西山隆行
成蹊大学法学部教授

経済・社会文化・グローバリゼーション
総論 2020年の各国政党政治
第1部 フランス 
第2部 イギリス 
第3部 ドイツ  
第4部 イタリア 
第5部 オランダ 
第6部 スペイン 
第7部 北欧諸国 
・第8部 アメリカ 
第9部 韓国

INDEX

第8部 アメリカ

政党の政策的な位置づけの困難さ

 アメリカの政党は、ヨーロッパの政党とは性格が大きく異なり、政党の政策位置のスコア評価に困難な面がある。

 ヨーロッパ諸国は、比例代表制を採用する国が多く、多党制となる可能性が高い。そのため、環境問題や反グローバリズムなどの単一争点に基づいて政党を組織することが容易である。他方、アメリカでは、小選挙区制を採用していることに加え、全米規模で展開される大統領選挙が他の選挙にも影響を及ぼし、有力政党が民主党と共和党の二大政党に集約されている。その結果、単一争点を掲げる人々は政党ではなく利益集団を組織することが一般的になっている。利益集団は、二大政党への働きかけを通じて、政治に影響を及ぼす。そのため、反グローバル化を掲げる政党が出てくることはあっても、あくまでも地方レベルでの活動にとどまり、全米レベルで有力な政党になるとは考えにくい。

 また、主要政党の政策位置を考える際に、政党内のどの立場を想定して回答するのかという問題が、アメリカの政党にはある。CHES調査では党首の政策位置を想定しているように見える。しかし、アメリカの政党には党首が存在せず、民主党や共和党という名前を冠していても、党内での政治家の政策や政策位置の幅が非常に大きい。これには、党執行部が候補者に対する公認権を持っておらず、選挙区単位で予備選挙か党員集会を実施して候補者を選出することと関係している。そのため、党主流派が忌避している人物、例えば2016年大統領選挙におけるドナルド・トランプのような人が候補者に選ばれ、さらには大統領になってしまうということがある。

 このように、アメリカの政党では、個々の選挙区が独自のメカニズムで候補者を選出し、政党規律も弱く、さらに大統領と上院や下院の院内総務の間でも政策位置が全く違うこともあり得るため、民主党や共和党を一括して語ることのが、非常に難しい。

経済争点では各党内に幅

 以上を断った上で、まずは経済的争点における主要政党の政策位置を考える。民主党が左派、共和党が右派ということは間違いないが、両党ともに、内部に対立する要素を抱えており、主流派を定めることが難しい。

 まず民主党には、ジョー・バイデン大統領に代表される穏健派と、バーニー・サンダース、あるいはエリザベス・ウォーレン、アレキサンドリア・オカシオ=コルテスなどに代表される経済左派が存在している。このうち、かつてビル・クリントン政権時に、ニューデモクラットと呼ばれていた議員から派生した穏健派は、中道左派の傾向が強く、3~4程度と評価できる。

 これに対して、サンダースやオカシオ=コルテスに代表される経済左派の評価は難しい。民主社会主義者を自称する者がいる一方、同じく経済左派の中でも、エリザベス・ウォーレンなどは、自らを資本主義者であって社会主義者ではないと主張している。いずれにしてもアメリカ国内だと最左派と評価できる。民主党経済左派の最大の政策は、国民皆医療保険を公的に制度化することであり、比較の観点で見るとヨーロッパでいうところの社会民主主義のスタンスに近い。他にも経済左派は、例えば若者の授業料免除や富裕層増税を主張しているが、国際比較の観点からすると、左派的な傾向が非常に強いとまでは言えないため、2~3程度と評価する。

 共和党についても、民主党と同様に寄り合い所帯になっている。一般的に、共和党主流派は、中道右派、あるいはやや右寄りであり、7~8程度と評価できる。一方、共和党内では、リバタリアンやティーパーティ派と呼ばれるグループがある。このリバタリアンやティーパーティ派は、非常に熱心に活動している時期(2010年代前半)だと9~10程度と評価できたが、トランプ派の出現によって、かなり状況が変わってしまった。

 そのトランプ派は、4~6程度と評価しているが、共和党内の混乱要因になっている。例えば、トランプは、アメリカ・メキシコ国境地帯の壁の建設に代表されるように公共支出の増大を求めており、経済右派の中では穏健派のように見える一方、減税を主張するという矛盾を抱えている。

 トランプ派による混乱に関しては、2021年1月6日に起きたトランプ支持者がアメリカ連邦議会議事堂に突入した前代未聞の事件が記憶に新しい。その時の映像には、ティーパーティ派のシンボルマークであるガラガラヘビを描いたガスデン旗を掲げていた人たちが多くいた。ティーパーティ派の相当部分が、トランプ派と融合したのである。ティーパーティ派の政治家の中でも、かつてはオバマケアに強く反対し、増税は絶対に認めないと主張していたテッド・クルーズなどが、急にトランプ派におもねって、髭を生やし、トランプの言っていることは正しいと言い始めるなど、大きく主張がブレたり、変化したりするようになっている。

 こうした状況を踏まえると、共和党の経済的なポジションがどういう状態なのか、今後どういうふうになっていくかについては、非常に説明・予想が難しい。新型コロナ問題を含めて考えても、読めない状況になっている。

図8-1 アメリカの政党の政策位置

社会文化的争点での分極化

 社会文化的争点も、経済政策と同じく評価が難しい。評価基準として、脱物質主義またはリバタリアンを0と位置づけることになっているが、リバタリアンの中に人工妊娠中絶の禁止を主張している人がいることが、アメリカの面白い部分である。民主党では、多くの政治家が妊娠中絶、尊厳死、同性結婚の権利を認めており、0に極めて近いとも評価できる。

 ただ、サンダースなど民主党の左派は直接民主制や参加民主主義的な手法を強調するが、民主党主流派は共和党以上にエリート主義的な傾向が強く、そのような手法に表立って反対はしないが、本音では認めたくない人が大半だと思われる。こうした点を勘案すると、有力政治家の中で、社会文化的な争点についてはブレが生じており、民主党としては0~3程度の幅を持った評価となる。なお、民主党内にリバタリアンを自称する人が存在しない点は、ヨーロッパとの大きな違いである。

 共和党は、全体として9~10程度と評価できる。リバタリアンの数名は場合により中絶を認めると主張しているが、原則として中絶反対派が党内のほとんどを占めている点を根拠とした。

 同性婚については、近年、共和党内でも容認する立場が、一部登場するようになっている。ただ、彼らが同性婚を容認する理由は、同性婚が望ましいと考えるからではなく、家族の価値(ファミリー・バリュー)を重視するためだ。1960年代後半から、家族の価値を守ることが社会的保守派の間で極めて重要なこととされてきた。彼らは、家族の解体が叫ばれる中、「同性愛であっても婚姻は家族を重視していることの表れだ」として、同性婚も容認するようになっている。このように、同性婚を容認することは一見リベラルに見えるものの、根本にある価値は非常に保守的だと考えられるため、トータルとして9~10程度という評価になるだろう。

政権時にグローバル化を推進し、非政権時に反グローバルに転じる

 グローバリゼーションをめぐっては、一般的に共和党が自由貿易に積極的な立場で、民主党が消極的な立場だというイメージがある。これは共和党がビジネス勢力を支持基盤とし、民主党が労働組合を支持基盤としていることから生まれたイメージであり、ある意味では正しい。しかし、バラク・オバマ政権期以降の自由貿易に関する世論調査を見ると、有権者レベルでは共和党支持者のほうが民主党支持者よりも自由貿易に対して懐疑的な立場をとっており、民主党支持者のほうが自由貿易推進派である。その傾向が顕著に反映されたのが、オバマ政権が推進した環太平洋パートナーシップ(TPP)協定からトランプ大統領が離脱したことだ。

 ただし、これについても留保が必要であり、TPPにつながる構想を最初に示したのはクリントン政権で、それをアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)という構想で引き継いだのがジョージ・W・ブッシュ大統領であった。そして、イラク戦争が泥沼化し、FTAAP構想を前面に出すことができなくなったブッシュを引き継いだのがオバマであり、こうした一連の流れを覆したのがトランプである。これらを踏まえると、アメリカの政党は、トランプを例外として、政権政党の時代には自由貿易を推進し、非政権党の時代には自由貿易やグローバル化に対して懐疑的な姿勢を示す傾向が強くなる、という特徴を指摘できる。

 もっともオバマ政権の末期、2016年大統領選挙からグローバリゼーションに対する懐疑が二大政党内部でともに顕著になってきている。政権党になった場合でもグローバリゼーションに積極的な姿勢を示すことが難しくなっているというのが、現状のアメリカだと考える。オバマ政権を副大統領として支えたバイデン大統領も、アメリカ国民の雇用が厳格に守られるものとならない限り、TPPに復帰することはできないと発言している。そのため、各政党を評価すると、両党ともに3~8の幅を状況に応じて揺れ動いているという状況と考える。

争点が経済から、人権問題、党派対立への変化

 アメリカ独自の政治的な対立軸として、人種やエスニシティの問題が大きな意味を持っている。民主党がマイノリティ重視、共和党が白人重視という傾向があるが、トランプ政権期以降、より顕著になった。

 最近では、Black Lives Matter運動のほか、ニューヨークタイムズが始めた「1619年プロジェクト」が注目を集めている。アメリカの建国を、アメリカ独立宣言や合衆国憲法の成立ではなく、初めて黒人奴隷がアメリカ大陸に連れてこられた1619年に遡って理解するべきだと主張するプロジェクトである。また、建国者の1人であるトマス・ジェファーソンなどを奴隷所有者であり人種差別主義者としての側面を持っていたことを批判して、その銅像を叩き潰そうといった、いわゆるキャンセル・カルチャーと呼ばれる現象が起きていることも、大きな争点になっている。

 一昔前までは、各種世論調査で見られたアメリカの分極化については、経済政策に関する立場で大半を説明できるとの主張が多かったように感じる。ただ、最近では、経済が中心的な規定要因ではないという主張がかなり有力になっている。その代わりに、全ての争点態度が二大政党の党派性によって説明できるようになっているという。党派性が規定要因である点を強調して、最近では「分断」という表現を用いることも増えている。ただし、グローバル化については、二大政党とも懐疑が強くなっているところもあるため、やや例外的な位置づけになるだろう。

 その要因として、シンクタンクやメディアの影響が大きくなっていることが挙げられる。アメリカの場合、ニューディールや第二次世界大戦以降、民主党が圧倒的な優位に立つ状況が続いていた。その中で1950年代ぐらいから、保守系シンクタンクのヘリテージ財団などの幾つかの財団が協力して、民主的なリベラルなスタンスに反発している人々同士を争わせるのではなく、民主党やリベラルが悪いという形で、保守の大同団結を図ろうという動きが登場した。その動きに加えて、ケーブル放送や衛星放送が非常に発達しているアメリカで、保守のメッセージを全面的に取り上げるメディアが登場するようになり、まずはラジオ、さらにはFOXなどのテレビ局が保守派や共和党の応援団のような番組をつくるようになっていった。これに対して、MSNBCなどが中心となって、民主党やリベラルの応援団のような番組を放送するようになった。

 その結果、数多くのチャンネル数があるアメリカにおいて、民主党支持者はMSNBC、共和党支持者はFOXを観るという傾向がどんどん強まっていった。こうして、経済争点と社会文化争点を1つにした状態で、有権者レベルの認識や態度が党派別にまとまってしまうという傾向が出てきた。

「トリプル・ブルー」

 2020年大統領選挙では民主党のバイデンが共和党のトランプ前大統領に勝利した。この結果を受けて、2021年1月20日正午にバイデンが大統領に就任した。

 同時に実施された連邦議会選挙については、下院では民主党が議席は減らしたものの、多数を維持した。上院では、ジョージア州の決選投票を民主党が制し、民主党と共和党の議席数は50対50となった。

 上院では、賛否同数の場合は上院議長を兼ねる副大統領が決定票を投じることになっているため、実質的には民主党が勝利したと言ってよい。このような連邦議会の状況を踏まえると、民主党による統一政府、マスメディアでは「トリプル・ブルー」という表現もされているが、大統領と連邦議会の上下両院を全て民主党が押さえる状況となっている。

 連邦議会の選挙制度は、上下両院ともに小選挙区制で実施されている。州を単位として議席が割り振られているため、どの州にも属していない地域、例えばプエルトリコ、グアム、サイパンなどの住民は、選挙権を有していない。ワシントンD.C.の住民も、上院議員を選べない(なお、ワシントンD.C.の住民は大統領選挙に関しては投票権を持っている)。

 上院は、50州全てに2議席が与えられ、総数が100人、任期は6年となっており、偶数年に3分の1ずつ改選する形となっている。下院は、全議席435議席を10年に一度行われる国勢調査の結果に基づき、州ごとに議席を割り振り、州内で1票の格差が発生しないように選挙区割りを各州が実施している。国勢調査に基づく議席割り当てのため、不法移民や留学生なども、議席配分の前提となる人数に含まれてしまい、実際に1票の格差が解消されているかは非常に難しい面がある。また同じ1議席しか持たない州の間でも、2倍近い人口格差が存在する場合もあるため、1票の格差は日本と比べればもちろん小さいものの、厳密な意味ではなくなっているわけではない。

民主・共和両党に反グローバリズム勢力

 戦後より、アメリカは、グローバリズムの推進国として、経済政策に限らず、ディズニーやマクドナルドに象徴されるように文化も世界各国に輸出し、まさにグローバル化のけん引者であった。特に、クリントン政権以降は、経済的にネオリベラル政策を進めることで、国内外に影響を及ぼしきた。

 他方、グローバル化の進展によりアメリカ国内の労働組合が弱体化するという影響も見られた。本来ならば、民主党は労働組合を支持基盤としていたはずだが、グローバル化やネオリベラル政策の推進に際しては彼らの声は反映されなかった。こうして共和党によっても民主党によっても代表されなくなり、政治的に声を奪われた製造業に従事する労働者の声に耳を傾けたのが、共和党の反グローバリズム勢力である。

 民主党系にも反グローバル運動があり、ウォール街占拠運動が代表例である。アメリカの富が最も富裕な1%に集中している現状を踏まえて、富とグローバル化を象徴するウォール街を占拠しようという運動であった。この運動が、後のサンダース旋風、民主党左派へとつながっていった。だが、民主党内では黒人や中南米系などの人種・民族的マイノリティの問題を重視する傾向が強いことから、白人労働者層に対する配慮は十分になされていなかった。

 共和党内の反グローバリズムは、何と言ってもトランプ現象だ。トランプは、ラストベルト(錆びついた地帯)の白人労働者層に注目し、彼らの失業が急増した原因が海外や移民にあるとし、反移民あるいは反不法移民、反国際機関、そして反グローバルエリートのメッセージを発し、支持を集めた。ラストベルトに居住する声を奪われた白人労働者層は、トランプの岩盤支持層となった。

 各党における反グローバリズム勢力の影響力については、なかなか計測が難しい。アメリカの政治家は、選挙時の主張と議会での投票行動が異なることが多いからだ。近年は、政党規律(日本でいう党議拘束)に従った議会内行動の比率も高くなっている。共和党では、かつてはティーパーティ派であったクルーズがトランプとベッタリになってしまうなど、トランプ政権末期には半数近くの議員がトランプ派になった。他方、民主党では従来主流派が6〜7割程度であったが、新型コロナ問題が出てきてからは、ほとんどが左派になりつつある。

貿易政策への影響

 一般的に、自由貿易は富の拡大や国全体の利益をもたらすが、既に自由化が進んだ国では、さらなる自由化から得られる利益は小さい。その一方で、特に製造業に見られる失業者の増大は、労働者層のグローバリズム批判を強める。本来、製造業で失業が増大したのはオートメーション化のためであり、失業者の職業訓練や他業種への移動でしか現状を変えることはできない。

 トランプ政権は移民とグローバル化が失業増加の原因と繰り返し主張したが、実質的な失業対策を講じることなく、反グローバリズムの声を強めるだけに終わった。ただし、共和党全体が反グローバリズム、反自由貿易でまとまったわけではなく、比較優位を持つ産業においては、グローバル化推進の声が強い。例えば、農業セクターはTPPへの復帰を強く求めていた。さらに言えばトランプ派も、グローバリゼーションを前提にした上で、自国に有利な状況をつくろうとした側面が強い。

 民主党内にも、前述のとおり、環境問題や労働問題を重視する勢力が反グローバリゼーションの立場だが、彼らもやはりグローバリゼーションの進展を前提とした上で、米国内や貿易相手国に対して環境保護や労働環境の是正を求めている。オバマ政権が主導した各国との自由貿易協定(FTA)は、環境保護や労働者の保護を条件として締結された。

 両党の反グローバリズムの傾向が、どのように対外政策、特に貿易政策に影響したかを考える。単独行動主義(自国第一主義)を掲げたトランプ政権に関しては、TPPからの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の問題、さらには各種国際機関からの離脱などが挙げられる。特にNAFTAに関しては、トランプは当初から否定的だったため、労働者保護や知的財産の問題をより重視する米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に変更された。気候変動に関するパリ協定や世界保健機関(WHO)からの離脱も、大統領令によって実施された。オバマ政権はTPPやパリ協定を行政協定と位置づけ、大統領令によって参加したため、トランプも大統領令によって離脱できたのである。そしてバイデンも、トランプの大統領令を覆し、WHOとパリ協定からの離脱を撤回した。

 その一方で、TPPに関するバイデン政権の立場は、WHOやパリ協定とは大きく異なる。オバマ政権の副大統領としてTPPを推進する立場だったバイデンも、その後トランプによって不平等な貿易条約のシンボルとされたTPPへの復帰を主張することはできなかった。ただ、バイデン政権発足後は、例えばジェイク・サリバン補佐官が対中牽制の観点から各国間での経済的な連携が重要と発言するなど、TPP復帰の可能性を模索している。

 しかし、仮にバイデン政権がTPP復帰を決めたとしても、議会の問題がある。憲法の規定上、貿易に関する権限は連邦議会が持っているが、現時点でTPPに賛同する議員は非常に少ない。バイデン政権が議会における支持獲得に動く可能性もゼロではないが、現状ではその確率は非常に低いだろう。流れが変わるとしたらイギリスがTPPに加入したとき、という議論がある。

二大政党におけるポピュリズム

 二大政党ともにポピュリズム的な言説を利用する政治家が一定数存在している。ただ、小選挙区制を採用するアメリカでは選挙区内で相対多数の支持を獲得しなければならないため、ポピュリズムだけで選挙に勝利するのは困難な場合が多い。例えば、トランプが2016年大統領選挙に勝利したときには、右派の中には彼のポピュリズムは快く思わない勢力もあった。だが、大統領は連邦裁判所の判事任命権を持つことを考えて、トランプの手法を嫌いつつも、民主党を勝利させたくないという思いからトランプに投票した人々がいた。これらのことを考えると、トランプ勝利をポピュリズムだけで説明するのは無理がある。

 アメリカのポピュリストは反エリートの傾向が強い。新型コロナの問題が生じてからは、特に右派ポピュリストの間に、医療専門家に対する反発から反マスクや反ワクチンの動きが見られたのは興味深いと言えよう。

新型コロナ問題の余波

 2020年以降の新型コロナ問題は、二大政党のそれぞれにおいて、社会保障の拡充を求める立場の存在感を高めた。

 従来、バイデンなど民主党主流派は、政府管掌保険導入による国民皆保険の達成を求める党内左派の主張を極端すぎるとして、オバマケアの拡充を進めようとしていた。しかし、新型コロナの蔓延とともに、民主党左派の主張が支持を拡大していった。大統領選挙ではバイデンの主張を否定しないように民主党内はまとまっていったが、トリプル・ブルーが達成された今となっては、再び左派の主張が強まり、バイデン政権の足かせになる可能性がある。

 同様に共和党でも、新型コロナの感染拡大によって、給付金増額や公共事業の拡充などトランプ派の主張が存在感を増した。共和党主流派はこうした流れを断ち切りたいと考えているが、急激な方向転換はトランプ派の反発を生み、党内を分裂させかねたいため、表立っては統制しない方針を取っている。現段階ではまだ読めない部分が多いものの、これからもトランプ派が共和党内で存在感を維持する可能性がある。

民主党左派とトランプ派の合意?

 今後のアメリカを見通す上で、民主党左派と共和党トランプ派が、反グローバリゼーションのもとで大きなうねりを生み出すかどうかは重要な視点である。ただ、彼らは反グローバリズムでは共通していても、民主党左派は現金給付を重視する一方で、トランプ派は現金給付を忌避するなど意見の隔たりも大きい。

 両者が繋がる可能性があるとすれば、グリーンニューディール政策かもしれない。トランプ派は、環境保護には必ずしも賛同しないが、グリーンニューディール政策に含まれる電線設備の整備など公共事業の拡大については、支持者に利益をもたらす失業対策として同意しうる。グリーンニューディールの打ち出し方によっては、共和党トランプ派を賛成に転じさせられるかもしれない。

 もっとも民主党左派は、グリーンニューディールのうち公共事業ではなく、環境対策をもっと前面に出すようバイデン政権に求めるかもしれない。共和党の協力がなくとも法案を成立させられるトリプル・ブルーにおいて、超党派的な賛同をわざわざ求める必要もない。民主党内で調整が付けば、グリーンニューディールによる民主党左派と共和党トランプ派の連携は不要になる。

 政党間の問題に加えて、グリーンニューディールに対する大きな懸念として、財源の問題がある。アメリカの連邦政府予算は硬直化しており、年金、メディアケア、国債利払いなどの義務的支出の割合が大きく、裁量的支出に回せるのは10%程度しかない。予算に制限がある中で、新たに公共事業を行うことは難しい。アメリカの二大政党のそれぞれで足場を固めつつある反グローバリゼーションの勢力だが、両勢力が一丸となって大きなムーブメントを起こすことができる可能性は、すくなくとも現時点では非常に低いと言えるだろう。

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)西山隆行(2021)第8部アメリカ谷口将紀・水島治郎編『NIRA研究報告書 経済・社会文化・グローバリゼーション』NIRA総合研究開発機構

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構

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