古賀光生
中央大学法学部准教授

経済・社会文化・グローバリゼーション
総論 2020年の各国政党政治
第1部 フランス 
第2部 イギリス 
第3部 ドイツ  
第4部 イタリア 
第5部 オランダ 
第6部 スペイン 
・第7部 北欧諸国 
第8部 アメリカ 
第9部 韓国

INDEX

第7部 北欧諸国

極右政党が存在しない北欧

 CHES調査における北欧諸国の各政党の各争点に関する位置には、異論はない。ただし、各国で想定するソーシャル・リベラルは異なり、同じ国内で各政党を比較する目的には優れているものの、国際比較には注意が必要である。

 ヨーロッパ各国の経済争点には大きな違いはない。左から右までそれぞれの立場を代表する政党が、各国とも揃っている。しかし、社会文化的争点においては、各国で顕著な差がみられる。北から南へ、また西から東へと行くに連れて、政党の主張が全般的に右寄り、コンサバティブになっていく傾向がある。これはおそらく、有権者の動向を反映したものであろう。ヨーロッパ各国の有権者を調査しているEuropean Social Surveyのデータを見ても、例えば同性愛の権利に対する態度を見ると、オランダよりもオーストラリアの方が右寄り、すなわち同性愛の権利を認めないという立場の人が多い。

 一方で、北欧に極右政党は存在しない。様々なメディアで北欧の特定政党に「極右」という表現を用いるケースが散見されるが、それは適当ではない。ヨーロッパにおける典型的な極右としては、ドイツ国家民主党やオーストリア自由党、ジャン=マリー・ルペンが党首だった頃のフランスの国民戦線が挙げられる。これらの政党を極右と見なす理由は、戦間期以来のナチスやファシズムとの人的ネットワークが要素として挙げられる。一方、そのようなネットワークと切り離されている北欧の政党を、「極右」と評価することは困難である。

 CHES調査における「極右」の評価をみると、デンマーク国民党の社会文化争点が8.4と、デンマークの中では最右派であり、伝統文化を強調するナショナリスティックな政党と評価されている。しかしながら、同党がイスラム教徒を忌避する理由として挙げる「イスラム教が言論の自由を守らず、男女平等に反する」という開明的な反イスラム思想は今ではヨーロッパ全域で広がっている。デンマーク国内では8.4と大きく右寄りに評価されているが、ヨーロッパ全域でも最右派として評価するまでは至らないだろう。

 CHES調査の評価に変更を加えるとすると、ノルウェーの進歩党は、かつて主張していた新自由主義傾向が影を潜めており、CHES調査よりも、もう少し経済争点に関して左派寄りに位置付けても良いと思われる。例えば、ノルウェーの石油基金を用いて年金支給を強化ことで再分配を重視する姿勢に転じている。

 ノルウェーの進歩党は、ドイツのAfD(ドイツのための選択肢)に相当する政党と言えるだろう。当初、AfDはユーロ反対を掲げ、経済学者が経済理論に基づいて運営する政党であった。しかし、徐々に党内の極右勢力が力を持つようになり、今では極右勢力が政党の主流派を担っている。

図7-1 北欧諸国の政党の政策位置

コラム

 オーストリアに、自由党という一般的には右派ポピュリスト政党と言われている政党がある。反イスラムを掲げ、イスラム教徒による治安問題やテロ問題を主張し、CHES調査でも、社会文化争点で8.7と評価されている。同党が連立内閣に参加した際には、政権公約として、男と女、その子どもたちから成る共同体としての家族を強調し、明確に同性婚に反対し、女性の社会進出にも、ケア労働に依存した形で進めると主張していた。
 ただし、自由党が伝統的な価値観を主張する典型的な右翼政党になったのは、かつての党首イェルク・ハイダーが離党してからである。ハイダーは、スザンネ・リース=パッサーやハイデ・シュミットなど女性を積極的に擁立し、伝統的な価値観でも時代に合わせた柔軟な主張を行なっていたため、当時の自由党を典型的右翼と呼びうるかは、議論の余地がある。
 また、オーストリアにおける緑の党の主張は、北欧諸国ではすでに当たり前のことであるため、北欧では緑の党の支持が伸びない。
 このように地理的な近さはあっても各国で異なる背景、文脈が存在しており、国際比較を行う際には注意が必要である。

グローバル化を前提とした社会である北欧諸国

 北欧では、反グローバリズム政党は成り立たない。北欧諸国は、基本的にグローバル化を前提に、国際競争の中でどう生き残っていくかを考えて経済運営を行う、開放小国経済を採っている。例えば、スウェーデンにおいて成功した社会経済モデルとして有名なレーン=メイドナー・モデルは、国際競争を前提に生産力の低い部門を潰し、生産性の高い部門に人を移すというものだった。このモデルは、労働者に負担を強い過ぎたという反省もあるが、国際競争の中で自国の生活水準をどう上げていくかを考えたものである。あるいは、デンマークのフレキシキュリティ・モデルも、国際競争の中で生き残っていく中小企業の経済基盤を整えるために解雇規制が元々緩かったことを前提とした仕組みである。

 このように北欧は、アメリカ合衆国やドイツなどグローバル化のルールを決めていくような中心国とはそもそもの基盤が異なっている。国際競争を前提としたグローバルな経済は所与のものとして受け入れた上で、どのような形のグローバリズムを進めていくべきかを考えている。例えば、グローバリズムであっても、マーケットが全て決める経済的なグローバリズムには反対だが、環境問題を国際協調により解決するといったグローバリズムには賛成という主張がある。また、どの分野・部門のグローバリズムを進めるかでも大きく立ち位置が異なってくる。

 北欧諸国では、日常生活でも北欧諸国間の繋がりが強いため、日常的な国境を越えた労働移動に関しては、反移民を掲げる急進右派でも反対することはない。また、EUによるグローバル化を認めるかとなると、EUが加盟国に強いる厳しい環境規制や経済財政政策、難民政策などに各国のほとんどの政党が反対しているのが現状である。各党間の主張の違いは、移民受け入れの程度や、EUとの距離に表れる。

北欧における政党間競合の変化と左右のブロック化

 北欧にとって、環境問題は重要争点になっている。また、移民・難民に関する主張にも、自由を重んじるリバタリアンの一部の中道右派政党が、例えば言論の自由の観点からイスラム教を批判するなど、単に移民難民への忌避感だけではない独自の争点が含まれている。

 北欧に限らず、ヨーロッパでは、左右に大きな(政党)ブロックがあり、中道に近い有権者の支持を左右で奪い合う競合関係の構図が通説とされてきた。しかし、この構図は、1990年代以降、現在進行形で、大きく変化している。急進右派の台頭と左右ブロックの固定化が進んでいるのだ。

 政治学者のサルトーリが主張した北欧の安定的な多党連立は、すでに1970年代に基盤が揺らいでいる。いまや各政党は左右のブロックに分かれ、どの政党であれば協力できるかを事実上選挙前から決めている、左右の政党の二分された状態となっている。選挙を行う際に各党は、表向き他党との連携に関して是々非々と主張しているものの、新聞では、選挙前からブルジョアを表す青色と社会民主主義を表す赤色の2色でそれぞれの政党が塗り分けられるなど、左右ブロックの固定化は公然の事実である。

 北欧における左右ブロックの固定化は、なぜ起きたのか。この左右のブロック化の進展度合いは、各国の左派側(左翼)の社会民主党や労働党がどのぐらい強かったのかによって変わる。エスピン・アンデルセンの『Politics Against Markets』は、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの順で左派が強かったことが原因となって、スウェーデンでは誰にでも平等に社会保障を行う「普遍主義」を北欧の中でも早く達成し、逆に左派が強くなかったデンマークでは中途半端な普遍主義の社会保障制度になったと主張している。さらに、この構図を逆転して、中道左派政党の優位が続いた時期が説明されている。この図式に従えば、左右のブロック化した国の順番やその理由が理解できる。つまり、北欧の中で初めに左右がブロック化したデンマークでは、左派側の基盤が弱く、右派ブロックは急進右派を取り込めば左派政党に対抗できたために、左右のブロック化が進んだ。2010年代には、ノルウェーでも左右でブロック化が進行した。スウェーデンに関してはまだブロック化していないが、将来的には類似の状況となる可能性は十分に高い。

 それぞれのブロックの中身を見ておこう。ヨーロッパの通説的な政党の政策位置関係は、右派の保守主義政党、中道右派寄りの自由主義政党、左派の社会民主主義政党の3党が中心となって構成される。1980年代までの北欧の場合は、この3党に加え、中道寄りの農民政党と最左派の旧共産系政党の5党によって政党システムが構成されていた。

 1990年代以降、左派側では、所得の再分配を強調する左派と、グローバルな競争を受け入れる、ギデンズの「第三の道」のモデルとなった中道左派の間で、分配をめぐって多少の意見の分裂が生じた。さらに、環境政党として勢力を伸ばした緑の党が、再分配を主張する左派と連携することで、いわゆる新しい赤緑連合を形成した。このような左派勢力の政党間関係の変化は、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの3ヶ国に共通している。

 それに対して右派側の諸政党は、保守政党や自由主義政党と言っても、ドイツのCSUほど保守的ではなく、CDUと比べてもソーシャル・リベラルに近い。また、キリスト教民主主義の政党はあるが、オランダやドイツなどのように、19世紀末に成立した宗派政党を起源のひとつに持つキリスト教民主主義政党とは異なり、新興系の政党である。北欧の宗派政党は、20世紀後半以降に文化的な争点を背景にして登場しており、国家と教会の対立を背景に登場した古い宗派政党とは性質が異なる。加えて、経済的な左右の位置付けは難しいが、社会文化、グローバリズムの争点で、右派寄りの反移民政党が、どの国でも出現している。

少数内閣の伝統と、左右のブロック化の影響

 北欧諸国の選挙制度は、主に比例代表制であり、選挙区ごとに集計した上で、調整議席を振り分ける方式を採用しているため、選挙区のインパクトが決して無視できない。加えて、特徴的な点として、北欧には、少数内閣(minority government)を形成する伝統を有する国がある。少数内閣とは、複数の政党で連立政権を構成するにしても、与党の議席が過半数に満たない状態のことである。

 逆説的だが、政権与党が過半数を有していない場合が多かったからこそ、様々な決定において、強行的にならず、できる限り各政党が賛成するように決定しようと試みる伝統が形成された。しかし、このようなコンセンサス志向は、急進右派の台頭によって一変した。急進右派によって、各党間でのコンセンサスが形成されにくくなった。例えば、かつては全会一致が目指された予算案ですら、過半数さえ賛成すれば良いという、これまでとは異なる通し方を行うようになった。特にデンマークでは、かつてと比べて多数主義的な傾向が強まり、急進右派やポピュリズムの台頭によって、政治的な変動幅が大きくなった。

 デンマークでは、社会民主党を中心とした左派ブロックと、自由党と保守党の保守・自由主義の右派系ブルジョアブロックの対立があった。そして、右派系ブルジョアブロックは左派ブロックに対抗するため、急進右派政党・デンマーク国民党を取り込む形で、2001〜2011年と2015~19年に連立政権を形成した。

 ノルウェーでは、2013年に右派ブロック政権が形成された。それ以前は、左派側の労働党が緑の党や中道政党を緩やかに巻き込んで選挙に勝利してきたが、2010年代に至って右派側が急進右派の進歩党を取り込んだため、従来は右派側とも協調関係があった中道政党は、急進右派を嫌がり左派ブロックに合流、明確な左右ブロックが形成された。

 スウェーデンでは、中道左派が中道右派に対して圧倒的に優位である。この中道左派優位の裏には、勢力を急速に拡大している急進右派・スウェーデン民主党の存在がある。スウェーデン民主党は、連立政権に参加していない。2015年に閣外協力に踏み切った結果、2019年総選挙で弱体化したデンマークの国民党や、連立に参加後に支持率を落としたノルウェーの進歩党などを後目に、スウェーデン民主党は、いまだに連立政権に参加していない(できない)からこそ、不満の受け皿としてのポジションを優位に保ち、直近の選挙でも得票率17.5%という高い支持を受けている。スウェーデン民主党との協力を抜きにして、中道右派の獲得議席が中道左派を上回るのは難しい。

別の形のグローバル化を主張する反グローバリズム政党

 前述のとおり、国際比較の観点での反グローバリズム政党は北欧には存在し得ない。北欧には、反国際協調や一国主義といった発想がそもそもないため、強いて挙げるならば、現状のグローバリズムとは異なるグローバリズムを標榜する政党が反グローバリズム政党となり、デンマーク国民党やノルウェー進歩党などの急進右派政党が該当するだろう。

 まずデンマーク国民党は、もともと反税を掲げていた右派政党であるデンマーク進歩党から離脱した勢力により結成された。デンマーク国民党は、福祉サービスの質の担保のために、享受できるのは自国民だけに限定すべきだという、福祉排外主義を主張した。白人のデンマーク人の伝統的な生活を重視し、反移民・難民の政策を掲げることによって、特に年金生活者を支持層に取り込もうという思惑である。

 デンマーク国民党が大きく勢力を拡大したため、右派の既成政党は単独で政権を取れなくなってしまった。右派の既成政党である自由党は、デンマーク国民党と連立を結成するかどうかの選択を迫られた。デンマーク国民党を取り込まなければ数の上で左派に負けてしまうが、デンマーク国民党と組めば、同党を忌避する中道の有権者層の支持や中道政党の協力を逃してしまう。結論として、自由党は中道を諦めてでも、デンマーク国民党を取り込む道を選び、2001年にデンマーク国民党は閣外協力という形で連立政権に参加している。

 この結果、それまでのデンマークは外交・安全保障上の重要な戦略として、ヨーロッパで最も難民を積極的に受け入れていた国だったのが、デンマーク国民党の連立参加以降は明らかに難民受け入れに一番厳しい国の1つになった。

 ただし、注意しなければならないのは、デンマーク国民党が参加したことで、一朝一夕にデンマークが反難民になったわけではない点である。実際の因果関係は、むしろ先に自由党の政策が反難民に振れており、そこにデンマーク国民党を政権に迎え入れたことでスムーズに、難民受け入れが厳格化されたというものだ。

 ノルウェーでは、デンマークと同じ状況が10年遅れの2013年に生じた。デンマークの進歩党を参考に、「進歩党」という名前の政党が70年代に作られ、定着した。ノルウェーの進歩党は、デンマークの進歩党(デンマーク国民党の前身の政党である)と似たような支持基盤を持っているものの、全て同じだとは断定できない。ノルウェーは南北に細長い国のため、南側の方が様々なリソースにアクセスしやすく、北側は過疎な地域が多いなど、地理的要因が非常に重要である。

 ノルウェーは、スタイン・ロッカンが提唱した「中央-周辺」(注1)のモデルの典型例でもあり、経済や交通格差の縮小を求める北側の周辺部で票を取れるかどうかが重要となる。議員定数配分で優遇されているこうした過疎地域でしっかりと票を取ったことが、ノルウェーの進歩党の大躍進の一つの要因となった。特定の階層に依存しないで、様々な階層から幅広く票が取れるポピュリストとしての側面が進歩党にはある。

 ノルウェーの進歩党内でも連立参加をめぐる議論が起きた。野党だからこそ、多くの支持を得たのだが、党内からは政権に入るべきだと声が上がるようになり、議論を重ねるうちに、いつまでも煮え切らない政党から少しずつ支持が離れていき、ようやく2013年に保守党との連立政権を結成した。

 ノルウェーもデンマークと同じく、進歩党が連立に参加したために難民政策を厳しくしたのではなく、主流右派政党である保守党が難民政策を硬化したことで、進歩党が政権参加できた。ただ、次の選挙では左派側による政権交代が起きる可能性も高く、左右ブロックに分かれたデンマークのような構造になるかどうかは、まだ不透明な部分が多い。

 スウェーデン民主党は、デンマークやノルウェーの急進右派と異なり政権から排除されているため、不満の受け皿としての支持を得ている。スウェーデンは右派側勢力であっても他の北欧諸国と比べても社会的にリベラルであり、急進右派のような反難民勢力への拒絶感が強い。ノルウェーとデンマークの急進右派政党は旧ネオナチなどの動きと完全に切れているのに対し、スウェーデン民主党はファシズムに歴史的淵源をもつこととも関連があるだろう。加えて、スウェーデン民主党が勢力を拡大しているのは、ここ10年程度であり、90年代から侃々諤々と急進右派を政権に入れるかの議論をやってきたノルウェーとデンマークと比べると、議論の蓄積が足りない。ただ、前述のとおり、スウェーデン民主党を排除し続けたままでは右派側勢力は政権をとれないため、穏健な保守政党であっても受け入れを検討せざるを得ないし、急進右派側も、政権をとることを本気で考えるならば、急進的な批判や社会的に受け入れがたい極端な主張をどこまで抑えることができるかの議論を進めることになろう。そこでは、ドイツのAfDのように急進的な批判の受け皿となってボトムアップな組織となるか、ノルウェーやデンマークのように過激すぎる主張を抑えるリーダーシップや運営マネジメントができるトップダウンの組織となるかが鍵となるだろう。

オルタナティブなグローバリズムの主張

 反グローバリズムに通ずる反EUに関して、EUに未加盟のノルウェーでは、EUへ加盟すべきという主張が徐々になくなっている。これには、EUに加盟しなくとも、実質的にEU域内と様々な面で歩調が合わせられるとともに、かつてEU加盟に関し激しい国内対立を惹起した経験から、再び大論争を起こすべきでないという共通認識がある。

 反グローバリズムとは少し異なるが、特殊、かつオルタナティブなグローバリズムを主張する政党としては、今は下火になってしまったが、スウェーデン海賊党がある。スウェーデン海賊党は、インターネット上での現状の知的財産権の保護が過大と考え、知的財産をコモンズ(共有財)のように扱うべきだと主張し、例えば、海賊版ソフトのダウンロードを認めるべきだと訴えた。このように、海賊党は、インターネット上の規制をより強めるのではなく、より自由にすべきだという点で、一時支持を受けていたが、先鋭的で、オルタナティブな主張であったために、現在では支持を失いつつある。

新型コロナの打撃を受けた急進右派と、岩盤支持層

 新型コロナウイルス感染症拡大下で、ヨーロッパ各国の急進右派の支持基盤は揺らいだと言われている。しかし、北欧に限らず、多くの国の急進右派の支持率は、最低でも10%を割ってはいない。

 一方、ドイツのAfDは2017年総選挙で第3党になったとはいえ、得票率は12%に過ぎない。それと比べれば、ノルウェー進歩党は26%の得票率を獲得したことがあったし、デンマーク国民党も20%以上の支持、オーストリア自由党も同様の高得票率を記録した時期があった。

 以上からは、ヨーロッパにおける急進右派政党の支持率は、ピークで25%、ボトムで10%程度であることがわかる。特に北欧の急進右派については、スウェーデンこそ不透明な部分が多いものの、ノルウェーやデンマークではボトムでも10%前後であり、岩盤支持層が形成されていると言えるだろう。

 この岩盤支持層は「グローバル化の敗北者(ルーザー)たち」と呼ばれる人々だ。ルーザーとは、グローバル化で、何かを失う、もしくは今まで守られていた既得権を失うかもしれない人たちのことを指す。失うもの、既得権とは、アメリカのラストベルトのような学歴がなく、重工業に従事している人々である。重工業が元気だった時の社会構造が、揺らいで何かを失った人たちとなる。こうしたルーザー層の支持による急進右派の台頭は、1990年代初期、特にフランスやイタリア、オーストリアなど、重厚長大産業が保護されていた国で顕著に見られた。

 ただ北欧では、このルーザー層が比較的薄い。最初からグローバル競争を前提に労働市場を流動化させており、社会的な投資国家、シュンペーター的なアクティベーションを行なってきた。また、北欧における急進右派政党の支持者には年金生活者が多く、これは高齢化に伴う新しい価値観や移民など異文化に対する距離感なのか、それとも年金などの社会福祉、生活不安に結びついた急進右派支持なのかは、今後しっかりと分析しなければいけない。

国際協調を前提とした北欧のポピュリズム

 ポピュリズムを考えるためには、ヨーロッパにおける政党の役割を考える必要がある。ヨーロッパにおける政党は、中間団体が社会に根を張っており、人々の政治的な要求、意思を吸い上げるネットワークがあり、最終的に「政党」という形で結集される。そして比例代表選挙によって、各政党が代表として議会に送り込まれ、議会内のネゴシエーションを通じて意見集約をしていくといったモデルが形成されている。

 このようなモデルは、オランダやベルギー、オーストリア、北欧ではデンマークが典型的に当てはまるだろう。つまり、こうしたネットワークが前提となった妥協的な政策形成モデルそのものに対する異議申し立てを「ポピュリズム」とするならば、北欧のポピュリストは、今なおポピュリストなのかを考え直す必要があるかもしれない。

 北欧のポピュリストの特徴は、組織化が進んでおり、特定の階層に限定するものではなく、ある価値観を共有した人たちがネットワークを作っていることにある。それは、ノルウェーの進歩党やデンマーク国民党であっても、他の多くの政党と同様に、選挙の際に、まるでフェスティバルのように同じユニフォームを着て、コンサートなどの催し物を開き、一体感を演出していることからもうかがえる。

 加えて、北欧のポピュリスト政党は、既成政党とともに、左右のブロックに組み込まれていることに注意しなければならない。左右ブロック化によって、これまでの全会一致システムは崩れてしまったが、これにより、有権者は、ポピュリスト政党を含んだ左右のどちらのブロックの方向性を支持するかを選挙で、グラデーションのように選ぶことができるようになった。例えば、急進左派が主張する極端な再分配には賛成できないが、社会民主党が主張する再分配を前提としたグローバル化に賛成し、社会民主党に投票したならば、結局、左派ブロックを支持したことには違いない仕組みとなっている。アメリカでたとえるなら、大統領候補にバイデンとサンダースがそれぞれ立候補しつつ、バイデンに投票したとしてもサンダースに投票したとしても、全て民主党の票とカウントされるような状況と呼んでもいいかもしれない。このように各政党が左右にブロック化したデンマークやノルウェーでは、有権者は大きくブロックから外れた政党を支持することが少なくなった。今後、スウェーデンが、このような政治的な状況になるかどうかは不透明であるが、北欧のポピュリストを考える上で、左右ブロック化は重要な視点となりうるだろう。

 このような北欧の状況を踏まえると、北欧におけるポピュリズムは、国内の既成政治への反発よりも、EU創設の取り決めであるマーストリヒト条約に対する異議申し立て、要するに緊縮財政に対する立場として捉えると理解しやすい。放漫財政をEUによって緊縮しなければならなくなっている南欧諸国と比べて、北欧では、反グローバル化、反緊縮政策の主張をする左派ポピュリズム政党はない。その受け皿として、急進右派が拡張財政を主張して、ポピュリスト的な役割を担っている。

 北欧の左派ポピュリズムは、反グローバリズム、一国主義、保護主義というよりも、国際協調を前提として、緑の党のように環境規制を強化すべきとか、安価な製品を作るために労働者の権利を守っていない企業を規制すべきといった、グローバルで、新しいフェアなルールを作ろうとすべきだという主張をしている。

引用を行う際には、以下を参考に出典の明記をお願いいたします。
(出典)古賀光生(2021)第7部北欧諸国谷口将紀・水島治郎編『NIRA研究報告書 経済・社会文化・グローバリゼーション』NIRA総合研究開発機構

脚注
1. 編集部注。国民国家形成期における「中央」と「周辺」の対立が、政党システムのあり方を決定付ける基本的要因の1つとなった、という理論。

ⓒ公益財団法人NIRA総合研究開発機構

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