今後の課題をしっかりと見極めて議論していくことが重要である。
 なお、本調査は2023823日(水)~2023828日(月)にかけて行われた。回収数は3,000件で、うち有効回答数(トラップ設問をクリアした人)は2,403件。速報結果は、トラップ設問をクリアした人のみを対象とし(注1)、「国勢調査(2020年)」の対象のうち 18歳以上79歳以下の日本在住者を母集団とみなして、ウェイトによる補正を行った集計結果である(注2)

 (お詫びと訂正)
 2023年9月29日公表の数値に誤りがありましたので、お詫びいたします。数値は、正しいものに修正済です。修正箇所については、正誤表をご覧ください。

INDEX

ポイント

●個人の消費支出額におけるキャッシュレス決済の比率は70.6%であった。

●最も多いキャッシュレス決済の手段はクレジットカードで41.1%。次いで口座引き落とし(10.0%)、QRコード・バーコード決済(8.1%)となっている。

●世帯の所得が高いほど、キャッシュレス決済比率は若干高くなる傾向にある。

●5年前の同調査と比べると、キャッシュレス決済比率は19.3%ポイント増加した。

●5年前との比較の内訳は、クレジットカードでの支払いが10.1%ポイント増加、QRコード・バーコード決済およびタッチ決済の合計が8.6%ポイント増加、キャッシュカードでの振込が0.5%ポイント増加となっている。一方、口座引き落としは0.3%ポイント減少した。

●各支払手段の利用について年齢階層別にみると、クレジットカードを利用する人の割合は1829歳が若干少ない。一方、QRコード・バーコード決済の利用は若い人ほど多い。

●支払時に利用したい手段は、クレジットカードが最も多く40%、次いでQRコード・バーコード決済が25%、現金は19%である。

図表

図1-1-1 各種支払手段の利用状況
図1-1-2 関連サービス等の利用状況
図1-2-1 年齢階層別にみたクレジットカードの利用
図1-2-2 年齢階層別にみたプリペイド式電子マネーの利用
図1-2-3 年齢階層別にみたQRコード・バーコード決済の利用
図1-3-1 世帯の年間所得階層別にみたクレジットカードの利用
図1-3-2 世帯の年間所得階層別にみたプリペイド式電子マネーの利用
図1-3-3 世帯の年間所得階層別にみたQRコード・バーコード決済の利用
図1-4 現金の所持金額(全体平均、年齢階層別、世帯の所得階層別)
図2-1-1 支払手段の希望
図2-1-2 年齢階層別にみた支払手段についての考え
図2-1-3 世帯の所得階層別にみた支払手段についての考え
図2-2-1 現金で支払いたい理由
図2-2-2 年齢階層別にみた現金で支払いたい理由
図3-1 定期的に購入する品目の支払方法
図3-2 定期的に支払う品目の支払方法
図3-3 購入頻度の低い品目の支払方法
図3-4 最近利用が増えている品目の支払方法
図3-5 保険料及び税金の支払方法
表4-1 個人の消費支出額におけるキャッシュレス決済比率
図4-2 世帯の年間所得階層別にみたキャッシュレス決済比率
表5-1 キャッシュレス決済比率の5年前との比較
図5-2 コロナ禍の前後での支払方法の変化
図6-1 CBDCへの認識
図6-2 デジタル給与の受け取りの希望
図7-1 利用しているポイントサービスの種類
図7-2 共通ポイントサービスの利用
図7-3 ポイントサービスについての考え方
図7-4 ポイントの利用方法

Ⅰ調査結果

1.支払手段の利用状況

1.1.各種支払手段、サービス等の利用状況

Q11.以下の項目について、あなたは、日常的に使っていますか。(それぞれ1つずつ)

(1)クレジットカード
(2)デビットカード
(3)プリペイド(前払い)式の電子マネー(Suica等交通系電子マネー、楽天EdynanacoWAON等)
(4)
QRコード・バーコード決済(PayPay、楽天ペイ、LINE Payau PAY等)
(5)スマホやスマートウォッチによるタッチ決済(Apple PayGoogle PayiDQUICPay等)
(6)オートチャージ機能(ICカード等の、残高が減ると銀行口座から一定金額チャージされる機能)
(7)ポイントサービス(楽天ポイント、Pontaポイント、dポイント、PayPayポイント、マイル等)
(8)パソコン
(9)スマホ・携帯電話
(10)NFT・暗号資産

 支払い手段の利用状況について、各項目で「よく利用している」または「ときどき利用している」を回答した人の割合の合計をみると、「クレジットカード」は88%、「プリペイド式電子マネー」は66%、「QR・バーコード決済」は64%と高く、日常的によく利用されていることがわかる(図1-1-1)。

 一方、「タッチ決済」、「デビットカード」については約7割の人が、また、「仮想通貨」については9割程度の人が、「全く利用していない」と回答している。

 さらに、支払いに関連したサービスやデバイスの利用状況について、「スマホ・携帯電話」や「パソコン」を利用している人の割合(「よく利用している」、「ときどき利用している」の合計、以下同)は9割を超える(図1-1-2)。「ポイントサービス」も同様に多い。一方で、「オートチャージ機能」は日常的に利用している人の割合は少ない。

1.2.年齢階層別にみた各種支払手段の利用状況

 支払手段の利用状況を年齢階層別にみる

 クレジットカードについては、1829歳で利用している人の割合が他の年齢層より少なく76%で、30代以上では8割を超える(図1-2-1)。18~29歳でクレジットカードの利用割合が少ない理由には、この年齢層には、クレジットカードの利用率が低い学生が多く含まれることがある(注3)。また、30代以上の年齢層で軒並み利用割合が高いのは、一度クレジットカードを利用し始めると利便性のよさから利用を継続するためと考えられる。

 プリペイド式電子マネーについても同様の傾向があり、18~29歳で利用している人の割合は55%、30代は59%、40代は65%、50代は66%、60代は73%、70代は72%となっている(図1-2-2)。

 一方、QRコード・バーコード決済の年齢別の利用状況では逆の傾向がみられる。すなわち1829歳で利用している人の割合が77%で最も多く、30代は73%、40代、50代は68%、60代は58%、70代は41%となっている(図1-2-3)。比較的新しいキャッシュレス手段であるQRコード・バーコード決済は、若い世代が利用しやすいことがうかがえる(注4)

図1-2-1 年齢階層別にみたクレジットカードの利用

(注)サンプル数は18~29歳が322、30~39歳が321、40~49歳が460、50~59歳が409、60~69歳が558、70~79歳が333。

図1-2-2 年齢階層別にみたプリペイド式電子マネーの利用

(注)サンプル数は18~29歳が322、30~39歳が321、40~49歳が460、50~59歳が409、60~69歳が558、70~79歳が333。

図1-2-3 年齢階層別にみたQRコード・バーコード決済の利用

(注)サンプル数は18~29歳が322、30~39歳が321、40~49歳が460、50~59歳が409、60~69歳が558、70~79歳が333。

1.3.世帯の年間所得階層別にみた各種支払手段の利用状況

 支払手段の利用状況を世帯の年間所得階層別にみる。

 クレジットカードを利用している割合は、世帯所得が1,000万円以上のグループで最も多く、ほぼ100%に近い(図1-3-1)。クレジットカードの利用割合は、世帯年収が低くなるにつれて少なくなり、200万円未満では80%となっている。

 プリペイド式電子マネーについては、世帯所得が1,000万円以上のグループで利用している割合が75%と最も多い(図1-3-2)。それ以下の世帯所得層は全て65%程度で、大きな違いは見られない。

 QRコード・バーコード決済については、世帯所得が6001,000万円、1,000万円以上のグループで7374%と最も多く、この割合は世帯年収が下がるにつれて少なくなる傾向がある(図1-3-3)。200万円未満あるいは200400万円未満の所得層では60歳以上の年齢層が半数程度を占めることから、年齢の高い層でQRコード・バーコード決済の利用が少ないことに影響されたものと考えられる。

図1-3-1 世帯の年間所得階層別にみたクレジットカードの利用

(注)サンプル数は200万円未満が243、200~400万円未満が540、400~600万円未満が445、600~1,000万円未満が499、1,000万円以上が291。

図1-3-2 世帯の年間所得階層別にみたプリペイド式電子マネーの利用

(注)サンプル数は200万円未満が243、200~400万円未満が540、400~600万円未満が445、600~1,000万円未満が499、1,000万円以上が291。

図1-3-3 世帯の年間所得階層別にみたQRコード・バーコード決済の利用

(注)サンプル数は200万円未満が243、200~400万円未満が540、400~600万円未満が445、600~1,000万円未満が499、1,000万円以上が291。

1.4.現金の所持

Q12.あなたは普段、現金をいくら持ち歩きますか。(1つだけ)

(1)現金は持ち歩かない
(2)1,000円未満(小銭)
(3)1,000円以上5,000円未満
(4)5,000円以上10,000円未満
(5)10,000円以上20,000円未満
(6)20,000円以上30,000円未満
(7)30,000円以上

 普段持ち歩く現金の金額についてみると、全体では「1,0005,000円未満」、「5,00010,000円未満」、「10,00020,000円」と答えた人の割合がそれぞれ2326%と、同程度に存在する(図1-4)。「現金は持ち歩かない」と答えた人の割合は3%であった。

 年齢階層別にみると、年齢が上がるほどより多くの現金を所持する傾向がある。

 世帯の所得階層別にみると、所得が高い層ほどより多くの現金を所持する傾向がある。世帯所得が1,000万円以上の層では24%の人が現金を30,000円以上持ち歩いている。この層はクレジットカードなどキャッシュレス手段をよく利用しているが、現金も併せて所持していることがわかる。

2.最も利用したい支払手段

2.1.支払手段の希望

Q13.商品やサービスの購入時の支払い手段について、あなたの考えにあてはまるものを1つ選んでください。(1つだけ)

(1)できるだけ現金で支払いたい
(2)できるだけクレジットカードで支払いたい
(3)できるだけデビットカードで支払いたい
(4)できるだけ電子マネー(交通系電子マネー等)で支払いたい
(5)できるだけQRコード・バーコード決済(PayPay等)で支払いたい
(6)上記以外の方法で支払いたい
(7)わからない

 支払時に最も利用したい手段をみると、「できるだけクレジットカードで支払いたい」が40%で最も多く、次いで「できるだけQRコード・バーコード決済で支払いたい」が25%、「できるだけ現金で支払いたい」は19%であった(図2-1-1)。また、「できるだけ電子マネーで支払いたい」は11%にとどまった。

 年齢階層別にみると、クレジットカードの利用を希望する人の割合は70代で最も多く48%、次いで60代が46%、30代~50代はすべて38%となっている(図2-1-2)。1829歳はクレジットカードの利用希望が28%にとどまり、QRコード・バーコード決済を希望する人の割合が35%と、最も多くの割合を占める。また、現金の利用を希望する人の割合が最も少ないのは30代で(15%)、反対に多いのは70代である(24%)。70代はQRコード・バーコード決済を希望する人の割合が16%にとどまっており、その分、クレジットカードあるいは現金での支払いを望む人が多いようだ。

図2-1-2 年齢階層別にみた支払手段についての考え

(注)サンプル数は18~29歳が322、30~39歳が321、40~49歳が460、50~59歳が409、60~69歳が558、70~79歳が333。

 世帯の所得階層別にみると、クレジットカードの利用を希望する人の割合は所得階層が上がるにつれて多くなり、1,000万円以上では56%にのぼる(図2-1-3)。一方、現金の利用を希望する人の割合は所得が低い層で多く、200万円未満では27%となっている。

図2-1-3 世帯の所得階層別にみた支払手段についての考え

(注)サンプル数は200万円未満が243、200~400万円未満が540、400~600万円未満が445、600~1,000万円未満が499、1,000万円以上が291。

2.2.現金で支払いたい理由

Q14.できるだけ現金で支払いたいのは、なぜですか。(1つだけ)Q13で「現金で支払いたい」と答えた方のみ)

(1)現金以外で支払う必要がないか
(2)現金以外の方法は、セキュリティが不安だから
(3)現金以外の方法は、紛失・盗難が不安だから
(4)現金以外の方法は、お金を使っている感覚がせず、使いすぎてしまうから
(5)現金以外の方法は、支払いの手続きが面倒だから
(6)現金以外の方法は、残高やパスワードが管理しにくいから
(7)現金以外の支払方法は、使える場面が少ないから
(8)スマートフォン、パソコン等を持っていないから
(9)現金以外の方法で支払いたいが、やり方がわからないから
(10)その他

 「できるだけ現金で支払いたい」と回答した人に対し、その理由を聞いた(図2-2-1)。「現金以外の方法は、お金を使っている感覚がせず、使いすぎてしまうから」が最も多く42%で、次いで「現金以外で支払う必要がないから」が22%、「現金以外の方法は、セキュリティが不安だから」が13%となっている。

 年齢階層別にみると、60代以下の層では使いすぎへの懸念を挙げる人の割合が最も多い(図2-2-2)。特に40代、50代では約半数を占めている。70代のみ、この割合が24%とやや少なく、現金以外で支払う必要性がないとの理由を挙げている人の割合が31%で最も多い。また、セキュリティへの不安を挙げる人の割合も、他の年齢層と比べて多い。

図2-2-2 年齢階層別にみた現金で支払いたい理由

(注)回答者はQ13で「できるだけ現金で支払いたい」と答えた人のみで、サンプル数は18~29歳が72、30~39歳が46、40~49歳が86、50~59歳が84、60~69歳が91、70~79歳が78。

3.品目別の支払方法

3.1.日常的に購入する品目

Q16.日常的な買い物において、以下の商品やサービスを購入した時、あなたはどのような手段で支払いましたか。直近の支払いについてお答えください。(それぞれ1つずつ)

(1)食料品(飲料、外食は除く)
(2)飲料(外食を除く。小売店や自動販売機での購入)
(3)外食(飲酒代を含む)
(4)日用品(台所用品、トイレットペーパー、洗剤、シャンプー等)
(5)身の回り品(腕時計、アクセサリー、傘、かばん等)
(6)被服、履物
(7)自動車等維持費(ガソリン、整備費用等。ただし、駐車場代金は除く)
(8)レンタカー等自動車関連サービス
(9)医療・介護関連サービス(おむつ、眼鏡、医療費、マッサージ、人間ドッグ、介護サービス料等)
(10)バス、鉄道運賃(定期券代は除く)
(11)タクシー代
(12)航空運賃
(13)有料道路料(※ETCカードを利用した場合にはクレジットカード、また、ETCパーソナルカードを利用した場合は、デビットカードとお答えください。)
(14)郵便、運送料
(15)教養、娯楽、スポーツ、ペット関連
(16)書籍・雑誌
(17)旅行
(18)理髪料、パーマ・カット代等
(19)化粧品
(20)仕送り・こづかい・家族への贈与
(21)仕送り・こづかい・家族への贈与を除く個人間送金
(22)その他サービス料(家事サービス、被服関連サービス等)

 日常的に購入する品目を購入した人が、その直近の支払いに、現金、クレジットカード、QRコード・バーコード決済、プリペイド式電子マネー、その他の現金以外の方法のうち、どの方法を利用したかを図3-1にまとめた(注5)。品目名の横の括弧内は、その品目を購入した人の割合を%で示している。

 まず「食料品」は、回答者の97%は支払いがあったと答えており、購入者のうち最も多かった支払方法はクレジットカード(37%)で、現金(26%)を上回った。QRコード・バーコード決済は17%、プリペイド式電子マネーは15%であった。次に、「飲料」の支払い方法で最も多かったのは現金で38%、クレジットカードが22%、QRコード・バーコード決済が20%と続く。自動販売機の利用などで、現金で支払う機会が多いことが考えられる。「外食」や「日用品」は、クレジットカードでの支払いが4割前後で、現金(3割弱)より多い。プリペイド式電子マネーも2割程度いる。

 また、「身の回り品」、「被服、履物」、「自動車等維持費」はクレジットカードによる支払いが7割近くを占めており、現金は2割程度にとどまる。「レンタカー等自動車関連サービス」、「航空運賃」、「有料道路料」、「旅行」ではクレジットカードの割合がさらに多くなり、89割近い。

 一方で、いくつかの品目では現金を利用した人の割合が最も多くなっている。「医療・介護関連サービス」は56%、「タクシー代」は45%が現金支払いで、クレジットカードはそれぞれ40%弱である。さらに、「郵便、運送料」は68%、「理髪料、パーマ・カット代等」は61%、「仕送り・こづかい・家族への贈与」は77%の人が現金で支払ったと回答している。

 なお、「バス・鉄道運賃(定期券代は除く)」はプリペイド式電子マネーが最もよく利用されており(51%)、次いで現金(25%)となっている。

図3-1 定期的に購入する品目の支払方法

(注)サンプル数は全体で2,403。品目名の横の括弧内は、その品目を購入した人の割合を示しており、グラフは購入者のサンプルを100とした時の各支払方法の利用者の割合を示している。

3.2.定期的に購入する品目

Q17.定期的に支払いが生じる、以下のサービス料金をあなたはどのような手段で支払いましたか。直近の支払いについてお答えください。(それぞれ1つずつ)

(1)授業料(保育サービスを含む)
(2)家賃・管理費(共益費を含む)
(3)電気代
(4)ガス代
(5)上下水道代
(6)通勤・通学定期券代
(7)駐車場代金
(8)スマホ・携帯電話等の利用料
(9)塾、習い事月謝
(10)NHK放送受信料(BSを含む)
(11)その他放送受信料、インターネット接続料

 前節と同様に、定期的に支払いが生じる品目について、その直近の支払いに、現金、クレジットカード、口座からの自動引落し、その他の現金以外の方法のうち、どの方法を利用したかを図3-2にまとめた(注6)

 まず「家賃・管理費」をみると、最も多いのは口座からの自動引落しで51%、次いで現金が20%、クレジットカードが15%であった。

 つづいて光熱費に注目すると、「電気代」、「ガス代」は5056%の人がクレジットカード、3438%の人が口座からの自動引落しで、現金は68%にとどまる。「上下水道代」は、口座からの自動引落しが最も多く50%、次いでクレジットカードが31%、現金は11%であった。また、「その他放送受信料、インターネット接続料」はクレジットカードの割合が68%と多くを占め、次いで口座からの自動引落しが24%であった。なお、「スマホ・携帯電話等の利用料」もクレジットカードが74%を占めており、インターネット関連の支払いはクレジットカードの利用が多いことがわかる。

 その他の品目について、クレジットカードの利用が多いのは「通勤・通学定期券代」(58%)、「NHK放送受信料(BSを含む)」(49%)である。ただし後者は、口座からの自動引落しの利用も40%いる。一方、現金の利用割合が比較的多い品目は、「駐車場代金」(41%)や「塾、習い事月謝」(35%)である。

図3-2 定期的に支払う品目の支払方法

(注)サンプル数は全体で2,403。品目名の横の括弧内は、その品目を支払った人の割合を示しており、グラフは支払ったサンプルを100とした時の各支払方法の利用者の割合を示している。

3.3.購入頻度の低い品目

Q18.時折支払いが発生するような、以下の商品やサービスについて、あなたは過去5年の間に購入しましたか。購入した場合、どの手段で支払いましたか。複数回購入した場合には、直近の支払いについてお答えください。(それぞれ1つずつ)

(1)住宅設備修繕・維持
(2)家電
(3)家具、寝具、室内装飾品(照明器具、じゅうたん、カーテン等)
(4)自動車、自転車等車両購入費
(5)お布施、冠婚葬祭関連費用

 次に、比較的に購入の頻度が低いと思われる品目をみる。本設問については、過去5年における直近の支払いを回答してもらったため、同一の回答者が期間内に複数回購入していないものと仮定し、「支払った人の割合」は実データの値の5分の1に修正している(図3-3)。その直近の支払いにおいて、現金、クレジットカード、キャッシュカードで振込、インターネットバンキングで振込、その他の現金以外の方法のうち、どの方法を利用したかをまとめた(注7)

 「家電」や「家具、寝具、室内装飾品」はクレジットカードで支払った人の割合が多く、それぞれ82%、79%となっている。一方、「お布施、冠婚葬祭関連費用」は94%の人が現金を利用している。また、「住宅設備修繕・維持」、「自動車、自転車等車両購入費」はクレジットカードと現金の利用者の割合がそれぞれ4割前後となっている。

図3-3 購入頻度の低い品目の支払方法

(注)サンプル数は全体で2,403。品目名の横の括弧内は、過去5年間でその品目を購入した人の割合を5分の1に修正して示している。グラフは購入者を100とした時の各支払方法の利用者の割合を示している。

3.4.最近利用が増えている品目

Q20.以下のサービスについて、あなたは、過去1年の間に利用しましたか。利用した場合、どの手段で支払いましたか。複数回購入した場合には、直近の支払いについてお答えください。(それぞれ1つずつ)

(1)シェアリング(カーシェア、クラウドファンディング等)
(2)有料のオンライン娯楽サービス(動画・音楽の定額配信サービス、電子書籍・雑誌・コミックの定額配信サービス等)

 つづいて、最近利用が増えていると思われる品目をみる。過去1年間に「シェアリング(カーシェア、クラウドファンディング等)」を利用した人は全体の6%、「有料のオンライン娯楽サービス(動画・音楽の定額配信サービス、電子書籍・雑誌・コミックの定額配信サービス等)」を利用した人は36%であった。

 利用した人において、その直近の支払いに、現金、クレジットカード、QRコード・バーコード決済、その他の現金以外の方法のうち、どの方法を利用したかを図3-4にまとめた(注8)

 いずれも8割以上の人がクレジットカードを利用しており、現金の利用割合は少ない。

図3-4 最近利用が増えている品目の支払方法

(注)サンプル数は全体で2,403。品目名の横の括弧内は、過去1年間にその品目を利用した人の割合を示しており、グラフは利用したサンプルを100とした時の各支払方法の利用者の割合を示している。

3.5.保険料及び税金

Q19.以下の保険料・税金を、あなたはどのような手段で支払いましたか。直近の支払いについてお答えください。(それぞれ1つずつ)

(1)火災・地震保険料
(2)自動車等保険料
(3)民間会社の医療保険料
(4)貯蓄型保険料
(5)社会保険料(年金保険料や健康保険料)
(6)所得税
(7)住民税
(8)その他の税金

 さらに、保険料及び税金の支払いをみる。それぞれを支払った人において、直近の支払いに、現金、クレジットカード、口座から自動引落し、給与天引き、その他の現金以外の方法のうち、どの方法を利用したかを図3-5にまとめた(注9)

 「自動車等保険料」、「民間会社の医療保険料」、「火災・地震保険料」、「貯蓄型保険料」といった民間の保険料の支払いについてはクレジットカードあるいは口座から自動引き落としが多く、合わせて8割前後の人が利用している。一方、社会保険料や税金に関しては「給与天引き」の割合が多い。これは企業で働く被雇用者が多いためだと考えられる。また、その他の税金については「現金」で支払う人も3割程度いる。

図3-5 保険料及び税金の支払方法

(注)サンプル数は全体で2,403。項目名の横の括弧内は、支払った人の割合を示しており、グラフは支払ったサンプルを100とした時の各支払方法の利用者の割合を示している。

4.個人の消費支出額におけるキャッシュレス決済比率

4.1.全体のキャッシュレス決済比率

 本アンケートの調査結果をもとに、キャッシュレス決済比率を試算する。ここでのキャッシュレス決済比率とは、「現金を利用しないすべての決済手段により支払われた消費支出の合計」を「全体の消費支出」で除したものである。

 試算の結果、全体のキャッシュレス決済比率は70.6%となった(表4-1)。内訳をみると、クレジットカードが最も多く41.1%、口座引き落としが10.0%、QRコード・バーコード決済が8.1%と続く。また、銀行口座間送金に当たる項目を合計すると、13%ほどである(表4-1*がついた4項目の合計)。

 ただし、本アンケート調査は対象の年齢層を1879歳に限定していること、インターネット調査であるためキャッシュレス決済に比較的親和性の高い人が回答しているなどのサンプルの特性により、キャッシュレス決済比率が高めに推計されている可能性がある。

 また、本試算は、アンケート調査で得られた購入時の支払方法ごとの人数の比率に、全国家計構造調査(2019年)の支払金額を乗じて、支払方法別の支出額を算出している。本来であれば、アンケート調査項目として各人が支払った金額を調査する必要があるが、過去の支払金額がいくらであったかを聞くことは現実的でないことから、そこまでの調査を実施していないことに留意が必要である。

 経済産業省の2022年の試算によると、民間最終消費支出におけるキャッシュレス決済比率は全体で36.0%であった。内訳はクレジットカードが約30.4%、コード決済が2.6%、電子マネーが2.0%、デビットカードが1.0%となっており、いずれも本試算より低い数値となっている(注10)

 両者の計数に差が生じている理由は、上述した本調査サンプルの特性に加えて、本試算でいくつかの改善がなされている点にあると考えられる。 経済産業省が20184月に策定した「キャッシュレス・ビジョン」では、キャッシュレス決済比率の論点として、①分母に持ち家の帰属家賃が含まれている、②分子に銀行口座間送金が含まれていない、③分子にスマートフォンアプリ等を活用した支払が含まれていない、④分子にコーポレートカードの利用額が含まれている、の4点が指摘されている。このうち③の問題点については、経済産業省の試算でもキャッシュレス推進協議会「コード決済利用動向調査」に基づくコード決済額が計上されるようになったため、現時点では解決したと思われる。

 一方、本調査のキャッシュレス決済比率は、③のQRコード・バーコード決済やタッチ決済を計上していることに加えて、①の帰属家賃は含まず、また、②の銀行口座間送金を計上していることから、①~③の問題は生じていない。また、④については、基本的に個人の消費を聞いており、コーポレートカードの支払いが含まれている割合は小さいと考えられる。

 なお、次章では、同じ調査手法をとった5年前の同調査の結果との比較をまとめており、インターネット調査のサンプル特性を踏まえた上で、キャッシュレス化が着実に進展していることが確認できる。

4.2.世帯の年間収入階層別にみたキャッシュレス決済比率

 全体のキャッシュレス決済比率を算出する過程で、世帯の年収階層別のキャッシュレス決済比率についても算出した。その結果、おおむね世帯年収が高くなるにつれて、キャッシュレス決済比率は若干高くなる傾向がみられた(図4-2)。

4.3.試算の方法

 キャッシュレス決済比率の試算方法については、以下のとおりである。

① 世帯の年間所得階層別に、品目ごとの支払方法の割合を算出する。支払方法別の割合は、図3-13-4で示しているが、実際には、世帯の所得階層ごとの計数を使用している。また、保険料と税金は全国家計構造調査と同様、消費支出から除いている。

② ①に、2019年全国家計構造調査から得られる、年間収入階層別の品目ごとの1か月あたり平均の世帯消費支出額(単身世帯を含めた総世帯ベース)を乗じることで、品目ごとの支払方法別の支出額を算出する。もっとも、全国家計構造調査の品目数と本アンケート調査の品目数を比べると、全国家計構造調査の方が多い。そのため、全国家計構造調査の品目を本アンケート調査の品目に振り分けることで、本アンケート調査の品目の消費支出額を年間所得階層別に算出した。

③ 次に、年間所得階層ごとに、支払い方法別の支出金額を全品目で足し上げて、平均1世帯あたりの支払い方法別の支出額を算出した。そのうち、現金以外の支払金額の合計を、消費支出額で除すことで、平均1世帯あたりのキャッシュレス決済比率を世帯の年間所得階層別に求めた。

④ さらに、全体平均のキャッシュレス決済比率の算出にあたっては、全国家計構造調査の世帯年収別の世帯数分布に従い、年間収入階層別の平均支出総額を乗じたものでウェイト付けして、加重平均した。これは日本の所得分布を前提に推計したいと考えたからである。

⑤ なお、本アンケート調査結果では、世帯の年間所得が「わからない」と回答した人の割合も一定程度いる。そのデータも生かすために、所得がわからない人たちの平均支出総額は、全国家計構造調査の全体平均と同じであると仮定した。④と⑤のキャッシュレス決済比率の計数を、本アンケート調査で年収を回答した人と回答しなかった人の割合でウェイト付けして加重平均を算出した。

5.時系列の変化

5.1.2018年調査結果との比較

 本アンケート調査は、20188月にNIRA総研が実施した「キャッシュレス決済実態調査」の2回目の調査であり、調査設計や推計方法も前回のものを踏襲している。そこで、前回2018年調査と今回2023年調査とで結果の比較を行う。

 全体のキャッシュレス決済比率は51.2%から70.6%と19.3%ポイント増加した(表5-1)。内訳としては、「クレジットカード」が10.1%ポイント増加し、「QRコード・バーコード決済」と「スマホやスマートウォッチによるタッチ決済」を合わせた「QRバーコード+タッチ決済」(その他フィンテックサービス)が8.6%ポイント増加、キャッシュカードでの振込が0.5%ポイント増加した。一方、口座引き落としは0.3%ポイント減少した。

表5-1 キャッシュレス決済比率の5年前との比較

(注)サンプル数は2018年が3,000、2023年が2,403。調査対象者は2018年が20~69歳、2023年が18~79歳。2018年の推計では「平成24年住民基本台帳人口要覧」に基づき、性別(男女)、年齢(5 区分)、居住地(6地域)別の回答者数の構成比を算出し、その分布に基づいてサンプルを回収した。2023年の推計の詳細は8章を参照のこと。「QRバーコード+タッチ決済」(「QRコード・バーコード決済」と「スマホやスマートウォッチによるタッチ決済」の合計)は、2018年調査では「その他フィンテックサービス」としてたずねた。

 なお、前回調査との違いとして、①調査対象が2069歳から1879歳に拡大している、②サティスファイサー(省力回答者)を除外するトラップ設問を設け、正答者のみを集計している、③集計の際のウェイトに有職・無職比率を考慮している、④支払手段として前回調査で聞いていた「その他のフィンテックサービス」に替わり「QRコード・バーコード決済」、「スマホやスマートウォッチによるタッチ決済」を追加し、「仮想通貨」を「NFT・暗号資産」に変更している、⑤品目に前回調査にはなかった「航空運賃」、「有料道路料」を追加している点に留意されたい。

5.2.コロナ禍の前後での支払方法の変化

Q15.あなたは、コロナ禍の前後で支払いの方法が変わったと思いますか。(1つだけ)

(1)コロナ禍以前から主に現金で支払っており、今も変わらない
(2)コロナ禍以前は主に現金で支払っていたが、現金以外(キャッシュレス)で支払う方が多くなった
(3)コロナ禍以前から主に現金以外(キャッシュレス)で支払っており、今も変わらない
(4)コロナ禍以前は主に現金以外(キャッシュレス)で支払っていたが、現金で支払う方が多くなった
(5)わからない・覚えていない

 新型コロナウイルスの感染対策として、ソーシャルディスタンスや外出等の行動制限が要請された中で、オンラインサービスの利用が活発化するなど、人びとの消費行動にも変化があったと考えられる。そこで今回のアンケート調査では、コロナ禍の前後での支払方法の変化についてもたずねた。

 全体として、「コロナ禍以前から主に現金以外(キャッシュレス)で支払っており、今も変わらない」と答えた人の割合は52%で、2018年時点のキャッシュレス決済比率に近い値である(図5-2)。「コロナ禍以前は主に現金で支払っていたが、現金以外(キャッシュレス)で支払う方が多くなった」と答えた人の割合は23%で、「コロナ禍以前から主に現金で支払っており、今も変わらない」人の割合は20%となっている。

 年齢階層別にみると、1829歳は現金からキャッシュレスに切り替えた人の割合が42%と、他の年齢層より多い。他の年齢層は全体平均の構成と大きな違いはみられない。

 所得階層別にみると、所得が高いほどコロナ禍以前からキャッシュレスを主に使い、現在も変わらないという人の割合が多い。1,000万円未満の層では現金からキャッシュレスに切り替えた人の割合は2225%で大きな違いはないが、400万円未満の層ではコロナ禍前後で変わらず現金を主に使う人の割合が25%程度と若干多い。

図5-2 コロナ禍の前後での支払方法の変化

(注)サンプル数は全体で2,403。

6.キャッシュレスに対する意識

 今回の調査では、キャッシュレスに関連する最近の論点についてもたずねた。

 まず、昨今様々な国で議論されている「中央銀行デジタル通貨(CBDCCentral Bank Digital Currency)」について、人びとがどの程度関心があるかを探るべく、以下の質問をたずねた(注11)

Q21.あなたは、「CBDC」という言葉を知っていますか。(1つだけ)

(1)知っている
(2)聞いたことはあるが内容はよくわからない
(3)知らない

 CBDCを「知っている」と答えた人の割合は3%で、「(2)聞いたことはあるが内容はよくわからない」と合わせても10%であった(図6-1)。現在のところ、人びとの関心はそれほど高くないことがうかがえる。

図6-1 CBDCへの認識

(注)n=2,403

 次に、20234月から解禁された「デジタル給与(給与デジタル払い)」について、個人の考えをたずねた。

Q22.20234月から給与を電子マネーで受け取ることができるようになりました。あなたは給与の一部または全てを、現金の代わりに電子マネーで受け取りたいと思いますか。(1つだけ)

(1)全額受け取りたいと思う
(2)一部受け取りたいと思う
(3)受け取りたいとは思わない
(4)そもそも、給与の受け取りはない

 「そもそも、給与の受け取りはない」と答えた人を除いたサンプルで集計したところ、給与を電子マネーで「全額受け取りたいと思う」人の割合は3%で、「一部受け取りたいと思う」と合わせても16%にとどまった(図6-2)。しかし、1829歳の層では、「全額受け取りたいと思う」人が5%、「一部受け取りたいと思う」人が23%と、3割近くがデジタル給与に興味を示している。

図6-2 デジタル給与の受け取りの希望

(注)サンプルは全体で1,563。18~29歳は259、30代は266、40代は372、50代は311、60歳~79歳は355 。

7.ポイントサービスに対する意識

 図1-1-2において、ポイントサービスを「よく利用している」人が48%、「ときどき利用している」人が41%いた。ここからは、ポイントサービスに対する意識について掘り下げていく。

 まず、ポイントサービスの利用状況を把握するべく、以下の2つの質問をたずねた。

Q23.あなたは何種類のポイントサービスを利用していますか。(1つだけ)

(1)利用していない
(2)1種類
(3)24種類
(4)59種類
(5)10種類以上
(6)把握していない

Q24.あなたは複数の加盟店・企業等が連携する共通ポイントサービス(楽天ポイント、PayPayポイント、dポイント等)を利用していますか。航空会社のマイレージ等個別企業によるポイントサービスは含みません。(1つだけ)

(1)よく利用している
(2)ときどき利用している
(3)ほとんど利用していない
(4)全く利用していない

 利用しているポイントサービスの数については、「24種類」と答えた人の割合が最も多く55%で、次いで「59種類」が29%であった(図7-1)。ほとんどの人が複数種類のポイントサービスを利用している。

 共通ポイントサービスの利用については、「よく利用している」と答えた人の割合が52%、「ときどき利用している」人は38%で非常に多い(図7-2)。ただし、年齢別にみると、年齢が上がるにつれて「よく利用している」と答えた人の割合が下がる傾向にある。所得階層別では所得が高いほど共通ポイントをよく利用している傾向がみられる。

図7-2 共通ポイントサービスの利用

(注)サンプル数は全体で2,403。

 次に、ポイントサービスについての考え方を把握するため、以下の質問をたずねた。

Q25.あなたはポイントに関して、どのような考えを持っていますか。(いくつでも)

(1)ポイントサービスが好き
(2)ポイントサービスの内容について詳しく知っている
(3)キャッシュバック感覚でポイントを貯めている
(4)節約意識からポイントを貯めている
(5)ポイントカードの有無でお店を選ぶことが多い
(6)ポイントを貯める時には交換したい商品や金額の目標がある
(7)ポイントキャンペーンではいつもより高い商品を選んだりまとめ買いしたりする
(8)ポイントが貯まることが楽しい
(9)ポイントサービスがあれば必ず使う
(10)利用するポイントサービスは集約させている
(11)貯まったポイントを有効活用している
(12)貯まったポイントを交換することが楽しい
(13)貯まったポイントは自分の好きなものに使うことが多い
(14)ポイントサービスを意識していない

 複数回答可としたこの質問において、最も多く挙げられたのは、「ポイントサービスが好き」(46%)、「ポイントが貯まることが楽しい」(45%)で、ポイントサービス自体に楽しさを見出している人が多いことがわかる(図7-3)。つづいて挙げられたのは「貯まったポイントを有効活用している」(42%)、「キャッシュバック感覚でポイントを貯めている」(41%)、「節約意識からポイントを貯めている」(40%)で、ポイントサービスに経済的なメリットを感じている人も多い。

 さらに、貯まったポイントの使い道についてもたずねた。

Q26.貯まったポイントをどのように使っていますか。(いくつでも)

(1)支払時の値引きに使用
(2)景品またはサービスとの交換
(3)現金、金券類との交換
(4)抽選券と交換
(5)社会貢献等の寄付と交換
(6)金融商品への投資に使用
(7)その他

 ポイントの使い道として最も多かったのは、「支払時の値引きに使用」で86%、次いで「現金、金券類との交換」が38%、「景品またはサービスとの交換」が23%となっている(図7-4)。

図7-4 ポイントの利用方法

(注)サンプルはQ23でポイントサービスを「利用していない」と答えた人を除く2,370。

Ⅱ調査概要

1.調査の趣旨・目的

 キャッシュレス決済に関するアンケート調査は、個人の消費における決済に関してファクトファインディングを整理し、消費行動の実態に即したキャッシュレス決済比率を推計することを目的としたものである。コロナ禍を経ての日本のキャッシュレス化の進展やポイント経済圏の現状などを把握し、今後の金融サービスのあり方について議論する上で役立つものと期待される。

 本調査は、201889日~814日に実施した「キャッシュレス決済実態調査」に続く、第2回目の調査である。5年間でのキャッシュレス社会の進展状況や消費者の意識の変化を分析することが可能である。

2.調査名

 「キャッシュレス決済に関するアンケート」

3.主な調査項目

・日常的に利用する支払手段
・品目別の直近に利用した支払手段
・利用したい支払手段
・現金を利用したい理由
・普段持ち歩く現金の金額
・ポイントサービスの利用状況
・ポイントサービスへの考え方

4.調査期間

 2023年823日(水)~2023828日(月)

5.調査方法

(1)実施方法:インターネット調査(注12)
(2)調査機関:株式会社日経リサーチ
(3)調査対象者:日経リサーチモニター、提携モニター併用

6.回収数

 総数:3,000
 うち有効回答数(トラップ設問をクリアした人)は2,403(注13)

7.本報告書の集計方法

 集計結果の代表性を保つために、本報告書では総務省「国勢調査(2020年)」および「労働力調査(2022年)」を母集団とみなして、サンプリングバイアスを補正するために母集団ウェイトを作成した。具体的には、「国勢調査(2020年)」の18歳以上79歳以下の日本在住者に限定した性別(男性、女性)、年齢階層(1839歳、4059歳、60歳以上の3階層)、居住地域(東日本、京浜、中日本、阪神、西日本の5地域)、および「労働力調査(2022年)」の労働力状態(有職か無職か)の分布をもとに、レイキング法によりウェイトを作成した(注14)。本報告書の集計結果は、上述した母集団ウェイトを用いて集計したものである。

8.回答者の属性

9.研究体制

翁百合   NIRA総研理事/日本総合研究所理事長
神田玲子  NIRA総研理事・研究調査部長
関島梢恵  NIRA総研研究コーディネーター・研究員
鈴木壮介  NIRA総研研究コーディネーター・研究員

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)NIRA総合研究開発機構(2023)「キャッシュレス決済実態調査2023(速報)」

脚注
1 トラップ設問とは、質問文を注意深く読まず回答する回答者を検出するための設問である。本調査では、「この項目には、「2.おおよそ違うと思う」を選択してください」というトラップ設問を用意し、当該設問で「2.おおよそ違うと思う」を選択した人の回答を有効回答とした。
2 集計方法については「Ⅱ.調査概要」を参照のこと。なお、図表では小数点第1位あるいは小数点第2位以下を四捨五入した値を表示している。そのため、全体で100%となる図表において、表示されている内訳の数値を足し合わせても100%にならない場合があることに留意されたい。
3 学生は、クレジットカードを「全く利用しない」と答えた人の割合が約30%と、全体平均より多い。
4 学生でQRコード・バーコード決済を利用している人の割合は85%と顕著に多く、「全く利用しない」と答えた人は11%にとどまる。
5 その他の現金以外の方法には、「デビットカード」、「スマホやスマートウォッチによるタッチ決済」、「ATM・銀行窓口にてキャッシュカード等で支払先の口座に振込」、「インターネットバンキングにて支払先の口座に振込」、「NFT・暗号資産」、「その他の方法で現金以外の方法を利用」が含まれる。
6 その他の現金以外の方法には、「デビットカード」、「プリペイド式の電子マネー」、「QRコード・バーコード決済」、「スマホやスマートウォッチによるタッチ決済」、「ATM・銀行窓口にてキャッシュカード等で支払先の口座に振込」、「給与天引き」、「インターネットバンキングにて支払先の口座に振込」、「その他の方法で現金以外の方法を利用」が含まれる。
7 その他の現金以外の方法には、「デビットカード」、「プリペイド式の電子マネー」、「QRコード・バーコード決済」、「スマホやスマートウォッチによるタッチ決済」、「NFT・暗号資産」、「その他の方法で現金以外の方法を利用」が含まれる。
8 その他の現金以外の方法には、「デビットカード」、「プリペイド式の電子マネー」、「スマホやスマートウォッチによるタッチ決済」、「ATM・銀行窓口にてキャッシュカード等で支払先の口座に振込」、「インターネットバンキングにて支払先の口座に振込」、「NFT・暗号資産」、「その他の方法で現金以外の方法を利用」が含まれる。
9 その他の現金以外の方法には、「デビットカード」、「プリペイド式の電子マネー」、「QRコード・バーコード決済」、「スマホやスマートウォッチによるタッチ決済」、「ATM・銀行窓口にてキャッシュカード等で支払先の口座に振込」、「インターネットバンキングにて支払先の口座に振込」、「その他の方法で現金以外の方法を利用」が含まれる。
10 本調査の調査時点(2023年8月)とずれがあり、キャッシュレス化が現在も進行していることが差異に影響した可能性もある。
11 中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは、(1)デジタル化されていること、(2)円などの法定通貨建てであること、(3)中央銀行の債務として発行されること、の3つを満たすものとされる。日本は現時点でCBDCを発行する計画はないが、日本銀行では今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、実証実験などを行っている。(日本銀行ホームページより)
12 2020年の総務省『国勢調査』の結果に基づき、性別(2分類)、年齢(5分類)、地域(6分類)について、人口構成比に応じて割り付け(合計60セル)を実施した。
13 トラップ設問については注1参照のこと。
14 ここでの有職の定義は、「通学のかたわらに仕事」を除く就業者として、家事のかたわらに仕事、休業者を含むものとした。本調査では職業をたずねる設問にて、休職者には休職前の職業を答えてもらい、学生や家事のかたわらにパートタイムで就労している人にもそれぞれ選択肢を用意した。

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構

※本誌に関するご感想・ご意見をお寄せください。E-mail:info@nira.or.jp

研究の成果一覧へ