大久保敏弘
NIRA総合研究開発機構上席研究員/慶應義塾大学経済学部教授
NIRA総合研究開発機構

最新の調査結果はこちら➡第10回テレワーク調査

概要

 慶應義塾大学経済学部大久保敏弘研究室、(公財)NIRA総合研究開発機構では、「第7回テレワーク(注1に関する就業者実態調査(注2」を実施した。本調査は、新型コロナウイルスの感染拡大による、全国の就業者の働き方、生活、意識の変化や、業務への影響、ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識等の実態を捉えることを目的に実施したものである。調査は202261日(水)~20日(月)にかけて行われた。回収数は10,595件であり、うち過去の同調査からの継続回答は8,748件である。速報結果は以下のとおり。


INDEX

ポイント

●ロシアのウクライナ侵攻を踏まえて、国内での資源調達や食料確保を促進する考えが強まっており、その具体的な方針として、原子力よりもクリーンエネルギーへのシフトや、保護主義には陥らずに食料自給率を高めていくという考えが、芽生えてきている可能性がある。

●ロシア産の商品の購入を控える、ロシアからの輸入を減らす、ロシアへの経済制裁を強化することについて、4449%の人が賛成した。

●防衛費の増大に賛成する人は33%であり、反対する人の割合の16%を上回った。他方、日本政府がウクライナに対して武器を供与することに賛成する人は20%であり、反対の割合の29%を下回った。

●202254週目時点の全国の就業者のテレワーク利用率は15%(東京圏25%)となった。20206月以降、おおむね横ばいで推移してきたが、202215月にかけて緩やかな低下傾向となった。

●新型コロナウイルスの感染拡大の出来事がなく通常通り勤務していた場合の仕事の成果を100としたとき、テレワーク利用者のうち、100と回答した人の割合が20206月から20225月にかけて、徐々に増加している。

●テレワーク利用者のテレワーク利用希望(「毎日出勤したい」人以外の合計)は、直近になるほど高まっており、20225月時点で90%に上る。テレワーク利用していない人のテレワーク利用希望は、いずれの時期も50%を下回る。

●個人情報保護、データの扱いについて、「日常生活でデータセキュリティに細心の注意をしている」、「ウェブ上でのサービスやアプリを利用する際、個人情報を提示することに不安を感じる」人は3739%に上る。個人情報の国内管理や、政府による個人情報の海外への持ち出しに対する規制に関しては、肯定的な意見が否定的な意見を上回る。また、データを他社から購入して仕事をすると回答した人は11%と低い。

●政策への賛否について、一貫して経済対策重視の割合が感染症対策重視を上回る。直近の20225月では、特に感染症対策重視の割合が小さくなった。

図表

図1 全国および東京圏のテレワーク利用率の推移
図1-1 居住都道府県別でみたテレワーク利用率の推移-新型コロナウイルス感染拡大前、第1回緊急事態宣言時、直近時点の比較-
図1-2-1 産業別でみたテレワーク利用率の推移
図1-2-2 産業別(抜粋)でみたテレワーク利用率の推移(詳細)
図1-3-1 職業別でみたテレワーク利用率の推移
図1-3-2 職業別でみたテレワーク利用率の推移(詳細)
図1-4-1 所得階層別でみたテレワーク利用率の推移
図1-4-2 所得階層別でみたテレワーク利用率の推移(詳細)
図2-1 通常の職場で勤務している人の出社頻度の推移
図2-2 テレワーク利用者の利用頻度の推移
図3a 仕事の効率(2022年5月、テレワーク利用別)
図3b テレワーク利用者の仕事の効率の推移
図4 ICTツールの活用状況(テレワーク利用別)
図5-1 新型コロナウイルスの終息後にテレワークの利用希望(テレワーク利用者)
図5-2 新型コロナウイルスの終息後にテレワークの利用希望(テレワーク未利用者)
図6 個人情報保護やデータの扱い
図7-1 2019年度国民生活基礎調査のK6の合計点の分布(12歳以上)
図7-2 2019年度国民生活基礎調査のK6の合計点の分布 有業人員(15歳以上)
図7-3 K6の分布
図8-1 感染症対策か経済対策か
図8-2-1 オンライン診療の推進
図8-2-2 オンライン教育の推進
図8-2-3 Eコマース・デジタル決済の推進
図8-2-4 人工知能(AI)、ビッグデータ活用の推進
図8-2-5 緊急事態における政府による個人の行動の制限や物資・経済統制
図8-2-6 生産拠点の国内回帰
図8-2-7 財・サービスの国境を越えた自由な取引(グローバリゼーション)
図8-2-8 人の自由な国際間移動や海外の人材の受入
図8-2-9 将来の増税により国民全体への一律給付や消費税減税
図9 ロシアのウクライナ侵攻
図9-1-1 海外からの食料の輸入依存をできるだけ減らし、国内で食料生産し、食料自給率を引き上げる(性別、年齢階層別)
図9-1-2 中国に依存する経済から脱却する(性別、年齢階層別)
図9-1-3 海外からの資源エネルギーの輸入依存を減らし、国内のクリーンエネルギーによる発電を推進する(性別、年齢階層別)
図9-1-4 ロシア産の商品の購入を控える(性別、年齢階層別)
図9-1-5 エネルギー価格や物価が上昇しても、ロシアからの輸入を減らす(性別、年齢階層別)
図9-1-6 ロシアに対する経済制裁を強化する(性別、年齢階層別)
図9-1-7 防衛費を増大する(性別、年齢階層別)
図9-1-8 海外からの資源エネルギーの輸入依存を減らし、原子力発電を推進する(性別、年齢階層別)
図9-1-9 日本政府がウクライナに対して武器を供与する(性別、年齢階層別)
図9-1-10 自由貿易よりも保護貿易を推進する(性別、年齢階層別)
図9-2 性別、年齢階層別にみた、クリーンエネルギーの推進×原子力発電の推進
図9-3 性別、年齢階層別にみた、食料自給率の引き上げ×中国経済依存からの脱却

Ⅰ調査結果

1.テレワーク利用率の推移

Q3.あなたは以下の時期に通常業務でテレワークを利用していましたか。(1つだけ)

(1)202254週目(523日~529日)
(2)20224
(3)20223

 全国のテレワーク利用率の推移は、第1回目の緊急事態宣言が出された202045月は25%まで大幅に上昇したが、20206月の緊急事態宣言の解除後には17%に急速に低下した。その後の緊急事態宣言や東京オリンピック開催時期、オミクロン株による感染拡大を受けた20221月もおおむね横ばいで推移したが、2022年1~5月にかけて緩やかな低下傾向となり、5月4週目は15%となった。テレワーク利用率は大幅には低下せず、一定の水準で定着しているが、テレワークから出社に戻る動きが若干出ている。

 東京圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)に限ってみると、テレワーク利用率の推移(居住地ベース)は全国と比較して10%ポイント程度高い水準で推移しており、全国平均と同様に2022年1~5月にかけて緩やかな低下傾向がみられる(注3)

図1 全国および東京圏のテレワーク利用率の推移

1.1.居住都道府県別でみたテレワーク利用率の推移

 以下では、属性別にテレワーク利用率の推移をみていく。帯グラフは、コロナ禍前の20201月、全国的にテレワーク利用が最も進んだ1回目の緊急事態宣言時の202045月、直近の202254週目の3時点の結果を示している。

 居住都道府県別に推移をみると(図1-1)、コロナ禍前から直近までのテレワーク利用率の伸び幅が大きい都道府県は、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、愛知県であり、大都市圏でテレワークの利用が広まっている。なお図1でみたように、直近の202215月にかけては東京圏でも緩やかな低下傾向にある。

図1-1 居住都道府県別でみたテレワーク利用率の推移
-新型コロナウイルス感染拡大前、第1回緊急事態宣言時、直近時点の比較-

1.2.産業別でみたテレワーク利用率の推移

 産業別に推移をみると(図1-2-1)、テレワーク利用率が高い産業は、「通信情報業」、「情報サービス・調査業」、「金融・保険業」となった。他方、テレワーク利用率が低い産業として、「運輸」、「飲食業・宿泊業」、「医療・福祉」があげられる。

 時系列で詳しくみると(図1-2-2)、「通信情報業」は20214月以降、テレワーク利用率が徐々に伸び続けていたが、20221月以降、若干低い水準で推移している。また、「金融・保険業」、「電気・ガス・水道・熱供給業」、「公務」でも、20221月から5月にかけて、テレワーク利用率が若干低下する傾向がみられる。「飲食業・宿泊業」、「医療・福祉」のテレワーク利用率は、コロナ禍前からほとんど上昇せず、一貫して低迷している。

図1-2-1 産業別でみたテレワーク利用率の推移

図1-2-2 産業別(抜粋)でみたテレワーク利用率の推移(詳細)

1.3.職業別でみたテレワーク利用率の推移

 職業別に推移をみると(図1-3-1)、テレワーク利用率が高い職業は、「管理的職業従事者」、「専門的・技術的職業従事者」、「事務従事者」となった。他方、テレワーク利用率が低い職業として、「その他の職業従事者」、「販売従事者」、「サービス職業従事者」があげられる。なお、「その他の職業従事者」には、保安、農林漁業、生産工程、輸送・機械運転、建設・採掘、運搬・清掃・包装等、分類不能の職業に従事する者が含まれている。

 時系列で詳しくみると(図1-3-2)20221月以降、「管理的職業従事者」のテレワーク利用率は他の職業と比べて顕著に低下しており、「事務従事者」も緩やかな低下傾向がみられる。現場での対面サービスの提供や作業が主の職業では1回目の緊急事態宣言時の202045月に若干テレワーク利用率が上昇しているが、その後のテレワーク利用率は10%未満と低く、大きな変化はない(注4)

図1-3-1 職業別でみたテレワーク利用率の推移

図1-3-2 職業別でみたテレワーク利用率の推移(詳細)

1.4.所得階層別でみたテレワーク利用率の推移

 所得階層別に推移をみると(図1-4-1)、所得の高い層でテレワーク利用率の水準が高くなっている。時系列で詳しくみると(図1-4-2)1回目の緊急事態宣言期間の202045月に、所得階層間のテレワーク利用率に大きな差が生じ、解除直後にその差はやや縮小したものの、その後20221月まで、一定の差が残っている。直近の動きでは、20221月以降、所得の高い層で、テレワーク利用率が落ち込んでおり、所得階層間のテレワーク利用率の差が若干縮小している。

図1-4-1 所得階層別でみたテレワーク利用率の推移

図1-4-2 所得階層別でみたテレワーク利用率の推移(詳細)

2.通常の職場での勤務とテレワークによる勤務の頻度の推移

Q4.あなたは以下の時期に、通常の職場に出勤しての勤務とテレワーク勤務を、どのぐらいの頻度で行いましたか。なお「通常の職場に出勤しての業務」には「自営業など通常の職場と自宅が同じ場合」も含みます。
(1)202254週目(523日~529日)
(2)20224
(3)20223

 通常の職場で勤務している人(テレワーク利用者含む)の出社頻度の推移をみると(図2-1)202112月以降、週5日以上出社している人の割合がやや増えている。

 次に、テレワーク利用者のテレワーク利用頻度の推移をみると(図2-2)、足元の動きとして、20221月から5月にかけて、週3日がやや減少し、週2日以下がやや増加している。一方で、週45日の割合はほとんど変化がない。

図2-1 通常の職場で勤務している人の出社頻度の推移

図2-2 テレワーク利用者のテレワーク利用頻度の推移

3.仕事の効率の変化

Q6.新型コロナウイルスの感染拡大の出来事がなく、2022年5月4週目に通常通りの勤務をしていた場合を想像してください。通常通りの勤務に比べて、時間あたりの仕事のパフォーマンス(仕事の効率)はどのように変化したと思いますか。通常通り勤務していた場合の仕事の成果を100とした場合の数字でお答えください。たとえば、仕事のパフォーマンスが1.3倍になれば「130」、半分になれば「50」となります。上限を「200」としてお答えください。

 Q6の回答の分布をテレワーク利用別にみると、図3aのようになった。テレワーク利用者については、テレワークを利用していない人に比べて、100と回答した人の割合は低く、6090110120と回答した人の割合が高くなっている。テレワークにより、仕事を効率的にできる人と、そうではない人がいることが伺える(注5)

 次にテレワーク利用者の回答結果の分布を時系列でみると(図3b)20206月から12月にかけて、100と回答した人の割合が大きく増加し、その後、12月から20225月にかけても、徐々に増加している。テレワークに慣れることで効率性が改善されたり、テレワークで効率性を維持できる人がテレワークを利用するようになっていることが、背景にあると考えられる。

図3a 仕事の効率(2022年5月、テレワーク利用別)

図3b テレワーク利用者の仕事の効率の推移

4.ICTツールの活用状況

Q7.2022年5月4週目で、あなたは、通常の職場に出勤しての勤務やテレワークで、以下のどのICTツールを利用していましたか。なお「通常の職場に出勤しての業務」には「自営業など通常の職場と自宅が同じ場合」も含みます。(いくつでも)

 選択肢に提示したICTツールを少なくとも1つは利用している人の割合(「ICT利用率」、以下同)をテレワーク利用別にみると(図4)テレワーク利用者はICT利用率が顕著に高い(注6)(注7)。しかし、テレワークを利用していない人にとっても、職場のデジタル化や、テレワーク利用者とのコミュニケーションにICTツールは有用であり、一定程度、利用している人がいることがわかる。

図4 ICTツールの活用状況(テレワーク利用別)

5.新型コロナウイルス終息後のテレワークの利用希望

Q15.新型コロナウイルスの完全終息後の働き方についてのあなたのお考えについておうかがいします。あなたの希望する働き方をお答えください。(1つだけ)

 テレワーク利用者のテレワーク利用希望(「毎日出勤したい」人以外の合計)の回答結果をみると(図5-1)、直近になるほど高まっており、20225月時点で90%に上る。テレワーク利用希望の割合は増えている一方、テレワーク利用率自体は低迷しており(図1)、労働者側と企業組織側とのテレワーク利用の考え方のミスマッチが大きくなってきていることがわかる。

 一方、テレワークを利用していない人についてみると(図5-2)20203月から12月かけてテレワーク希望の頻度はやや増加し、202012月から20225月にかけてやや低下している。いずれの時期もテレワーク利用の希望は50%を下回る。

図5-1 新型コロナウイルスの終息後にテレワークの利用希望(テレワーク利用者)

図5-2 新型コロナウイルスの終息後にテレワークの利用希望(テレワーク未利用者)

6.個人情報保護、データの扱い

Q12.個人情報保護やデータの扱いについて、あなたの意識や行動について、お答えください。(それぞれ1つずつ)

 Q12の回答結果をみると(図6)、「日常生活でデータセキュリティに細心の注意をしている」、「ウェブ上でのサービスやアプリを利用する際、個人情報を提示することに不安を感じる」にあてはまる(「とてもあてはまる」、「あてはまる」の合計、以下同)と回答した人はともに40%弱であった。個人情報の提供に不安感を有している人がある程度の割合存在しており、個人情報漏洩に注意が払われている様子がうかがえる。

 また、データ管理、政府の規制についても肯定的であり、「日本国内の個人情報・顧客データは、国内で管理すべきと思う」、「海外の会社・企業が日本国内で集めた個人情報・顧客データを国外に持ち出すのを、政府が規制すべきだと思う」にあてはまると回答した人は30%前後となり、あてはまらないと回答した人の割合より高い。海外に個人情報が流出することに対する懸念が根強いことが見て取れる。ただし、「どちらともいえない」と回答した人の割合が約半数を占める。

 組織に関連する項目として、「社外から会社のデータや情報にアクセスするには、専用の端末、回線、サイトを利用する」、「社外では通常、会社支給のPCや情報通信機器(スマートフォン、タブレットなど含む)で仕事を行う」、「データセンターやクラウドサービスを利用して、仕事上のデータや情報を保管し、共有している」にあてはまると回答した人はいずれも20%強であり、あてはまらないと回答した人の割合を下回る。

 業務上でのデータの購入については、「データを他社から購入して仕事をすることがある」にあてはまると回答した人は11%と低い。データを購入したり、費用をかけてデータを保管するなど、データに関する経済的な感覚は限定的な動きであることがわかる。今後、データ取引市場などが作られ、データを売買するようになると思われるが、現在は、一部の人の業務にとどまっているようだ。

図6 個人情報保護やデータの扱い

7.メンタルヘルス

 コロナ禍における就業者のメンタルヘルスについて調べた。ここでは、メンタルヘルスを測定するための指標として、K6を用いる。K6は得点が高いほど、メンタルヘルスが悪いと解釈できる指標であり、詳細については脚注を参照されたい(注8)

 新型コロナウイルス感染拡大前の日本のメンタルヘルスの状態は、『2019年度国民生活基礎調査』の結果で確認できる(注9)K6の合計点(12歳以上)の得点分布を確認すると、図7-1のようになり、04点が68%59点が17%1014点が7%15点以上が2%であった。また、同調査のK6の合計点の分布を、本調査のサンプルと同様、有業人員(15歳以上)に限定した場合は04点が70%59点が18%1014点が7%15点以上が2%であり(図7-2)K6の得点分布は図7-1で示した12歳以上の結果とほとんど変わらない(注10)

 次に、本調査において計測した20203月~20225月の間のK6の分布の形状を確認する(図7-3)。その結果、20203月から20219月にかけて、K6の得点が低い人の割合が増え、全体のメンタルヘルスが大きく改善していることがわかる。20219月以降はほぼ同じ形状であり、メンタルヘルスの改善傾向は止まっていることが示唆される。

図7-1 2019年度国民生活基礎調査のK6の合計点の分布(12歳以上)

図7-2 2019年度国民生活基礎調査のK6の合計点の分布 有業人員(15歳以上)

図7-3 K6の分布(注11)

8.政策への賛否

8.1.感染症対策か経済対策か

Q16.国民全体にとって、政府が以下の取組を進めることに賛成ですか、反対ですか。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえておうかがいします。(それぞれ1つずつ)

 「感染拡大の抑止より経済活動の活性化を優先する政策の推進」への賛否についてみると8-1)、経済対策重視の割合が感染症対策重視を上回る傾向や、「どちらでもない・わからない」の回答が最も多くなる傾向は安定してみられる。直近の20225月では、特に感染症対策重視の人の割合が小さくなった。

図8-1 感染症対策か経済対策か

8.2.その他の政策

 国内のデジタル化に関する政策(オンライン診療、オンライン教育、Eコマース・デジタル決済、人工知能(AI)・ビッグデータの活用推進)、緊急事態における政府による個人の行動の制限や物資・経済統制、グローバル化に関する政策(生産拠点の国内回帰、財・サービスの国境を越えた自由な取引、人の自由な移動や海外の人材の活用)、一律給付・消費税減税のいずれも賛成の割合が反対を大きく上回るが、50%には満たない。

 時系列で変化を見ると、直近になるほど、デジタル化に関する政策、緊急事態における政府による個人の行動の制限や物資・経済統制の賛成の割合は徐々に減る傾向がみられる。グローバル化に関する政策では、「人の自由な国際間移動や海外の人材の受入」についての賛成の割合が、これまでの調査で最も大きくなった。

図8-2-1 オンライン診療の推進

図8-2-2 オンライン教育の推進

図8-2-3 Eコマース・デジタル決済の推進

図8-2-4 人工知能(AI)、ビッグデータ活用の推進

図8-2-5 緊急事態における政府による個人の行動の制限や物資・経済統制

図8-2-6 生産拠点の国内回帰

図8-2-7 財・サービスの国境を越えた自由な取引(グローバリゼーション)

図8-2-8 人の自由な国際間移動や海外の人材の受入

図8-2-9 将来の増税により国民全体への一律給付や消費税減税

9.ロシアのウクライナ侵攻(食料・資源確保、安全保障)

Q46.ロシアのウクライナ侵攻を踏まえておうかがいします。以下の意見や、個人の行動について、賛成ですか、反対ですか。(それぞれ1つずつ)

 Q46の回答結果を賛成(「賛成」、「やや賛成」、以下同)の多い順からみると、食料・資源確保や経済活動に関して、食料自給率の向上、中国に依存する経済からの脱却、国内のクリーンエネルギーによる発電の促進について、いずれも50%以上の人が賛成している。一方、原子力発電の推進への賛成は28%、保護貿易の推進への賛成は17%となり、他の項目に比べて、賛成の割合は低い。グローバルなリスクに対して国内での資源調達や食料確保を促進する考えが強まっており、その具体的な方針として、原子力よりもクリーンエネルギーへのシフトや、保護主義には陥らずに食料自給率を高めていくという考えが、芽生えてきている可能性がある。半数ほどの人が食料自給率の向上やクリーンエネルギー推進、海外依存の見直しなど、資源調達や食料確保に向けての社会・経済全体の改革を望んでおり、生活の安定に対する意識が高いことが分かる。

 ロシアへの対応に関しては、ロシア産の商品の購入を控える、ロシアからの輸入を減らす、ロシアへの経済制裁を強化することについて、いずれも50%程度の人が賛成している。

 防衛費の増大に賛成する人は33%であり、反対する人の割合の16%を上回る。他方、日本政府がウクライナに対して武器を供与することに賛成する人は20%であり、反対の割合の29%を下回る。

図9 ロシアのウクライナ侵攻

9.1.性別、年齢階層別

 Q46の回答結果を、性別、年齢階層別にまとめると、図9-1-19-1-10のようになる。

 男女別で見ると、食料安全保障やグリーンエネルギーへの転換による資源確保への賛成は男女でほとんど差がない。しかし、防衛費の増大や武器の供与、原発推進となると男性のほうが女性よりも顕著に賛成が多くなる。生活に身近な経済安全保障全般では男女差がないようである。

 年齢階層に関しては男女差よりも大きな違いがある。食料安全保障、エネルギー確保(原発除く)、中国への経済依存からの脱却、ロシアへの経済制裁強化に関しては概ね似たような傾向がみられ、年齢が高くなるほど賛成が多くなり、年齢が低くなるほど反対が多い。また、50歳以上になると、賛成が半数を占めるまでになり、「わからない」と答える率が低くなり、賛否が明確になる。さらに「やや賛成」よりも「賛成」が顕著に多くなり、高齢者ほど意見をかなり明確に持っているようである。一方で、1030代では「わからない」が6070%を占めることから、大きな変動の中でも変化や変革を望まない、現状維持志向あるいは無関心が強いと思われる。

 しかし、防衛費やウクライナに対する武器供与などの安全保障や原発への依存に関してはやや異なる傾向にある。防衛費の増大に関しては、年齢とともに反対がやや多くなるものの、賛成意見が顕著に多くなり反対を上回る。また、原発への依存に関しては、年齢とともに反対が多くなるが、他方で賛成も増加し、賛否が拮抗する。ウクライナに対する武器供与については、賛成は年齢によって明らかな傾向はみられないが、反対は年齢とともに顕著に多くなり賛成を上回る。こうした結果には、今までの戦後の経験や東西冷戦下でのさまざまな経験や体験が反映されている可能性が高い(注:本調査は就業者が対象であるため第二次世界大戦経験者はほとんどいない)。

図9-1-1 海外からの食料の輸入依存をできるだけ減らし、国内で食料生産し、食料自給率を引き上げる(性別、年齢階層別)

図9-1-2 中国に依存する経済から脱却する(性別、年齢階層別)

図9-1-3 海外からの資源エネルギーの輸入依存を減らし、国内のクリーンエネルギーによる発電を推進する(性別、年齢階層別)

図9-1-4 ロシア産の商品の購入を控える(性別、年齢階層別)

図9-1-5 エネルギー価格や物価が上昇しても、ロシアからの輸入を減らす(性別、年齢階層別)

図9-1-6 ロシアに対する経済制裁を強化する(性別、年齢階層別)

図9-1-7 防衛費を増大する(性別、年齢階層別)

図9-1-8 海外からの資源エネルギーの輸入依存を減らし、原子力発電を推進する(性別、年齢階層別)

図9-1-9 日本政府がウクライナに対して武器を供与する(性別、年齢階層別)

図9-1-10 自由貿易よりも保護貿易を推進する(性別、年齢階層別)

9.2.性別、年齢階層別にみた、クリーンエネルギーの推進×原子力発電の推進

 性別、年齢階層別に、「海外からの資源エネルギーの輸入依存を減らし、国内のクリーンエネルギーによる発電を推進する」と「海外からの資源エネルギーの輸入依存を減らし、原子力発電を推進する」の回答の組み合わせをみると(図9-3)、相対的に、男性は、クリーンエネルギー賛成、かつ、原子力賛成が多く、女性はクリーンエネルギー賛成、かつ、原子力反対が多い。また、年齢が高くなるにつれて、中立が少なくなり、クリーンエネルギー賛成の比率が上がり、さらに、クリーンエネルギー賛成の人は原子力賛成よりも原子力反対の割合が高まる。若年層のクリーンエネルギー賛成の人は原子力も賛成が多い一方、シニア層のクリーンエネルギー賛成の人の原子力の賛否に関しては、意見が分かれる。

 少なからずの人が、エネルギー(日常の電力)に危機感をもっており、自国産の安価なエネルギー供給、安定供給、脱炭素化を望んでいることが伺える。原子力発電が支持される背景には、電気代金の高騰などがあると考えられる。

図9-2 性別、年齢階層別にみた、クリーンエネルギーの推進×原子力発電の推進

9.3.性別、年齢階層別にみた、食料自給率引き上げ×中国経済依存からの脱却

 性別、年齢階層別に、「海外からの食料の輸入依存をできるだけ減らし、国内で食料生産し、食料自給率を引き上げる」と「中国に依存する経済から脱却する」の回答の組み合わせをみると(図9-3)、男女別では、図9-2でみたエネルギーに関する回答とは異なり、ほとんど差がない。年齢別では、年齢が高くなるにつれて、食料自給率引上げ賛成、また、中国経済依存からの脱却賛成の人の割合が増える。いずれも賛成の割合が1030代では2030%にすぎないが、5064歳で半数を越え、65歳以上では70%を占める。食料や中国経済は生活に直結する身近な問題だけに、人々の関心は高く、中国経済への依存を懸念している人が結構多いことが見て取れる。急速な円安を背景とした輸入製品を中心にした物価高や、中国や北朝鮮の核を含む軍事力増強や台湾有事の緊張など東アジア地域における安全保障上のリスク、20223月末~5月末に行われた上海ロックダウンなど、様々な経済への影響が起因していると考えられる。

図9-3 性別、年齢階層別にみた、食料自給率の引き上げ×中国経済依存からの脱却

参考文献


川上憲人(2007)「全国調査における K6 調査票による心の健康状態の分布と関連要因」『平成 18 年度政策科学総合研究事業(統計情報総合)研究事業「国民の健康状況に関する統計情報を世帯面から把握・分析するシステムの検討に関する研究」分担研究書』13-21
Furukawa, T.A., Kawakami, N., Saitoh, M., Ono, Y., Nakane, Y., Nakamura, Y., Tachimori, H., Iwata, N., Uda, H., Nakane, H., Watanabe, M., Naganuma, Y., Hatah, Y., Kobayashi, M., Miyake, Y., Takeshima, T., Kikkawa, T. (2008) “The performance of the Japanese version of the K6 and K10 in the World Mental Health Survey Japan,” International Journal of Methods in Psychiatric Research, 17 (3), 152–158.
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Okubo, T. (2022). Telework in the Spread of COVID-19. Information Economics and Policy, 100987.
Okubo, T., Inoue, A., & Sekijima, K. (2021a). Teleworker performance in the COVID-19 era in Japan. Asian Economic Papers, 20(2), 175-192.

Ⅱ調査概要

1.調査の趣旨・目的

 テレワークに関する就業者実態調査は、新型コロナウイルスの感染拡大による、全国の就業者の働き方、生活、意識の変化や、業務への影響等の実態を捉えることを目的としたものである。同一の就業者に対する追跡調査を行うことにより、新型コロナウイルス感染症が、働き方や生活などに与える影響をより正確に把握することができる。

 本調査は、20204月、6月、12月、20214月、9月、20222月に実施した調査に続く、第7回目の調査となる。就業者の働き方や生活の変化を捉え、災害や感染症による被害を受けても、1人ひとりが能力を十分に発揮して働くことができる社会に向けての課題を分析できる調査設計にしている。

2.調査名

 第7回テレワークに関する就業者実態調査

3.主な調査項目

 ・テレワークの利用状況・利用頻度・ICT利用状況
 ・テレワークのメリット・デメリット、今後の利用希望
 ・仕事の効率性
 ・個人情報やデータの扱い、意識
 ・会社・経営組織の動向(BCP等)
 ・仕事・生活の変化
 ・メンタルヘルス
 ・政策への賛否
 ・ロシアのウクライナ侵攻に関する意識
 ・会社・経営組織の動向
 ・コロナ感染経験など

4.調査期間

 2022年61日(水)~20日(月)

5.調査方法

1)実施方法:インターネット調査(スクリーニング調査・本調査)。回収目標数を10,000サンプルとして、過去の調査と同様のスクリーニング調査、割付を行ったうえで、配信し、回収した(注12)
2)調査機関:株式会社日経リサーチ
3)調査対象者:調査会社に登録しているインターネット調査登録モニター
4)調査対象:以下の(ア)および(イ)に対して調査を実施した。

(ア)第1回から第6回調査の回答者
   第1回から第6回調査の回答者の合計である18,786サンプルすべてを調査対象とした。
(イ)第7回調査から参加する就業者

6.回収数

 総数:10,595
 うち、過去の調査からの継続回答は8,748件、本調査から参加する新規回答は1,847件。

7.回答者の属性

8.研究体制

大久保敏弘 慶應義塾大学経済学部教授/NIRA総研上席研究員
加藤究   フューチャー株式会社シニアアーキテクト/NIRA総研上席研究員
神田玲子  NIRA総研理事・研究調査部長
井上敦   NIRA総研研究コーディネーター・研究員
関島梢恵  NIRA総研研究コーディネーター・研究員
鈴木壮介  NIRA総研研究コーディネーター・研究員

9.外部資金

 本調査研究は科研費(基盤研究B「大規模災害時代の「災害の経済学」と防災-国際貿易・空間経済学の視点から」研究代表者:大久保敏弘19H01487)、慶應義塾大学次世代研究プロジェクト推進プログラム(研究代表者:大久保敏弘)、旭硝子財団サステイナブルな未来への研究助成(「自然災害における家計の防災意識とエネルギー意識に関する実証研究」:研究代表者:大久保敏弘)の補助を受けている。

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2022)「第7回テレワークに関する就業者実態調査(速報)-『ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識調査』を含む-」

脚注
1 本調査での「テレワーク」とは、インターネットやメールなどのICT(情報通信技術)を利用した、場所などにとらわれない柔軟な働き方としている。通常の勤務地(自社および顧客客先、出先など)に行かずに、自宅やサテライトオフィス、カフェ、一般公共施設など、職場以外の場所で一定時間働くことを指す。具体的には、在宅勤務、モバイル勤務、施設利用型勤務などが該当する。ただし、移動交通機関内や外回り、顧客先などでのICT利用は含まない。また、回答者が個人事業者・小規模事業者等の場合には、SOHOや内職副業型(独立自営の度合いの業務が薄いもの)の勤務もテレワークに含まれる。第1回調査の20203月時点では就業している人のみを対象としたが、第25回調査では、継続回答者で失業した人も含まれる。なお、国土交通省の「テレワーク人口実態調査」や総務省の「通信利用動向調査」におけるテレワークの定義ではICTを利用した普段の勤務地とは別の場所で仕事をすることとしている。同調査では自社の他事業所や顧客先、外回りでの利用、移動中の交通機関、駅構内、空港内でのPCやモバイル端末利用も含まれている。
2 この一連の調査研究は科研費(基盤研究B「大規模災害時代の「災害の経済学」と防災-国際貿易・空間経済学の視点から」研究代表者:大久保敏弘19H01487)、慶應義塾大学次世代研究プロジェクト推進プログラム(研究代表者:大久保敏弘)、旭硝子財団サステイナブルな未来への研究助成(「自然災害における家計の防災意識とエネルギー意識に関する実証研究」:研究代表者:大久保敏弘)の補助を受けている。
3 各時期の詳細結果については、202013月は第1回調査、46月の結果は第2回調査、912月の結果は第3回調査、202114月は第4回調査、79月は第5回調査、1220221月は第6回調査の報告書を参照されたい。第1回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2020)新型コロナウイルスの感染拡大がテレワークを活用した働き方、生活・意識などに及ぼす影響に関するアンケート調査結果に関する報告書」第2回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2020)2回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第3回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)3回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第4回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)4回テレワークに関する就業者実態調査報告書」第5回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2021)5回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)」第6回調査結果:大久保敏弘・NIRA総合研究開発機構(2022)6回テレワークに関する就業者実態調査報告(速報)
4 詳細なテレワーク利用の要因分析に関してはOkubo(2022)を参照。
5 詳細はOkubo, Inoue and Sekijima (2021a)を参照のこと。
6 回答者はあくまで就業者本人の利用状況を回答しており、会社・組織を代表しての回答ではない。
7 選択肢に示したICTツールは以下のとおりである。(1)コミュニケーションの円滑化として、テレビ会議・Web会議、チャットやSNSによる社内情報共有、(2)共同作業の円滑化として、ファイル共有・共同作業、リモートアクセス、タスク・プロジェクト管理、(3)業務管理として、電子決裁、勤怠管理グループウェア、従業員のメンタルヘルスチェック、生産管理・販売管理・在庫管理、営業管理、採用管理、人事管理、会計管理、(4)オフィスの自動化として、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、バーチャルオフィス、非接触型テクノロジー、自動翻訳、BIツール、画像認識・画像解析ツールが含まれる。なお、非接触型テクノロジーの選択肢は第3回調査以降、自動翻訳、BIツール、画像認識・画像解析ツールは第5回調査以降で追加された選択肢である。
8 K6はKessler et al. (2003)で開発された尺度で、精神疾患をスクリーニングすることを目的として開発されたものである。日本語版はFurukawa et al. (2008)で開発されている。設問項目は、「神経過敏に感じましたか」、「絶望的だと感じましたか」、「そわそわ、落ち着かなく感じましたか」、「気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか」、「何をするのも骨折りだと感じましたか」、「自分は価値のない人間だと感じましたか」の6つの設問から構成されており、5段階のスケールで回答する形式となっている。各設問の回答を「まったくない」(0点)、「少しだけ」(1点)、「ときどき」(2点)、「たいてい」(3点)、「いつも」(4点)で点数化し、単純合計によって得点を算出する。厚生労働省『国民生活基礎調査』にも利用されており、メンタルヘルスを測定する指標として広く利用されている。『国民生活基礎調査』の詳細は、厚生労働省ウェブページ『国民生活基礎調査』で確認できる。なお、川上(2007)では、59点は「心理的ストレス相当」、1012点は「気分・不安障害相当」、13点以上は「重症精神障害相当」と区分している。川上憲人(2007)「全国調査におけるK6調査票による心の健康状態の分布と関連要因」『平成18年度政策科学総合研究事業(統計情報総合)研究事業「国民の健康状況に関する統計情報を世帯面から把握・分析するシステムの検討に関する研究」分担研究書』13-21.また、厚生労働省「健康日本21(2次)」では、「気分障害・不安障害に相当する心理的苦痛を感じている者の割合の減少」の目標値として、厚生労働省『国民生活基礎調査』において、20歳以上のK6の合計点における10点以上の割合を9.4%(2022年度)と設定している。
9 2019年は大規模調査が実施されており、K6の設問が含まれる健康票については、平成27年国勢調査区のうち後置番号1及び8から層化無作為抽出した5,530地区内の全ての世帯(30万世帯)および世帯員(約72万人)を調査客体としている。同調査は全国の世帯および世帯員を対象としており、就業していない人や、15歳以下の人も含まれている。そのため、本報告書で使用しているデータとは、想定しているサンプルの母集団が異なるため、分布を直接比較できないことに留意する必要がある。
10 『2019年度国民生活基礎調査』では、20195月中に全く仕事をしなかった場合であっても、次のような場合は有業としている。そのため、有業人員(15歳以上)に限定した場合の結果は、想定しているサンプルの母集団が本報告書で使用しているデータのサンプルの母集団と極めて近いといえる。(1)雇用者であって、20195月中に給料・賃金の支払いを受けたか、又は受けることになっていた場合(例えば、病気で休んでいる場合)(2)自営業者であって、自ら仕事をしなかったが、20195月中に事業は経営されていた場合(3)自営業主の家族であって、その経営する事業を手伝っていた場合(4)職場の就業規則などで定められている育児(介護)休業期間中であった場合
11 分布の形状を確認する際によく用いられるヒストグラムでは、階級の境界の設定により分布の形状が変わるため、ここでは、階級の境界に依存しないカーネル密度推定により分布の形状を確認する。
12 第1回調査では、全国の15歳以上の就業者を母集団とし、株式会社日経リサーチの提携モニターを対象にスクリーニング調査を実施し、就業者に該当する者のみが回答した。2019年度の総務省『労働力調査』の結果に基づき、性別、年齢(6区分)、地域(5区分)に応じて割り付け、回収目標数の10,000サンプルとなるよう調査を実施した。

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