大久保敏弘
慶應義塾大学経済学部教授
NIRA総合研究開発機構

 慶應義塾大学経済学部大久保敏弘研究室、(公財)NIRA総合研究開発機構では、「第5回テレワーク(注1)に関する就業者実態調査(注2)」を実施した。本調査は、新型コロナウイルスの感染拡大による、全国の就業者の働き方、生活、意識の変化や、業務への影響等の実態を捉えることを目的に実施したものである。調査は2021年9月4日(土)~22日(水)にかけて行われた。回収数は10,644件であり、うち過去の同調査からの継続回答は8,455件である。速報結果は以下のとおり。詳細版は2021年12月を目途に公表する予定である。

INDEX

ポイント

●2021年9月1週目時点の全国の就業者のテレワーク利用率は17%(東京圏28%)となった。2020年6月以降は、ほぼ同水準で推移している。2回目以降の緊急事態宣言発令中やオリンピック開催中も、テレワーク利用率に大きな変化はない。しかし、テレワーク利用頻度は緩やかに増加してきており、テレワークと出社を組み合わせた働き方のバランスが、全体としては、テレワークの比重が高い方向にシフトしている。

●テレワークで仕事の効率が低下する要因として、仕事の特性上テレワークが困難であること、コミュニケーションの悪化、自宅環境に課題があることを回答する人の割合が高い。一方、テレワークで仕事の効率が上昇する要因として、疲労の軽減、仕事の特性上テレワークが向いていること、自宅環境の良さを回答する人の割合が高い。

●ICTツールの活用状況は、2021年9月時点で、テレワーク利用者は85%である一方、テレワークを利用していない人は26%と、テレワーク利用者のICT利用率が顕著に高い。時系列の変化として、オフィス勤務者のICTツールの利用が広がっており、全体のICT利用率が徐々に上昇している。

●新型コロナウイルスの感染経験のある人は、感染経験のない人よりも、メンタルヘルスが悪く、また、経済的な困窮への不安を感じている。また、ワクチンの接種状況に性別による差はないが、年齢が若いほど接種完了率が低い傾向にある。「接種しない」と回答した人の割合は年齢が若いほど大きく、10~20代では23%にのぼる。

●自身の仕事がグリーン・ジョブに該当する人(一部が該当する人も含む)の割合は、就業者全体の31%であった。特に、環境問題への意識の向上や、リサイクルなどの活動が比較的行われている。グリーン・ジョブに携わる人が、仕事の中でグリーン・ジョブに費やす時間の割合は、10%と回答した人が最も多かった。

図表

図表1 全国および東京圏のテレワーク利用率
図表1-1 居住都道府県別でみたテレワーク利用率-新型コロナウイルス感染拡大前、第1回緊急事態宣言時、直近時点の比較-
図表1-2-1 産業別でみたテレワーク利用率
図表1-2-2 産業別(抜粋)でみたテレワーク利用率の推移
図表1-3-1 所得階層別でみたテレワーク利用率
図表1-3-2 所得階層別でみたテレワーク利用率の推移
図表2-1 通常の職場で勤務している人の出社頻度
図表2-2 テレワーク利用者の利用頻度
図表3a 仕事の効率(2021年9月、テレワーク利用別)
図表3b テレワーク利用者の仕事の効率の変化
図表3-1 テレワークで仕事の効率が低下する要因
図表3-2 テレワークで仕事の効率が上昇する要因
図表4-1 ICTツールの活用状況(テレワーク利用別)
図表4-2 ICTツールの活用状況
図表4-3 目的別のICTツール活用状況(テレワーク利用別)
図表4-4 個別ICTツールの活用状況(テレワーク利用別)
図表5-1 2019年度国民生活基礎調査のK6の合計点の分布(12歳以上)
図表5-2 2019年度国民生活基礎調査のK6の合計点の分布 有業人員(15歳以上)
図表5-3 K6の分布
図表5-4 性別、年齢階層別でみたK6の分布(2021年9月)
図表6-1 新型コロナウイルスの感染経験とK6の分布
図表6-2 新型コロナウイルスの感染経験と経済的な困窮への不安
図表7 新型コロナワクチンの接種状況(2021年9月時点)
図表8 新型コロナウイルスの感染や影響の予測
図表9-1 グリーン・ジョブに携わっている人の割合
図表9-2 グリーン・ジョブに携わっている人の割合(分類別)
図表9-3 グリーン・ジョブに携わっている人の割合(産業別)
図表9-4 グリーン・ジョブに費やす時間の割合(グリーンジョブに携わっている人のみ)

調査概要

調査方法:インターネット調査(スクリーニング調査・本調査)。回収目標数を10,000サンプルとして、過去の調査と同様のスクリーニング調査、割付を行ったうえで、配信し、回収した。(注3)
調査機関:株式会社日経リサーチ
調査対象者:調査会社に登録しているインターネット調査登録モニター
調査対象:以下の(ア)および(イ)に対して調査を実施した。
 (ア) 第1回から第4回調査の回答者
 第1回から第4回調査の回答者の合計である15,569サンプルすべてを調査対象とした。
 (イ) 第5回調査から参加する就業者
回収数:10,644件、うち、過去の調査からの継続回答は8,455件、本調査から参加する新規回答は2,189件。
調査期間:2021年9月4日(土)~22日(水)

研究体制

大久保敏弘 慶應義塾大学経済学部教授/NIRA総研上席研究員
加藤究   フューチャー株式会社 シニアアーキテクト/NIRA総研上席研究員
神田玲子  NIRA総研理事・研究調査部長
井上敦   NIRA総研研究コーディネーター・研究員
関島梢恵  NIRA総研研究コーディネーター・研究員
安藤航平  慶應義塾大学経済学研究科修士課程在籍

1. テレワーク利用率

Q10. あなたは以下の時期に通常業務でテレワークを利用していましたか。(ひとつだけ)

(1) 9月1週目(8月30日~9月5日)
(2) オリンピック期間中(7月23日~8月8日)
(3) オリンピック前(7月上旬)

 全国でテレワークを利用していた人の割合は、2021年9月1週目時点で17%となった。

 時系列でみると(図表1)、新型コロナウイルス感染拡大前の2020年1月ではわずか6%だったが、1回目の緊急事態宣言が出された4~5月は25%まで大幅に上昇した。緊急事態宣言の解除後の6月には17%に低下し、その後、緊急事態宣言発令中やオリンピック開催中も、テレワーク利用率に大きな変化はない。新型コロナウイルス感染拡大前と比べると、テレワークが一定程度普及する一方、「頭打ち状態」にもなっていることがわかる。

 また、東京圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)のテレワーク利用率(居住地ベース)は、2021年9月1週目時点で28%となり、全国平均と比較して11%ポイント高い。全国平均との差は、2020年6月以降、安定的に推移している。(注4)

図表1 全国および東京圏のテレワーク利用率

全国 (2020年1~3月:n=10,516、4~6月:n=12,138、9~12月:n=10,523、2021年1~4月:n=9,796、7~9月:n=10,644)
東京圏 (2020年1~3月:n=3,467、4~6月:n=4,049、9~12月:n=3,514、2021年1~4月:n=3,261、7~9月:n=3,539)
(注) 緊急事態宣言は東京都に発令されていた期間を示している。

1.1. 居住都道府県別でみたテレワーク利用率

 以下では、属性別にテレワーク利用率をみていく。帯グラフでは、コロナ禍前の2020年1月時点、全国的にテレワーク利用が最も進んだ1回目の緊急事態宣言時の2020年4~5月、直近の2021年9月1週目の3時点の結果を示している。

 居住都道府県別でみると(図表1-1)、2021年9月1週目時点で高い順に、東京都33%、神奈川県27%、埼玉県22%、千葉県21%となり、東京圏での利用率が高い。東京圏でみると、2020年4~5月のピーク時より10%ポイントほどテレワーク利用率が減少した。新型コロナウイルス感染拡大前の2020年1月と比べると、石川県、島根県を除く、すべての都道府県で、テレワーク利用率が上昇している。

図表1-1居住都道府県別でみたテレワーク利用率
-新型コロナウイルス感染拡大前、第1回緊急事態宣言時、直近時点の比較-

(注) nは2021年9月時点のサンプルサイズを示している。軸からグレー、青、点線枠の白の順に積み上がっているのは、2020年1月時点より2020年4~5月時点の利用率が高く、その後、2021年9月時点では減少したことを示す。また、第1層が青になっている県(例:石川県)では、2020年1月時点よりも、2021年4月時点の水準が低くなっていることを、また、第2層が白になっている県(例:岩手県)では、2020年4~5月時点の水準よりも、2021年9月時点の水準が高くなっていることを示す。

1.2. 産業別でみたテレワーク利用率

 テレワーク利用率を産業別にみると(図表1-2-1)、2021年9月1週目時点で、高い順に、「通信情報業」 49%、「情報サービス・調査業」 45%、「金融・保険業」 30%、「製造業」 24%となった。他方、低い方をみると、「運輸業」 7%、「医療・福祉」 5%、最も低いのは「飲食業、宿泊業」で4%となった。

 時系列でみると(図表1-2-2)、1回目の緊急事態宣言時に、テレワーク利用率を大きく伸ばした産業として、「通信情報業」、「金融・保険業」、「教育・学習支援業」、「電気・ガス・水道・熱供給業」、「製造業」、「公務」などがある。この中で、「通信情報業」は緊急事態宣言解除後もテレワーク利用率は高い水準で推移しているが、他の産業は解除後に揺り戻る傾向が強い。「公務」は2回目の緊急事態宣言後にもテレワーク率の低下がみられる。これらの産業では、テレワークは実施可能なものの、定着させることが大きな課題となっているものと思われる。一方、「飲食業・宿泊業」、「医療・福祉」では、1回目の緊急事態宣言時にテレワーク利用率が上昇せず、その後も低迷している。

図表1-2-1 産業別でみたテレワーク利用率

(注) nは2021年9月時点のサンプルサイズを示している。

図表1-2-2 産業別(抜粋)でみたテレワーク利用率の推移

(注) 緊急事態宣言は東京都に発令されていた期間を示している。

1.3. 所得階層別でみたテレワーク利用率

 所得階層別にみると(図表1-3-1)、2021年9月1週目時点では、年収が高くなると、テレワーク利用率も高くなる傾向がみられる。年収400万円未満の所得階層のテレワーク利用率は15%以下である一方で、年収700万円以上では30%以上となり、大きな差が生じている。

 時系列でみると(図表1-3-2)、1回目の緊急事態宣言期間の2021年4~5月に、所得階層間のテレワーク利用率に大きな差が生じ、解除直後にその差はやや縮小したものの、その後現在まで、一定の格差が改善されないまま残っている。

図表1-3-1 所得階層別でみたテレワーク利用率

(注) nは2021年9月時点のサンプルサイズを示している。

図表1-3-2 所得階層別でみたテレワーク利用率の推移

2. 通常の職場での勤務とテレワークによる勤務の頻度

Q11. あなたは以下の時期に、通常の職場に出勤しての勤務とテレワーク勤務を、どのぐらいの頻度で行いましたか。なお「通常の職場に出勤しての業務」には「自営業など通常の職場と自宅が同じ場合」も含みます。

(1) 9月1週目(8月30日~9月5日)
(2) オリンピック期間中(7月23日~8月8日)
(3) オリンピック前(7月上旬)

 通常の職場で勤務している人(テレワーク利用者含む)の出社頻度をみると(図表2-1)、2021年9月1週目時点で、「週5日以上」の割合は60%、週2~4日が30%、週1日以下が10%となった。時系列でみると、週5日以上出社している人の割合が減っており、出社している人は、徐々に出社頻度を減らしていることがわかる。

 次に、テレワーク利用者のテレワーク利用頻度をみると(図表2-2)、2021年9月1週目時点で、「週5以上」の割合は26%、週2~4日が52%、週1日以下が22%となった。1回目の緊急事態宣言が解除された直後の2020年6月から9月にかけてテレワークの利用頻度が低下したが、その後は、テレワークを週5日以上利用している人の割合が増えるなど、緩やかにテレワーク利用の頻度が増加してきている。

 2020年6月以降、テレワーク利用率自体に大きな変化はないが、出社頻度の低下の裏で、テレワーク利用者のテレワーク利用時間が増えている。テレワークと出社を組み合わせた働き方のバランスが、全体としては、テレワークの比重が高い方向にシフトしていることがわかる。

図表2-1 通常の職場で勤務している人の出社頻度

図表2-2 テレワーク利用者の利用頻度

3. 仕事の効率の変化

Q15. 新型コロナウイルスの感染拡大の出来事がなく、9月1週目に通常通りの勤務をしていた場合を想像してください。通常通りの勤務に比べて、時間あたりの仕事のパフォーマンス(仕事の効率)はどのように変化したと思いますか。通常通り勤務していた場合の仕事の成果を100とした場合の数字でお答えください。たとえば、仕事のパフォーマンスが1.3倍になれば「130」、半分になれば「50」となります。上限を「200」としてお答えください。

 Q15の回答の分布をテレワーク利用別にみると、図表3aのようになった。テレワーク利用者については、2021年9月1週目時点で、通常勤務と変わらない100と回答した人の割合は40%であり、70~100が67%を占め、110~130が10%を占めた。また、テレワークを利用していない人では、100と回答した人の割合は58%であり、効率性が大きく低下している人も一部み

られる。

 テレワーク利用者の回答結果の分布を時系列でみると(図表3b)、2020年6月から12月にかけて、100を回答した人の割合が増加し、その後、12月から2021年9月にかけては、ほとんど変化がみられない。

図表3a 仕事の効率(2021年9月、テレワーク利用別)

(テレワークを利用している:n=1,861、テレワークを利用していない:n=8,487)

図表3b テレワーク利用者の仕事の効率の変化

(2020年3月:n=1,030、6月:n=2,122、12月:n=1,647、2021年9月:n=1,861)

3.1. テレワークで仕事の効率が変化する要因

Q16. あなたの時間あたりの仕事のパフォーマンス(仕事の効率)は、テレワークによって低下しましたか。以下の低下要因のうち、当てはまるものを選んでください。(最大5つまで)

Q17. あなたの時間あたりの仕事のパフォーマンス(仕事の効率)は、テレワークによって上昇しましたか。以下の上昇要因のうち、当てはまるものを選んでください。(最大5つまで)

 テレワークには、仕事の効率を改善させる要因も、悪化させる要因もあると考えられる。本調査では、テレワーク利用者が認識しているテレワークのプラスとマイナスの要因について、テレワーク利用者全員に聞いた(図表3-1、3-2)。

 仕事の効率性を低下させる要因として、「その他・該当するものはない」を除き、回答割合が高かった順に、「リモートではできない仕事が多い」 23%、「コミュニケーション方法が、メール、チャット、ビデオ会議などになり、コミュニケーションがとりにくくなった」 18%、「テレワークにより、同僚・部下とのコミュニケーションが不足しがちになった」 18%、「自宅には、パソコン、プリンター、机など、仕事をするための適切な機器・設備がない」 14%となった。これらを含め、上位から中位には、仕事の特性上テレワークが困難であることや、コミュニケーションの悪化、自宅環境に課題があることが並んだ。一方、テレワークでは仕事のプロセスがみえにくくなるために成果主義の導入が進み、効率性に影響を及ぼすと指摘されることがあるが、「テレワークにより、仕事の成果に対するプレッシャーが強くなった」は4%と最も低く、仕事の効率を低下させる要因にはなっていないようである。

 次に、仕事の効率性を上昇させる要因として、「その他・該当するものはない」を除き、回答割合が高かった順に、「テレワークにより、通勤や業務上の移動が減り、疲労しにくくなった」 22%、「リモートでできる仕事が多い」 22%、「自宅では、静かな部屋で、仕事により集中できる」 17%、「仕事の進め方について裁量が多い」 15%となった。これらを含め、上位から中位には、疲労の軽減、仕事の特性上テレワークが向いていることや、自宅環境の良さに関する項目が並んだ。一方、会議の効率化やコミュニケーションに関する項目については、回答割合が低い。テレワークによるコミュニケーションの変化は、仕事の効率性を低下させる方向には強く働き、上昇させる方向にはほとんど働いていないことが示唆される。

図表3-1 テレワークで仕事の効率が低下する要因

(n=2,088)

図表3-2 テレワークで仕事の効率が上昇する要因

(n=2,088)

4. ICTツールの活用状況

Q18. 2021年9月1週目で、あなたは、通常の職場に出勤しての勤務やテレワークで、以下のどのICTツールを利用していましたか。なお「通常の職場に出勤しての業務」には「自営業など通常の職場と自宅が同じ場合」も含みます。(いくつでも)

 テレワークを促進するうえで不可欠なICTツールが、どの程度利用されているのかを調べた。(注5)

 2021年9月時点で、選択肢に提示したICTツールを少なくとも1つは利用している人の割合(「ICT利用率」、以下同)をテレワーク利用別にみると(図表4-2)、テレワーク利用者は85%である一方、テレワークを利用していない人は26%であり、テレワーク利用者のICT利用率が顕著に高い。(注6)

 次に時系列の変化としては、テレワーク利用率は2020年6月以降、変化がほとんどない一方、ICT利用率は徐々に上昇している(図表4-2)。この要因の1つは、感染症対策として人との接触が抑制される中、オフィス勤務者がICTツールを利用し始めていることがあげられる。図表4-1から、2020年6月時点からの上昇幅は、テレワーク利用者は2%ポイントにとどまる一方、テレワークを利用していない人は8%ポイントと比較的大きい。

図表4-1 ICTツールの活用状況(テレワーク利用別)

図表4-2 ICTツールの活用状況

図表4-3 目的別のICTツール活用状況(テレワーク利用別)

図表4-4 個別ICTツールの活用状況(テレワーク利用別)

目的別にICTツールの利用状況を示した(図表4-3、4-4)をみると、テレワークを利用していない人も、コミュニケーションの円滑化、共同作業の円滑化、業務管理のICT利用率を徐々に伸ばしていることがわかる。

5. メンタルヘルス

 コロナ禍における就業者のメンタルヘルスについて調べた。ここでは、メンタルヘルスの測定するための指標として、K6を用いる。K6は得点が高いほど、メンタルヘルスが悪いと解釈できる指標であり、詳細については脚注を参照されたい。(注7)

 新型コロナウイルス感染拡大前の日本のメンタルヘルスの状態は、『2019年度国民生活基礎調査』の結果で確認できる。(注8)K6の合計点(12歳以上)の得点分布を確認すると、図表5-1のようになり、0~4点が68%、5~9点が17%、10~14点が7%、15点以上が2%であった。また、同調査のK6の合計点の分布を、本調査のサンプルと同様、有業人員(15歳以上)に限定した場合は0~4点が70%、5~9点が18%、10~14点が7%、15点以上が2%であり(図表5-2)、K6の得点分布は図表5-1で示した12歳以上の結果とほとんど変わらない。(注9)

 次に、本調査において計測した2020年3月、6月、12月、2021年4月、9月の5時点でK6の分布の形状を確認する(図表5-3)。その結果、2020年3月から2021年4月にかけて、K6の得点が低い人の割合が増え、全体のメンタルヘルスが大きく改善していることがわかる。以降は時間の経過とともに、K6の得点が3~14点付近の密度が小さくなり、0~3点付近の密度が大きくなっている。すなわち、平均的には、メンタルヘルスが少し悪かった人の状態が改善していると考えられる。ただし、直近の改善の度合いは緩やかになってきている。また、K6の得点が15点以上のメンタルヘルスの悪さが深刻な人は依然として一定数みられる。

 性別、年齢階層別にみると(図表5-4)、性別よりも年齢階層による違いが大きいことがわかる。性別にかかわらず、0~3点では40代以下より50代以上の密度が大きく、10~14点付近ではその逆の傾向が顕著になる。コロナ禍のメンタルヘルスは均一に悪いわけではなく、特に40代以下の人は50代以上の人に比べて、深刻な状態にあるといえる。

図表5-1 2019年度国民生活基礎調査のK6の合計点の分布(12歳以上)

(n=107,384)

図表5-2 2019年度国民生活基礎調査のK6の合計点の分布 有業人員(15歳以上)

(n=61,608)

図表5-3 K6の分布(注10)

(2020年3月:n=10,516、6月:n=12,138、12月:n=10,523、2021年4月:n=9,796、9月:n=10,644)

図表5-4 性別、年齢階層別でみたK6の分布(2021年9月)

(40代以下男性:n=3,298、40代以下女性:n=2,831、50代以上男性:n=2,592、50代以上女性:n=1,923)

6. 新型コロナウイルス感染

 今回の調査では、新型コロナウイルスの感染経験についてもたずねている。有効回答(10,196件)中の新型コロナウイルス感染の経験率は約1.9%だった。厚生労働省「感染症発生動向情報等」から算出した本調査終了時点(2021年9月22日)の日本全体の感染経験率は約1.3%であり、本調査の対象が就業者であるなどの違いはあるものの、おおむね整合的といえる。(注11)今回の調査で、新型コロナウイルスの感染経験がある人は、感染したことのない人と比べると、メンタルヘルスが悪く、経済的な困窮への不安も抱えていることがわかった。

6.1. 新型コロナウイルス感染とメンタルヘルス

 新型コロナウイルスの感染経験の有無別に、2021年9月時点のK6の得点をみると、感染経験のある人は感染経験のない人と比べて、0点付近の密度が小さく、10点以上の密度が大きい(図表6-1)。すなわち、新型コロナウイルスの感染経験のある人は、メンタルヘルスが悪い状態にある。

図表6-1 新型コロナウイルスの感染経験とK6の分布

(感染経験あり:n=195、感染経験なし:n=10,001)

6.2. 新型コロナウイルス感染と経済不安

 新型コロナウイルスの感染経験の有無別に、経済不安の状況をみる。設問は、過去30日間にどれくらいの頻度で、生活が経済的に困窮するという不安を感じたかをたずねている。感染経験者のうち15%の割合の人が、経済的困窮への不安をいつも感じていたと答えており、まったく感じなかった人の割合は30%に満たない。一方で、感染経験のない人ではいつも不安を感じていた人の割合は8%にとどまり、まったく不安を感じなかった人の割合は40%以上であった。新型コロナウイルスに感染した人は、感染経験のない人よりも経済的な困窮への不安を感じているようだ。

 新型コロナウイルス感染は、治癒してからも後遺症に苦しむ人がいることが報告されているが、精神的な健康状態や経済不安といった別の問題にも直面している可能性がある。感染後のケアについて、注意深く議論することが必要だ。

図表6-2 新型コロナウイルスの感染経験と経済的な困窮への不安

(感染経験あり:n=195、感染経験なし:n=10,001)
(注)ここで用いる経済的な困窮への不安に関する設問は次の通りである。「過去30日の間、あなたがどのように感じていたかについておたずねします。それぞれの質問に対して、そういう気持ちをどれくらいの頻度で感じていたか、一番あてはまるものをお答えください。」の質問の1つである「生活が経済的に困窮するという不安を感じましたか」の回答結果を用いる。回答者は「1.いつも」、「2.たいてい」、「3.ときどき」、「4.少しだけ」、「5.まったくない」から1つを選択する形式になっている。

7. ワクチン接種

Q42. 新型コロナウイルス感染症のワクチンを接種しましたか。(ひとつだけ)

 新型コロナワクチンの接種状況について調べた。2021年9月の調査回答時点までに2回接種を完了した人は回答サンプル全体の51%だった(図表7)。国立感染症研究所が公表した9月3日時点の国内の2回接種完了率は47.1%であることから、日本全体の接種状況とおおむね整合的といえる。(注12)

 内訳をみると、医療従事者や65歳以上の高齢者への優先接種が行われていた2021年2~6月に2回接種を完了した人の割合が11%、7~9月調査時点までに2回接種を完了した人の割合は40%、1回目の接種を終えたが2回目接種を終えていない人の割合は15%、今後1回目の接種をする人の割合は19%、接種しないと答えた人の割合は14%であった。

 性別、年齢階層別にみると、ワクチンの接種状況に性別による差はないが、年齢によって違いが生じていることがわかる。まず、優先接種が行われていた65歳以上では、90%以上の人が2回接種を完了している。先述の国立感染症研究所の公表では、9月3日時点の65歳以上の2回接種完了率は87.1%であることとも整合的だ。また、65歳以上のうち30%近くは6月までに2回接種を終えている。65歳未満の層をみると、年齢が若いほど接種完了率が低い傾向にあり、10~20代と30代は、2回接種を完了した人の割合がともに33%である。さらに、接種しないと答えた人の割合は年齢が若いほど大きく、10~20代の23%はワクチン接種をしないとの考えだ。

図表7 新型コロナワクチンの接種状況(2021年9月時点)

(n=10,196)

8. 新型コロナウイルスの感染や影響の予測

Q21. 現在と比較して、次の項目は、2021年末時点において、どのように変化していると思いますか。

 新型コロナウイルスに関連した2021年末の日本の状況や回答者自身の状況について、現時点での予想を調べた(図表8)。

 全般的に人々の予想はワクチン接種の進展を除いて悲観的である。傾向は2021年4月時点での予想とほぼ変わらず、半数程度が今と変化なし、半数弱が今よりも悪化という予想である。どの項目においても年末までに「とても改善している」と答えた人の割合はわずか1~3%程度である。特に変異種の流行状況、医療状況、経済状況、感染状況といった国全体の経済社会状況に対し悲観視する人が多い。中でも医療提供体制の逼迫は、「とても悪化している」と答えた人の割合が21%に及び、2021年4月時点と比べても5%ポイント以上多くなった。本調査前の2021年7月から8月にかけて感染が急増していた影響があると考えられる。

 一方で、最も改善が予想された項目は「ワクチン接種の状況」で、45%の人が改善していると答えた(「とても改善している」と「やや改善している」の合計、以下同)。これは2021年4月時点の改善予想を約15%ポイント上回る。ただし、悪化していると答えた人も約15%と(「とても悪化している」と「やや悪化している」の合計、以下同)、一定数みられた。

図表8 新型コロナウイルスの感染や影響の予測

(n=10,644)

9. グリーン・ジョブ

Q5. あなたの仕事はグリーン・ジョブに該当しますか。グリーン・ジョブの分類(以下参照)ごとに、お答えください。(それぞれひとつずつ)

 コロナ禍が世界各国で経済的打撃や雇用問題を引き起こす中、気候変動対策などに取り組む環境分野からの経済復興や雇用創出に注目が集まっている。現状、日本ではどの程度グリーン・ジョブが行われているかを調べた。ここでのグリーン・ジョブとは、国際労働機関(ILO)の定義に従い、「環境に有益な、あるいは天然資源を保全するような商品・サービスを提供する仕事」や「生産プロセスを環境にやさしくしたり、天然資源の使用量を少なくすることに関係する仕事」を指している。具体的な5つの分類ごとに、「該当する」「仕事の一部が該当する」「該当しない」の選択肢を提示した。

 1.環境関連の法令順守(コンプライアンス)、教育・訓練、社会の認識の向上
 2.リサイクル・再利用、温室効果ガスの削減、公害の削減・除去
 3.天然資源の保護(有機農業、持続可能な林業、土地管理、土壌、水、野生生物の保護、雨水管理に関連するものも含まれます)
 4.エネルギー効率の向上
 5.再生可能資源からのエネルギー生成

 少なくとも1つでも「該当する」あるいは「仕事の一部が該当する」と答えた人の割合は就業者全体の31%であった(図表9-1)。分類別でみると、該当(「該当する」と「仕事の一部が該当する」の合計、以下同)の割合が最も大きいものは、「環境関連の法令順守(コンプライアンス)、教育・訓練、社会の認識の向上」の27%である(図表9-2)。次いで大きいのは「リサイクル・再利用、温室効果ガスの削減、公害の削減・除去」(21%)である。環境問題への意識の向上に関わる仕事が先んじて取り組まれており、リサイクルなどの活動が比較的行われているようだ。一方で、「再生可能資源からのエネルギー生成」や「天然資源の保護」、「エネルギー効率の向上」に該当する人の割合は、15%前後とやや小さい。

 ただし、産業別でみるとわかるように、エネルギーに関わる「電気・ガス・水道・熱供給業」は、グリーン・ジョブに携わる人の割合が最も大きく、60%にのぼる(図表9-3)。続く「鉱業・建設業」(40%)、「農業・漁業・林業・水産業」(39%)、「製造業」(36%)などと比べても20%ポイント以上大きい。一方で、グリーン・ジョブに携わる人の割合が少ないのは「飲食・宿泊業」で、20%である。コロナ禍で特に打撃を受けた産業であるが、ポストコロナの復興に向けて取り組むべき課題ともいえる。

 最後に、グリーン・ジョブに携わる人が、仕事の中でグリーン・ジョブに費やす時間の割合をみる(図表9-4)。仕事時間のうち10%をグリーン・ジョブに費やすと答えた人が最も大きく、グリーン・ジョブ従事者の48%にのぼる。仕事におけるグリーン・ジョブの比重はそれほど高くないといえるだろう。ただし、グリーン・ジョブに費やす時間が100%と答えた人も1%ほど存在する。

図表9-1 グリーン・ジョブに携わっている人の割合

(n=10,348)

図表9-2 グリーン・ジョブに携わっている人の割合(分類別)

(n=10,348)

図表9-3 グリーン・ジョブに携わっている人の割合(産業別)

(n=10,348)

図表9-4 グリーン・ジョブに費やす時間の割合(グリーンジョブに携わっている人のみ)

(n=3,188)

参考文献

川上憲人(2007) 「全国調査におけるK6調査票による心の健康状態の分布と関連要因」『平成18年度政策科学総合研究事業(統計情報総合)研究事業「国民の健康状況に関する統計情報を世帯面から把握・分析するシステムの検討に関する研究」分担研究書』13-21.

Furukawa, T.A., Kawakami, N., Saitoh, M., Ono, Y., Nakane, Y., Nakamura, Y., Tachimori, H., Iwata, N., Uda, H., Nakane, H., Watanabe, M., Naganuma, Y., Hatah, Y., Kobayashi, M., Miyake, Y., Takeshima, T., Kikkawa, T. (2008) “The performance of the Japanese version of the K6 and K10 in the World Mental Health Survey Japan,” International Journal of Methods in Psychiatric Research, 17 (3), 152–158.

Kessler, R. C., P. R. Barker, L. J. Colpe, J. F. Epstein, J. C. Gfroerer, E. Hiripi, M. J. Howes, S. T. Normand, R. W. Mandersheid, E. E. Walters, and A. M. Zaslavsky. (2003) “Screening for Serious Mental Illness in the General Population,” Archives of General Psychiatry, 60, 184-189.

調査概要

1. 調査の趣旨・目的

 テレワークに関する就業者実態調査は、新型コロナウイルスの感染拡大による、全国の就業者の働き方、生活、意識の変化や、業務への影響等の実態を捉えることを目的としたものである。同一の就業者に対する追跡調査を行うことにより、新型コロナウイルス感染症が、働き方や生活などに与える影響をより正確に把握することができる。

 本調査は、2020年4月、6月、12月、2021年4月に実施した調査に続く、第5回目の調査となる。就業者の働き方や生活の変化を捉え、災害や感染症による被害を受けても、一人ひとりが能力を十分に発揮して働くことができる社会に向けての課題を分析できる調査設計にしている。

2. 調査名

第5回テレワークに関する就業者実態調査

3. 主な調査項目

・テレワークの利用状況・利用頻度・ICT利用状況
・テレワークの効率性に与える要因
・職場のデジタル化に関する認識
・仕事の効率性
・仕事・生活の変化
・満足度、幸福度、メンタルヘルス
・新型コロナウイルスに対する意識
・会社・経営組織の動向
・政策への賛否
・将来の見通し(感染状況・医療体制・ワクチン接種・日本経済の状況など)
・仕事のタスク
・グリーン・ジョブ
・資格の有無
・ワクチン接種、コロナ感染経験、自然災害被災経験など

4. 調査期間

2021年9月4日(土)~22日(水)

5. 調査方法

1) 実施方法:インターネット調査(スクリーニング調査・本調査) 。回収目標数を10,000サンプルとして、過去の調査と同様のスクリーニング調査、割付を行ったうえで、配信し、回収した。
2) 調査機関:株式会社日経リサーチ
3) 調査対象者:調査会社に登録しているインターネット調査登録モニター
4) 調査対象:以下の(ア)および(イ)に対して調査を実施した。
  (ア) 第1回から第4回調査の回答者
   第1回から第4回調査の回答者の合計である15,569サンプルすべてを調査対象とした。
   (イ) 第5回調査から参加する就業者

6. 回収数

総数:10,644件
うち、過去の調査からの継続回答は8,455件、本調査から参加する新規回答は2,189件。

7. 回答者の属性

8. 研究体制

大久保敏弘 慶應義塾大学経済学部教授/NIRA総研上席研究員
加藤究   フューチャー株式会社 シニアアーキテクト/NIRA総研上席研究員
神田玲子  NIRA総研理事・研究調査部長
井上敦   NIRA総研研究コーディネーター・研究員
関島梢恵  NIRA総研研究コーディネーター・研究員
安藤航平  慶應義塾大学経済学研究科修士課程在籍

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)大久保敏弘、NIRA総合研究開発機構(2021)『第5回テレワークに関する就業者実態調査報告書(速報)』

脚注
1. 本調査での「テレワーク」とは、インターネットやメールなどのICT(情報通信技術)を利用した、場所などにとらわれない柔軟な働き方としている。通常の勤務地(自社および顧客客先、出先など)に行かずに、自宅やサテライトオフィス、カフェ、一般公共施設など、職場以外の場所で一定時間働くことを指す。具体的には、在宅勤務、モバイル勤務、施設利用型勤務などが該当する。ただし、移動交通機関内や外回り、顧客先などでのICT利用は含まない。また、回答者が個人事業者・小規模事業者等の場合には、SOHOや内職副業型(独立自営の度合いの業務が薄いもの)の勤務もテレワークに含まれる。第1回調査の2020年3月時点では就業している人のみを対象としたが、第2~5回調査では、継続回答者で失業した人も含まれる。なお、国土交通省の「テレワーク人口実態調査」や総務省の「通信利用動向調査」におけるテレワークの定義ではICTを利用した普段の勤務地とは別の場所で仕事をすることとしている。同調査では自社の他事業所や顧客先、外回りでの利用、移動中の交通機関、駅構内、空港内でのPCやモバイル端末利用も含まれている。
2. この一連の調査研究は科研費(基盤研究B「大規模災害時代の「災害の経済学」と防災-国際貿易・空間経済学の視点から」研究代表者:大久保敏弘19H01487)、慶應義塾大学次世代研究プロジェクト推進プログラム(研究代表者:大久保敏弘)、旭硝子財団サステイナブルな未来への研究助成(「自然災害における家計の防災意識とエネルギー意識に関する実証研究」:研究代表者:大久保敏弘)の補助を受けている。
3. 第1回調査では、全国の15歳以上の就業者を母集団とし、株式会社日経リサーチの提携モニターを対象にスクリーニング調査を実施し、就業者に該当する者のみが回答した。2019年度の総務省『労働力調査』の結果に基づき、性別、年齢(6区分)、地域(5区分)に応じて割り付け、回収目標数の10,000 サンプルとなるよう調査を実施した。
4. 各時期の詳細結果については、2020年1月、3月は第1回調査、4~5月、6月の結果は第2回調査、9月、12月の結果は第3回調査、2021年1~2月、3月、4月は第4回調査の報告書を参照されたい。第1回調査結果:大久保敏弘・NIRA 総合研究開発機構(2020)「新型コロナウイルスの感染拡大がテレワークを活用した働き方、生活・意識などに及ぼす影響に関するアンケート調査結果に関する報告書」・第2回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2020)「第2回テレワークに関する就業者実態調査報告書」・第3回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第3回テレワークに関する就業者実態調査報告書」・第4回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)「第4回テレワークに関する就業者実態調査報告書
5. 回答者はあくまで就業者本人の利用状況を回答しており、会社・組織を代表しての回答ではない。
6. 選択肢に示したICTツールは以下のとおりである。(1)コミュニケーションの円滑化として、テレビ会議・Web会議、チャットやSNSによる社内情報共有、(2)共同作業の円滑化として、ファイル共有・共同作業、リモートアクセス、タスク・プロジェクト管理、(3)業務管理として、電子決裁、勤怠管理グループウェア、従業員のメンタルヘルスチェック、生産管理・販売管理・在庫管理、営業管理、採用管理、人事管理、会計管理、(4)オフィスの自動化として、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、バーチャルオフィス、非接触型テクノロジー、自動翻訳、BIツール、画像認識・画像解析ツールが含まれる。なお、非接触型テクノロジーの選択肢は第3回調査以降、自動翻訳、BIツール、画像認識・画像解析ツールは第5回調査で追加された選択肢である。そのため、オフィスの自動化ツールの結果については、時系列で直接比較できないことに留意する必要がある。
7. K6はKessler et al. (2003)で開発された尺度で、精神疾患をスクリーニングすることを目的として開発されたものである。日本語版はFurukawa et al. (2008)で開発されている。設問項目は、「神経過敏に感じましたか」、「絶望的だと感じましたか」、「そわそわ、落ち着かなく感じましたか」、「気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか」、「何をするのも骨折りだと感じましたか」、「自分は価値のない人間だと感じましたか」の6つの設問から構成されており、5段階のスケールで回答する形式となっている。各設問の回答を「まったくない」(0点)、「少しだけ」(1点)、「ときどき」(2点)、「たいてい」(3点)、「いつも」(4点)で点数化し、単純合計によって得点を算出する。厚生労働省『国民生活基礎調査』 にも利用されており、メンタルヘルスを測定する指標として広く利用されている。『国民生活基礎調査』の詳細は、厚生労働省ウェブページ『国民生活基礎調査』で確認できる。 なお、川上(2007)では、5~9点は「心理的ストレス相当」、10~12点は「気分・不安障害相当」、13点以上は「重症精神障害相当」と区分している。川上憲人(2007) 「全国調査における K6 調査票による心の健康状態の分布と関連要因」『平成 18 年度政策科学総合研究事業(統計情報総合)研究事業「国民の健康状況に関する統計情報を世帯面から把握・分析するシステムの検討に関する研究」分担研究書』13-21.また、厚生労働省「健康日本 21(第2 次)」では、「気分障害・不安障害に相当する心理的苦痛を感じている者の割合の減少」の目標値として、厚生労働省『国民生活基礎調査』において、20歳以上のK6の合計点における10点以上の割合を9.4%(2022年度)と設定している。
8. 2019年は大規模調査が実施されており、K6の設問が含まれる健康票については、平成27年国勢調査区のうち後置番号1及び8から層化無作為抽出した5,530地区内の全ての世帯(約30万世帯)および世帯員(約72万人)を調査客体としている。同調査は全国の世帯および世帯員を対象としており、就業していない人や、15歳以下の人も含まれている。そのため、本報告書で使用しているデータとは、想定しているサンプルの母集団が異なるため、分布を直接比較できないことに留意する必要がある。
9. 『2019年度国民生活基礎調査』では、2019年5月中に全く仕事をしなかった場合であっても、次のような場合は有業としている。そのため、有業人員(15歳以上)に限定した場合の結果は、想定しているサンプルの母集団が本報告書で使用しているデータのサンプルの母集団と極めて近いといえる。(1) 雇用者であって、2019年5月中に給料・賃金の支払いを受けたか、又は受けることになっていた場合(例えば、病気で休んでいる場合)(2) 自営業者であって、自ら仕事をしなかったが、2019年5月中に事業は経営されていた場合(3) 自営業主の家族であって、その経営する事業を手伝っていた場合(4) 職場の就業規則などで定められている育児(介護)休業期間中であった場合
10. 分布の形状を確認する際によく用いられるヒストグラムでは、階級の境界の設定により分布の形状が変わるため、ここでは、階級の境界に依存しないカーネル密度推定により分布の形状を確認する。
11. 累積感染者数は厚生労働省「感染症発生動向情報等」(2021年9月22日時点)より、総人口は総務省統計局「人口推計- 2021年(令和3年) 9月報 -」より2021年4月月初人口を用いて算出。
12. 国立感染症研究所「新型コロナワクチンについて(2021年9月5日現在)

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